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2023 中山グランドジャンプ

概要

条件

第25回 中山グランドジャンプ(J・G1)

2023年4月15日 中山 障害4250m サラ系障害4歳以上 (国際) 定量 (4歳62kg、5歳以上63kg、牝馬2kg減)

コースについて

JRA公式(中山競馬場概要)
JRA公式(歴史・概要)

所謂大障害コースを使用。中山コースの内にあるコースを八の字型に動いていき、最後は芝外回りコースの3つの障害を飛越する。中山大障害は、終盤も障害コースの谷の下りのぼり→飛越→直線障害なし…という形なのに対し、グランドジャンプは外回りコースに向こう正面・3角・そして直線と3つのハードル障害が設置されている点が大きい。12回の飛越と5回のアップダウンがある(大障害はそれぞれ11回/6回)。

大障害も勿論だが、それよりも更に1回飛越が増え、最後の直線にも待ち構えているレース。死力を尽くした末の最後のワンミスが命取りになりかねない。しっかりとした飛越力・そして底力・精神力が求められるレースだろう。

過去のレースからの雑感

データとオジュウチョウサン

オジュウチョウサンの6勝がかなりのハズレ値なのだが、それ以外にもアップトゥデイトやメイショウダッサイも含めて、傾向を出すにはノイズとなりかねない存在だろう。

データの使い方としてはサンプル数としても切り取り方としても良いとはいえないかもしれないが、以下、「オジュウチョウサンを抜いたもの」及び「オジュウ・アップ・ダッサイを抜いたデータ」で紹介する。

枠番・馬番

まずはオジュウチョウサンのみ除いたデータ。

枠番別(オジュウ除く)
馬番別(オジュウ除く)

続いてオジュウ・アップ・ダッサイの3頭を抜いたデータ。

枠番別(オジュウ・アップ・ダッサイ除く)
馬番別(オジュウ・アップ・ダッサイ除く)

全体で過去10年を見れば5.6.7枠各3勝ずつなのだが、オジュウが5枠で1勝、6枠で1勝、7枠で2勝。アップトゥデイトも3回の出走すべてこれらの枠だった。それを除いても勝ち馬は中~やや外くらいから多く出ており。全体感としては2枠~6枠くらいベター。

雨が降ると…というところだが、大部分を占める障害コースに関していえば、道悪の中で使いこまれてどうこうというタイプではなく。

ローテーション

まずは全体から。以下前走障害競走に限る。

前走レース別 成績

つづいてオジュウ抜き。

前走レース別 成績(オジュウ除く)

最後に、アップトゥデイトとメイショウダッサイも除く。

前走レース別 成績(オジュウ・アップ・ダッサイ除く)

阪神SJからの勝ち馬はオジュウ④アップ①ダッサイ①
ペガサスからは2013年ブラックステアマウ(外)と14年アポロマーベリック。直行はオジュウ。OPからはオジュウの初JG1制覇時の大障害→中山オープン→グランドジャンプのローテ。

阪神SJとペガサスJSの2つの前哨戦がやはり有力で、今年の出走馬はこの2つに小倉の春麗JSを加えた3レースから集った。以下各レースをざっくりとみる。詳細は各馬の項目で振り返る。

阪神SJ(阪神3900m)

メンバーが一番そろったのは阪神SJ。JG1に引けを取らないメンツだった。

ただ、勝ち馬ジェミニキングが怪我で休養、2着ロードアクアも回避、5着ゼノヴァースは屈腱炎で引退。そして(本命にしようとしていた)マイネルレオーネも今週屈腱炎が発覚して回避・休養…となってしまった。

今回出走するのは3着ニシノデイジー、4着ミッキーメテオの2頭のみだが、デイジーは昨年大障害ウィナーだし、ミッキーメテオもハイパフォーマンスを見せてきている。

ペガサスJS(中山3350m)

こちらは各馬比較的順調に使ってこれたペガサスJS。阪神SJよりメンバーとしてはやや落ちるかな?というレースだったが、勝ったビレッジイーグル、2着ダイシンクローバー、3着イロゴトシ、5着スマートアペックス、6着クリノオウジャ、9着エミーリオが出走。

障害レースの場合タイムを一概にどうこう言い切れないが、重馬場としては水準の時計は出ていたように思うし、同じく重馬場で、勝ち馬がGJも制した14年より走破時計としては速い。実績馬ビレッジイーグルが抜け出して勝ち、以下混戦だったが、上がり馬も出てきており、楽しみ。

