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つるつるとしたサテンのリボンのように

趣味の良いインテリアショップで働いていると、色々な家族の形を目にする。

混乱のないように前置きしておくと、私は現在3つの仕事をしている。
通訳ガイドと、ライター、加えてアルバイトのショップ店員だ。

タイムマネジメントが常に課題としてあるのだが、この話について語ると長くなるので、また別の機会にでも話そうと思う。

さて、話題が逸れてしまったが、約半年前に素敵なインテリアショップで働き始めてからというもの、なんというのだろうか、人間と人間の様々な結び付きの形を目にするようになった。

それはまるで、つるつるとしたサテンのリボンのように完璧で純白であり、様々な結び方をしてそこに存在している。

お洒落な物が大好きな彼女を喜ばせることに生き甲斐を感じている、20代前半の若くて初々しいカップル、

人一倍、身の回りの全ての物事においてこだわりが強そうな30代半ばの男性、

文字通り、”丁寧で上質な”定年後の暮らしを心から楽しんでいる、60代の老夫婦、

最近同棲を始めたらしい、恋から愛に変わり一緒にいるだけで満たされるようになった、落ち着き溢れる20代後半の男女、

昨年籍を入れたばかりで、これから新しい生活を作っていこうとハッピーオーラに溢れる新婚さん、

店内をキャッキャと楽しそうな声をあげながら追いかけっこをし、生きる力に溢れた小さな子供を中心に回る家族。

私がこのショップで働きたいと思ったのは、純粋にショップが取り扱うデザインやブランドが好きだったからであり、
どのようなお客さんを相手にすることになるのかは、全くといってよいほどイメージ出来ていなかった。

まさに、千差万別。

世間には、これほどまでにたくさんの、人と人との繋がりの形、幸福の結晶が存在しているとは思いもよらなかったし、

これほどまでにたくさんの、小さいけれど充足感に満ちた人生の形が存在しているとは、思いもよらなかった。

それは、労働という形で、時には嫌な思いもしながらも必死で耐え、社会に対価を払うことにより手にしたものが、幾重にも積み重なって形成されているものだった。

結晶の形は皆違えど、それら全てに共通しているのは、たゆみない努力を重ねてやっと手に入れた、という明白な事実であった。

高度資本主義社会。

高度に発展した資本が全ての社会に文句を言わず、またはそんなこと言っても無駄だと理解し、それならば、と決められたルールに従い、自分に適正な量の対価をきちっと払ってきたことによって確かに掴み取ってきた、様々な幸せの形だった。

普段働いている分には、特に何も感じないのだが、一度感じてしまうともう後には一歩も引けない。

その幾重にも折り重なった、幸福が蔓延した空気の中にいると、フッと思考が停止してしまうのだ。

それぐらい、彼らには圧倒的なパワーがある。
強く結ばれたリボンは、たとえつるつるとしたサテンといえど、そう簡単に解けることはない。

無論、世の中の全ての幸福の形が、いつまでもそのような美しい形を保っていられるか、というのは別問題であるわけだが、確かにそう信じたくなるぐらい、圧倒的な力がある。

それは、完璧で、純粋無垢で、強固で、思わずため息を漏らしてしまうぐらい、美しかった。

私も、彼らのように、ちゃんと生きたい。彼らのように、小さいけれどそれぞれの幸せの形を、紡いでいきたい。

出勤する度、私はこっそり、そう固く心に誓うのであった。

4年記念日まで、あと2週間を切った。

早く、彼の驚いた顔が見たい。

今年は何を買おうかしら。

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