第17回「印鑑」2分

人物
早瀬（山本）かおる（29）会社員、離婚して旧姓山本に戻る。
柿村聡（25）同僚

〇かおる職場・外観

〇同・内
早瀬かおる（29）は早瀬と彫られた真新しいシャチハタ印を見ている。
柿村聡（25）が書類を持ってかおるのデスクへ来て
柿村「早瀬さん印鑑ください」
かおる「あーい」
と、印鑑を押す手が止まる。
柿村「ん？どうかしました」
かおる「あ、いやいや、別に」
書類に印鑑を押すかおる。
柿村「ありがとうございます」
と立ち去る。
かおる、柿村に向かって
かおる「あのさ、それ大事なやつ？」
柿村「捨て印です、はい」
かおる、手を振ってデスクになおる。

〇駅前印鑑屋・外観（夜）

〇同・内（夜）
印鑑を見ているかおる。
店員が近づいて
店員「今なら名入りのボールペンお渡ししてますんで」
頭を下げるかおる。
かおる「あの、」
店員「はい、なんでしょう」
かおる「印鑑って生涯で何回くらい作るんですかね」
店員「就職、結婚、出世、転職……あと、離婚ですかね、ま、人それぞれですよね」
かおる「離婚？だと前のものに戻せばよくないですか？」
店員「私は作りましたよ」
かおる「え？」
かおるは印鑑を手に取って、
かおる「次はどんなのがいいですかね」
店員「私、名前の方が好きです」
かおる「名前……」
店員「一生自分のモノですから」
かおるは店員の名札を見る。
フルネームで書かれた名札。

〇かおる職場・外観
かおるはデスクでパソコン操作をしている。
柿村がかおるのデスクに来て、
柿村「あの、コレお願いします」
かおる「これ、大事じゃない？」
柿村「そこまで」
かおるは木彫りの美しい印鑑を取り出して書類に押印する。
柿村の書面には「山本かおる」のフルネームの印鑑。
柿村「印鑑変えたんすね」
かおる「そう、いいでしょ」
柿村「おめでとうございます」
かおる「それどっちの意味だよ」
と笑う。
了