春麗JS(小倉3390m)

このレースは開催の条件が~2018:東京、19.20中山 21~小倉とコロコロ変わってきているレース。3着に走ったマイネルレオーネは昨年このレース(小倉)から。1着馬テーオーソクラテス、2着馬ジューンベロシティが出走。レースの出走馬のレベルとしては他より落ちそうだが、勝ち馬は3連勝で底を見せていない。

出走各馬の雑感

1枠1番 ジューンベロシティ

前走春麗JS②。今回が入障5戦目で、前走は鼻出血もあったようだ。
まだまだ障害馬としてのキャリアも浅く上積みもありそうな中前走は横綱相撲ともいえる立ち回りで2着を確保。飛越もここまで無難にこなしているが、どちらかといえば置き障害のほうがいいのかな?という印象。

戦ってきた相手関係は一息に思う。馬場は可もなく不可もなくか。立ち回りが巧く自在な競馬をできるタイプなので、ベテラン西谷騎手と最内を生かして立ち回れば一発も。

余談だが、一時期いわれていた「ロードカナロア産駒は固定障害を勝てない」現象は、昨年12月のリーガルマナーを皮切りに以降ロードアクア2勝と本馬も合わせて4勝。すっかり置き障害と同じような数字になった。

ロードカナロア産駒 障害種類別成績

2枠2番 イロゴトシ

前走ペガサスJS③。これが入障キャリア4戦目となるが、ここまでのパフォーマンスには目を見張るものがある。

初戦:小倉未勝利
前半やや戸惑いを見せ後ろからも後半改善、障害としては破格の上がり時計(ブック等確認されたし)で3着に。

2戦目:小倉未勝利
番手から運んで早め先頭押切。飛越もかなりよく見えた。④⑤着馬が次走、③着馬が2走後に勝ち上がり、②着メリディアンローグは以降出走がないが常に強い相手と戦ってきており入障後⑩⑤②③③③②③②②という戦績。これらを相手に圧勝し、時計もかなり優秀だった。

3戦目:ペガサスJS
昇級初戦で初の中山。序盤初コースへの戸惑いもあって進み悪く後方からも、2周目以降しっかり馬群についていく競馬をして上がりをしっかり伸ばして(ブック参照)③着。飛越はしっかりこなしていた。

初戦・3戦目を見ると2度目の中山で慣れさえあれば十分前進は可能だろうし、距離も持ちそう。前走重馬場でも終い伸ばせている点も魅力。入障4戦目は昨年の暮れのニシノデイジーと同じ。

鞍上黒岩騎手は今までJ・G1に7回騎乗で馬券内なしも、最高が9番人気。12番人気4着と惜しいところまではいっている。中山はあまり得意なタイプではないが、昨年はホッコーメヴィウスと共に重賞3勝など成績が向上。期待。

3枠3番 ニシノデイジー

前走阪神SJ③。2走前に中山大障害を入障4戦目で制した。
ロンスパ戦を自ら襷で押し上げる競馬をして押し切った。それでも飛越にはまだまだ危なっかしい部分は残っていたが、札幌2歳Sと東スポ杯を勝ち、ホープフルS3着だった平地力は障害界随一だし、立ち回り自体は巧かった。

前走は前哨戦で他より重い62キロを背負い、石神騎手との初コンビ。折り合い一息で飛越やや乱れる部分もあったが、3着と前哨戦としては悪くない形だっただろう。癖のある馬だけにコンビ継続で行くのは◎。

鞍上はオジュウチョウサンとのコンビで勝手知ったる舞台。1つのミスが命取りになる障害戦で信頼しきれないところはあるが、力は一番。

4枠4番 スマートアペックス

前走ペガサスJS⑤。21年東京JSを制した実績馬も、そこから長い休養を経て昨年秋に復帰。平地1戦叩いたのち障害で③⑤⑤。以前ほどではないがしっかりと安定した結果を残している。21年の当レースではオジュウ・ケンホファ・エスプレッソに次ぐ4着。

飛越はある程度無難にこなすタイプだが、近2走は重馬場でパフォーマンスを落としている格好。良馬場のほうがベターのタイプだろう。

鞍上は長くコンビを組む中村騎手。今までのJG1最高着順は4着だが、それはこのスマートアペックスによるもの。人馬一体、実力馬の復活に期待。

5枠5番 ビレッジイーグル

前走ペガサスJS①。前々走中山大障害⑤で、当時の出走メンバーはこの馬とニシノデイジーの2頭が出てくる。「ペガサス→GJ→清秋→イルミネ→大障害」というローテを21年秋から歩んできており、中山コースに対する経験値は圧倒的、安定して前に行ける先行力と飛越力もあり。JG1では⑤⑤⑤。

