何でもねえよ、ちくしょうが(苦汁100% 濃縮還元/尾崎 世界観)

ロックなんかやってる奴 キモいに決まってるだろ!!!!

とは『ロッキンユー!!!(by 石川 香織)』に登場するセリフだが、思わず「あー」となる。


そして、

キモいけど かっこいいんだよ!!!!

というセリフに、また「あー」となる。


そして、このセリフでまっ先に思い出すのがクリープハイプだ。そして、フロントマンの尾崎世界観だ。





僕は、ミュージシャンである彼も好きだけど、もの書きである彼も好きだ。


この記事で取り上げる『苦汁100% 濃縮還元』は、2016年夏から2017年冬までの間、彼が書き溜めた日記だ。


日記なので、バンド活動のことだけではなく、活動外のことも記されており、それに伴う彼の私的な感情も含んだ内容となっている。


クリープハイプのファンである僕としては、ライブの舞台裏も知ることが出来て面白い。面白いんだが……。


何だろう、この思わず赤面してしまうような感情は。


アレだ。


共感覚性羞恥だ。

こうやって世の中に無視されたような気分になる瞬間がある。そもそも相手になんてされないのに。

――本文より引用

「わかる、わかるなあ」と肯きながら、「恥ずかしい、恥ずかしいなあ」とも首を振ってしまう。


その恥ずかしさは、帯のあおり文の「自意識過剰 赤裸々過剰。」な彼の姿に、自分自身を投影しているからなのか。


それとも、時々わかるようでわからない比喩が明らかにスベっているからのか。


もしくは、格好よさげなことを言った直後に、( )で自分にツッコみを入れているからなのか……。


なんか、ついディスってしまいそうになるな。何でだ。

言われてなんぼ。批判すら糧にして創作に変えていく。(中略)強がってみてもdisはdisだ。言われたら言い返したくなるし、悔しくて眠れなかったり、長い間引きずったりする。言葉を信じているから、言葉にやられてしまう。

――本文より引用

ミュージシャンに限った話ではないけど、有名になればなるほどディスられやすくなる。それは、一介の一般人がディスられたときの比ではない。


ディスを上手くスルー出来る人もいるし、スルー出来なくて炎上してしまう人もいる。僕は、ディスに反応する人が好きじゃない。ディスられたその人が悪いわけじゃないのに。


でも、尾崎世界観は常にディスと真っ向勝負している。きっと僕は、自己投影している彼が、ディスと戦っていることが羨ましいんだ。時々ディスを入れてしまうのは、彼に嫉妬しているんだ。


嫉妬は負の感情のはずなのに、それでも僕はクリープハイプを聴くし、彼の著作も読んでいる。つまりは、そういうことなんだ。





ロックなんかをやっているクリープハイプは、尾崎世界観はキモい。


キモいけど、かっこいいから、大好きだ。

社会の窓(『吹き零れる程のI、哀、愛』収録)/クリープハイプ(2013年)

※「自意識過剰 赤裸々過剰。」っぽいのを選曲してみました。

9/2更新

苦汁100% 濃縮還元/尾崎 世界観(2020年)

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