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少年少女は「解剖」する(レストー夫人/三島芳治)

学年に一人はいる、どこか謎めいた美少女。に、出会ったことは終ぞありませんでした。ぼくの場合。(いたかもしれないけど、周りに関心がなさすぎてわからなかった。)


あれは、フィクションだけなんだろうか。もし、実在するとしても。周りをふり回す力があるとしても。それは、本人のあずかり知らぬところで。周り、もしくは本人が考えている以上に。彼女は。


『レストー夫人』は、演劇の題目。もしくは、漫画のタイトル。どちらでもある。漫画の登場人物にとっては、前者。その学校の2年生は、毎年『レストー夫人』を上演する。それぞれのクラスで異なる台本を作り、それぞれのクラスにヒロインが存在する。これは、その中のあるクラスの話。


志野、という少女がいる。とても美しく、異議なく主役に抜擢された。「謎めいた」にふさわしい、少々エキセントリックな性格をしている。本人も、それを自覚している節がある。「謎めいた少女」は、周りをふり回す。周りは、ふり回されている自覚があったりなかったり、少々の問題は発生しつつも、劇の準備は進んでいく。


『レストー夫人』は、ここで終わる話ではない。詳細は言えないが、強いて言えば、志野を「解剖する」ことで終える。「謎めいた美少女」と評される少女は、本当に「謎めいた美少女」なのか。


主役である志野に関わるクラスメイトは、たくさん存在する。志野は、周りをふり回すだけじゃない。ふり回される役目も負っている。ふり回すだけだと思っていた自身が、ふり回される側になったことで、志野は自分でも気付かなかった自分を発見する。ただ上演するだけにとどまらない。それが、『レストー夫人』の役割であるように。

7つのクラスで同じ劇を違う台本にし
7種類の「レストー夫人」を上演する
なにかの実験なのかもしれない

――本文より引用

『レストー夫人(漫画)』は、各話でさまざまな役割を担うクラスメイトにスポットライトが当たる。主役である志野はどの話にも登場する。けれど、各話の主人公にはなりえない。あくまで、彼らに影響を与える「謎めいた美少女」だ。


彼女が解剖されたとき、起こったこと。劇を完成させる以上に、重要だったこと。それらが紐解かれたことで、『レストー夫人』はようやく完成したのかもしれない。


つまるところそれが、「なにかの実験」だったのだ。

10/20更新(オリジナル)

レストー夫人 - 三島芳治(2014年)

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