イルミネJSも競られる形で3着、大障害も厳しい展開をよく粘って5着。前走ペガサスJSは今まで苦手にしていた重馬場をこなし、年を増して「バランスがよくなった」とのこと。これも後半競られていたが、それを振り切っての勝利だった。

この馬と鞍上大江原騎手とのコンビも長い。鞍上は09年大障害(初JG1)で4着。以降勝ちはないが21年大障害、22年GJ、22年大障害とこの馬とのコンビで⑤⑤⑤。引き続き重い馬場になりそうな今回。もう一押しも。

6枠6番 エミーリオ

前走ペガサスJS⑨。オープンでの勝利はない馬だが、未勝利を勝ち上がったように重馬場への適性はかなり高い1頭であるといえそうで、固定障害に向いた飛越をするタイプ。

その条件がそろった前走でも9着と大きく敗れてしまっていることから、力関係的なところでどうか?と思うが、中山そのものはあう。

鞍上はOP入りしてからはずっと上野騎手。これまでJG1は4回乗って⑨止⑭⑧。馬場に他が手間取るようなら。

7枠7番 ダイシンクローバー

前走ペガサスJS②。昨年は東京HJで③、年明けにはOPの中山新春JSを勝った。飛越は常に安定して上手いタイプ。立ち回り上手く、安定感はあるが、逆に言えばワンパンチのためには展開も欲しいか。

キンシャサノキセキ産駒というところもあるが、さらなる距離延長がどうか。前走は(重馬場だったが)ロスの少ない内内での競馬をして2着。3200を超えた距離では0-1-0-3/4。今ならこなせると見るか、やはり長いとみるかは悩ましいところ。

鞍上はJG1を2勝の名手・森一馬騎手。メイショウダッサイやマイネルプロンプトとのコンビでは複数回の好走があり。この馬はもともと現在怪我で休養中の高田Jのお手馬だが、中山新春JSでは一発回答のコンビ。再度応えるか。

7枠8番 テーオーソクラテス

前走春麗JS①。昨冬からOP→牛若丸JS→春麗JSと3連勝で挑む。
もともと平地短距離を走っていた馬で、距離延長がどうかというところだが、3390mの2鞍を連勝してきており、一定程度こなせそうではある。さらに、重馬場以下の障害で2-1-0-1/4、OP2勝というところも魅力の1つと言えそうで。飛越もうまい。

本格化したのか?1回使って負けている中山とはいえ、底を見せていない点では不気味。うまく立ち回って自分からスムーズに動いていく形が理想だろう。

この馬は入障時から一貫して小坂騎手とのコンビ。鞍上はコンスタントにJG1に騎乗、2着3回3着1回はあるが勝ち星はつかめていない。勢いに乗るお手馬とのコンビで一発も。

8枠9番 クリノオウジャ

前走ペガサスJS⑥。今回が入障5戦目と、障害馬としてのキャリアは浅いほうの馬だ。序盤ゆっくりと入り長く足を延ばしてくる競馬をしてきており、飛越も固定障害に向くタイプだろう。

前走は重馬場の中、中団後方から外外を回してイロゴトシに次ぐ末脚(ブック等確認)で6着まで追い上げた。飛越も無難にこなせていたのではないだろうか。2勝クラス3着相当の平地力もあり、再度の中山で慣れが見込めれば。

鞍上は5戦連続で難波騎手。難波騎手はこのレースに向けての記事にも登場していた。JG1はサンレイデュークとともに2着1回3着2回。2着した際の勝ち馬はオジュウチョウサンだった。上積み期待。

8枠10番 ミッキーメテオ

前走阪神SJ④。昨年6月に五十嵐Jとコンビを組むと、以降④①①④と未勝利で苦戦していたとは思えない安定感に、特に昇級戦となったイルミネJSではアサクサゲンキ・ビレッジイーグル・マサハヤドリームらを相手取って10馬身差の圧勝劇を見せた。

前走は自分から動いていく競馬をしたが、踏切などやや乱れる点があったように、まだ雑な点も残してはいるが、打点の高い1頭でもある。どちらかといえば終いの平地力を活かす方があっているようには思う。

