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目目、耳耳

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2021年2月の記事一覧

終わりを拾い続ける僕らは、(終わりつづけるぼくらのための/岩倉 文也)

「ただね、もしあめだまが、地球だったら、って思ったの」
「地球?」
「うん、地球。わたしの口の中で、ころころーって転がして、溶かして、飽きたら砕いちゃう。全部わたしの思うまま。そうだったら面白いなあって」

――『あめだま』より引用

世界は、終わりに近付いていない。

ただし、「終わらない」わけじゃない。

突然、パッと終わってしまうものだと思っている。

藤子・F・不二雄の『ある日……』を読ん

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『チョコレート・ガール』との攻防(チョコレート・ガール探偵譚/吉田 篤弘)

これは特筆すべきことである。チョコレートの向こうにはかならず物語があった。

――本文より引用

『チョコレート・ガール探偵譚』は、『チョコレート・ガール』という、現存していないフィルムの軌跡を辿っていく話だ。

(ちなみに件の映画は、昭和7年上映のサイレント映画で、フィルムは焼失している。)

吉田篤弘氏は、『チョコレート・ガール』という文字列に惹かれたというが、僕もその一人である。

なぜなら

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“知らない”から、知りたい(知らない/古川本舗 feat.若林希望)

街の夜に、君の声と、閉じた窓とレコードの音。
2時を過ぎて
甘い夜と、黒い猫と、想いの色。

――古川本舗『知らない』より引用

2時を過ぎた。

夜の方の。

一人でいるときの、一人の夜。

二人でいるときの、一人の夜。

大抵は、後者です。

つまり、片方は眠っていることになるけど。

もう片方は、眠っていないことになるけど。

朝と夜の狭間に落っこちて、孤独を持て余している。

「一人でいる

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