或る4台のベンチにて。
9/6。
5:00起床。
天気は曇り。
*
涼しくなった。ので、ひさしぶりに図書館に行った。16時だったか17時だったか、館内は人でごった返していたのに、館外は人気がほとんどないのは、いつもと同じだった。
自分が通っている図書館は、目の前に美術館があって、そのためなのか、辺りはちょっとした広場になっている。図書館の入り口近く、駐輪場の近くには、わりとしっかりしたベンチが設置されている。
ぼくは、奥まった場所にある4台のベンチの1つに座った。右から2番目。ぼくはサンダルを脱いで、ベンチの上で裸足で体育座りになった。どこでも体育座りになるのは、ぼくの癖。
外で裸足になるのはいい。風がよく吹いていると、足の指と指のすき間を風が抜けていくのが気持ちいいから。他のベンチには人もいないし、落ち着く。
ぼくは、借りたばかりの本を取り出した。
・レイ・ブラッドベリ『十月の旅人』
・アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海』
・ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引書』
『十月の旅人』をぱらぱらめくっていると、ベンチの近くにある自販機から、がしゃんと派手な音。紫のTシャツを着たお兄さんが、炭酸飲料か何かを買っていた。お兄さんはそのまま、一番左にあるベンチに腰かけ、買ったばかりのソレをぐいぐい飲んでいた。その後、時々何かを思い出したように、ぼんやりしていた。
ぼくが短編を一つ読み終え、『掃除婦の手引書』を取り出していると、今度は「散髪の概念がございません」とばかりに白髪の長いおじいさんが、ペットボトル入りの何かを買っていた。
おじいさんは一番右のベンチ(つまり、ぼくの隣)に座り、仕事終わりのビールみたいにソレを飲んでいた。『掃除婦の手引書』の最初の短編に登場するインディアンの年寄りみたいだ。ぼくは思った。
その短編を読み終わる頃、ふいに隣を見ると、白髪のおじいさんが座っていたはずのそこには、メガネをかけた青年がオロナミンCを一気飲みしていた。
まったく気付かなかった。さっきのおじいさんは、『掃除婦の手引書』を読んでいたぼくの幻か? と思っていると、一番左のベンチに座っていたお兄さんが、目の前を通り過ぎた。お兄さんは、まだ物思いに耽っているようだった。4台あるベンチには、右から2番目に座っているぼくだけが残された。
「ベンチに座っていただけなのに、ドラマだなあ」
一人になったぼくは、『老人と海』を取り出した。
*
「僕だけが、鳴いている」
これは、
僕と、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。
連載中。
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