鞍上は五十嵐J。ニシノデイジーも元々五十嵐Jのお手馬だったが、ここに向かうにあたって昨年冬の早い段階で鞍上を確保した点は心強い。昨年のニシノデイジーはじめJG1は3勝。対ニシノデイジー逆転候補の筆頭だ。

予想

コンセプト

当初は前哨戦である程度ポジションを取っていい競馬をしていたマイネルレオーネから…という考えだったが、屈腱炎により残念ながら休養に。11歳馬ながら、復帰に向けて…ということのようだ。ぜひ無事に戻ってきてほしい。そして白紙に戻ったわけだが、打点的には③ニシノデイジーが1枚上手、⑩が逆転候補筆頭…といった感じだろうか。ただし、これだと期待値を取るのも難しいし、2頭とも個人的には飛越の安定度というところで今一つ信頼しきれていないところも事実。逆転候補はいないものか。

昨年の中山大障害の際は、「オジュウチョウサンとブラゾンダムールが早めに前をつぶしに行き、その攻防の後ろから差し込んでくる馬」という狙いでマイネルレオーネを本命に(6番人気3着)した。今回のニシノデイジー&ミッキーメテオ、あるいは連勝中のテーオーソクラテスもタイプとしては似ている。出ている馬こそビレッジイーグル以外は昨年とガラッと変わったが、そのビレッジは逃げ馬。今回も同じような形(つまり昨年の中山GJの展開)になると読むならば、同様の狙い方もできるのではないだろうか。メンバー的には昨年よりも何とかなりそう。

ただし、捕まえに行く2頭、特にニシノデイジーは平地力がこの中では何枚も抜けている。平地力という観点だけで対ニシノデイジーで一番太刀打ちできそうな脚を持っている馬は、②イロゴトシではないだろうか。(なおこの馬の勝ち上がった未勝利でメリディアンローグを本命にしていた私は、「イロゴトシと平地力勝負したらあきませんわ」とTwitterでぼやいた。馬券は当たっていたが。)
この馬の穴に期待しつつ、本命どころも抑えていく組み方をしたい。

3列目なら④⑦⑨⑩

◎:②イロゴトシ

障害馬としてのセンスは抜群。今回2戦目だが昇級2戦目で引き続き中山と慣れや上積みが見込める。また、道悪&距離延長も問題なくこなせるタイプの馬だろう。大障害コースは未経験ではあるが、比較的確実な飛越をするのでその点はこなしてくれそう。今年の混戦模様なら、一発回答があっても。黒岩騎手と馬産地九州にはじめての勲章を。

〇:③ニシノデイジー

昨年の大障害覇者。地力の高さは随一で、スタミナ面も問題なし。前走から乗っている石神騎手が継続騎乗となる点の評価は高い。その前走は62キロを背負って乗り替わり初戦と、まさに前哨戦の試走といった感じのレースだった。ただ、難しさがある馬であることも事実なので、今回人気を背負う立場であることからも、対抗評価としたい。

▲:⑩ミッキーメテオ

こちらは五十嵐騎手を早々に手配してここに向かってきている点で評価できる。前走はニシノデイジーに次ぐ4着。細かい飛越のミスもあったことで、最後はやや厳しくなった形だったので、1回使って上積みがあれば。ただ、このコースは1ミスが命取りになりかねない。まともに走ればニシノデイジーの逆転候補筆頭も。

☆:⑤ビレッジイーグル

3回挑んだJG1では、すべて1.5秒以上離されてはいるがいずれも5着。安定した先行力と飛越で戦うタイプだから、このメンバー構成なら展開一つで勝ち負けまで。前走重馬場のペガサスJSを勝っている点もポイントが高い。勢いを持って挑むレースで、今年のメンバーなら…とも思わせるが、ニシノデイジーはじめプレッシャーを受け続けた時にどこまで粘れるか。

最後に

オジュウチョウサンが引退し、群雄割拠の障害レースだが、むしろ正常なことだとも言えるし、予想のし甲斐もある。阪神SJの上位馬を中心に、順調にここに向かってこれなかった馬も多くいるのは残念ではあるが、ニシノデイジーが新王者の貫禄を見せるか、それとも新たな勢力の台頭か、古豪の復活か….非常に楽しみな一戦である。

まずは、全人馬無事に。そして、少しでも障害レースが盛り上がりますように。


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