「全ては、頭の中に」
11/8。
4:36起床。
天気は晴れ。
*
ぼくは、海にいる。
これが妄言であることは、わかっている。
ぼくは今、うちにいて。
PCを開いて向き合って。
時々、白湯をすすって。
でも、ぼくは海にいる。
どうしてだろう?
目を閉じると……ううん、閉じなくても見えるんだ。
すっかり明るくなった空の下に広がる海。
ぼくは、波打ち際でそれを見ている。
これは、何を表しているんだ?
ぼくは、何を望んでいるんだ?
誰も、答えを教えてくれない。
ぼくが持っていないから、教えられない。
誰か、誰か教えて。
どうして、あるはずのない海が見えるの?
ぼくは、じっと耳を傾ける。
もしかしたら、答えが聞こえてくるんじゃないかって。
でも聞こえてくるのは、ささやかな潮騒だけ。
(これも、きっと気のせいだけど。)
「ここは、どこ?」
ぼくは、ぼくに問いかける。
「どこでもないよ」
しばらくした後、返事が来た。
「どこでもない? うちでも海でも、どこでもないの?」
「そう」
「そんなはずないよ」
「どうして?」
「だって……それじゃ、ぼくはどこにもいないことになる」
「そうかもしれない」
「そうかもしれない?」
「君は、誰にも見つけられない場所にいる」
ぼくは、静かに絶望する。
気付けば、膝の上まで潮が満ちている。
「ぼくは、ひとりぼっちなの?」
「そう」
「ぼくは、誰と喋っているの?」
「君自身」
「ぼくは、」
そこで、ぼくは一度ことばを途切れさせた。
「ぼくは、どこにいるの?」
ぼくを『君』と呼ぶぼくは、一瞬だけ沈黙した。
「本当にわからない?」
そのとき、視界にノイズが走った。
見えていたはずの海が、少しずつかすんでいく。
ぼくは瞼に触れ、そして頭に触れた。
「そうだった」
ぼくはいった。
「全ては、頭の中に」
ぼくを『君』と呼ぶぼくは、もういない。
いるかもしれないけど、今のぼくには必要ない。
「ぼくは、どこにもいない。だから、どこへも行ける」
ぼくは、絶望も恐怖も感じていなかった。
ぼくは、『どこか』へ行っていただけだ。
いつも通りね。
今のぼくに、海はもう見えない。
もしかしたら、また見えるのかもしれない。
けれど、どちらでもいいと思う。
ぼくに『どこか』が見えても、ぼくがぼくでいられれば、それだけで。
*
「僕だけが、鳴いている」
これは、
ぼくと、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。
連載中。