見出し画像

渚と亡霊(もしくは、ある日の妄想)

9/28。

5:00起床。

天気は曇り。


――ここ、どこだっけ。

夢か現か。


それすらも、わからない。


面倒だな、と思う。


これじゃ、目を覚ませばいいのかどうか、わからない。


足下には、砂が風で流れていく感触。


遠くの方では、空と海の境界が曖昧。


つまり、ここは、

――××だね。

と、後ろの方から声が。


またか、と思う。


自分とまったく同じ顔が、そこにある。

――オーバードーズした覚えはないんだけど。

ぼくはいった。

――そんなことしなくたって、君はいつでもトリップ出来るだろ?

そいつは、くすくす笑う。


ぼくはなんとなく、そいつが気に入らない。


自分と同じ顔なんだから、当たり前なのか。

――ヤバい奴みたいな言い方、止めてくれるかな。

――君は、ヤバい奴じゃないとでも?

――自己評価ではね。他己評価は知らないし、いらない。

ぼくは、そいつを視界に入れたくなくて、目を逸らす。


それでも、そいつが視界にちらつくのは、なぜだろう。

――ヤバくない奴は、こんな場所に来ないよ。

――知らないよ。そもそも、どこなんだよここ。

――「どこなんだよ」? それは、君がよく知ってるはずだろ?

――……ぼくの妄想が生み出した産物、ね。

――よくわかってるじゃないか。

――うるさいなあ……。同じ顔をしといて、えらそうに。

ここの景色は、すばらしい。


でも、目の前にいるそいつは、うっとおしい。

――なんでもいいけど、そろそろ帰りたい。

――じゃあ、帰ればいいじゃないか。この場所は、君が作ったんだろ?

――作ったのはね。でも、帰り方まで考えてないよ。

――本当に帰りたい?

そいつは、突然神妙な顔をした。

――当たり前だろ。こんな、あの世かこの世かわからない場所。

――ふーん……。じゃあ、気は済んだみたいだね。

――?

――まあ、いつでもおいでよ。いつでも、ボクが相手してあげるから。

――いや、もう二度とお目にかかりたくない……。

ふいに、目の前の景色がぱしゃりと弾けた。


気付けば、ぼくは自分の部屋に横たわっていた。


過食と過眠で、「死にたい」気持ちを紛らわせていたこの部屋で。


ああ。


ぼくは、ようやく腑に落ちる。


あの場所は、一種の防衛機制だったのか。


それで、あいつは――。


もう、いいや。なんか腹立ったし、あいつ。


でも、もう一回くらい、会ってもいいかな。


そんなことを思いながら、ぼくは眠気に逆らえず、また眠りに落ちた。





「僕だけが、鳴いている」


これは、
ぼくと、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。


連載中。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。 「サポートしたい」と思っていただけたら、うれしいです。 いただいたサポートは、サンプルロースター(焙煎機)の購入資金に充てる予定です。