CTO三上がメモするAI Samuraiへの道 vol.3

株式会社AI Samurai取締役CTO 三上です.特許調査/分析システム「AI Samurai」の開発を行っております.引き続き,AI Samuraiの開発過程をメモしていきたいと思います.

前回のおさらい

 β版までリリースしました.

業務のスループットを上げる

 自分が普段どのようにGoogle検索を使っているのかなと考えると,1回の検索で終わることなどほとんど無く,最初思いつきのキーワードで検索した結果から知りたい情報に近いウェブサイトを探して,そのサイトからより適切だと思われるキーワードを見つけて再検索する,というのが多いです.これは検索タスクにおいて,今となってはかなり王道的ではないかと思います.Googleの検索速度あってこそだと思いますが,特に難しい検索式が必要ないこともあり,新しいキーワード追加と再検索の敷居が低くなるよう設計されているように思います.要は2回目,3回目の検索が容易にできれば,早く解答にたどり着けるわけです.
 AI Samuraiもこれに見倣って再「調査」が容易にできることを目指して開発してきました.あえて調査としましたが,特許調査の場合は単に情報が近いものを探してくると言うだけでなく,新規性があるか,進歩性があるかなどを検証する必要があり,AIによってサポートしているとはいえ,最終的には人が特許の類似性を判断しなければなりません.そのため,AI Samuraiがサービスとして提供できることは以下のようなものではないかと考えています.
 1.検索結果を整理してユーザが判断しやすくする.
 2.前回の結果を踏まえた上で,次の調査を実施できるようにする.
 3.過去の調査結果をいつでも再確認できる.

開発当初から1については意識していて,クレームチャート形式で結果を出してしまうという挑戦的な仕様にしていました.まだまだ見やすさや判断材料として十分かどうかなど課題はあると思いますが,AI Samuraiの基本になっています.一方2や3については,α版やβ版では弱かったところになります.

正規版に向けたユーザビリティの獲得

 まず上記2について,調査結果から次の調査への橋渡しが重要です.最低限必要な機能として,ワンクリックでの入力クエリの復元と再検索を行えるようにしましたが,それだけでは足りません.そこで,前の調査結果で合っていたところ/間違っていたところを次の調査に反映できる機能を開発しました.

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クレームチャート中で,システムが正しく類似箇所を抽出できているところにGood(サムズアップ)を,逆に間違っているところにBad(サムズダウン)をセットし,再調査できるようにしています.再調査ではそのユーザの評価を元に内部的な検索クエリを変更して前回とは異なる文献を抽出しやすくします(同じのが出る場合もあります).一般的には適合性フィードバックと呼ばれますが,現在の正規版では「学習再検索」としてリリースしています.


 次に上記3についてですが,同じような調査を繰り返さなくて良いように過去の検索結果を一覧でき,さらに詳細も確認できて,再検索ももちろんできる,というものが必要だと考えました.一部分の表現を変えたり,類義語展開の程度を変えるなど,複数の条件で検索した結果を履歴からいつでも比較できると,調査業務が捗るはずです.また,時間をおいた別の調査であっても,このような履歴があれば便利です.同じ企業で開発を行っていて,これまでとは全く分野の異なる開発をするというのは機会が少ないと思います.基本的には類似技術の改良開発が多く,当然以前の調査結果を参照したくなるはずです.過去の調査からの派生で再調査することで,調査時間の短縮を期待できます.

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AI Samuraiは調査履歴機能が充実しており,過去の調査履歴が一覧できるだけでなく,サマリも一覧上で確認でき,調査種別(先行技術調査,クリアランス調査,無効資料調査など)や日付,判定結果などで絞り込んで過去の調査結果を探すことも出来ます.

検索精度の追求

 再検索の容易さや調査履歴により,特許調査ツールとしては洗練されてきたAI Samuraiですが,それでもやはり検索精度は問題になってきます.この辺りの取り組みについては次回メモしていきたいと思います.


*1: このあたりを見るにつけ:Shalaby, W., & Zadrozny, W. (2019). Patent retrieval : a literature review. Knowledge and Information Systems, 61(2), 631–660. https://doi.org/10.1007/s10115-018-1322-7


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三上崇志
京都大学理学部卒業.京都大学大学院情報学研究科修了.三菱電機入社後,テキストマイニング,カーナビシステム,エコーキャンセラ等の研究に従事する.2010年度IPA未踏事業でスーパークリエータとして認定される.起業後はSNS開発,ソフトウェア開発,ゲームアプリ等を企画・開発・運営し,ヴイストン株式会社にてコミュニケーションロボットSotaのソフトウェア開発を先導する.2018年,(株)AI SamuraiのCTOに就任し,基幹サービスであるAI Samuiを開発.大阪大学大学院情報学研究科・博士課程在学中.

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