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ハイこん ~意思疎通って難しい~

はじめに

こんにちは。
DXコンサルティング本部 DXサービス推進2部の 大西 宜史(Yoshifumi Ohnishi)です。

同じ話をしているはずなのに、自分の言いたいことが上手く伝わらない。何故か違った解釈をされてしまう…
みなさんはそんな経験をしたことは無いでしょうか?

本記事ではそんな経験を元にした、ついやってしまいがちなコミュニケーションミスや、コミュニケーションミスを無くすにはどうすれば良いか、解決策を探っていきたいと思います。


本題に入る前に

いきなり質問です。
人に自分の言いたい事を伝えるのが難しいのは何故でしょうか?

図1.伝えるのは難しいのはなぜか

みなさんは、なぜだと思いますか?
私が考える答えは下の通りです。


図2.違う前提ではなしているから

人と話をするときに、前提を気にしたことはありますか?この前提というのが、今回の話の主軸です。

では、改めて本題にはいりましょう。

ハイこんとは

ここでいうハイこんとは、「High-Context Communications」のことです(略してハイこん)。High-Context、つまり大量の文脈や背景などを前提にしてCommunicateions(意思疎通)を取ることを言います。

意思疎通って難しい

まず、次の単語を見てください。みなさんは何を想像するでしょうか?

  • DDD

  • Oracle

  • Exit

これらは、人によって受け取り方が全く異なる意味を想像するはずです。

1番目の単語「DDD」は、IT系の職業についているなら、真っ先に「ドメイン開発駆動」を想像するでしょう。本好きの人ならば、きっと関連する雑誌や書籍のタイトルを思い浮かべるでしょう。

2番目の単語「Oracle」は、IT系の職業についている人はまず間違いなく「Oracle Database」もしくはその製品を扱っている企業「Oracle」を想像します。占いなどが好きな人はタロットカードなど「Oracle Card」を想像するのではないでしょうか。

最後の単語「Exit」は、直訳すると「出口」です。ですが、IT系の職業についている人は「プログラムの終了」や「ターミナルの終了コマンド」を想像すると思います。お笑い好きの人は、最初に芸人さんのコンビ名を想像する人も多いはずです。

これがその人の背景や前提で変わる、いわゆるハイコンテキストなのです。

背景で変わる前提条件

このように、同じ言葉を見ても人によって受け取り方、解釈の仕方は様々です。でも恐ろしいことに日本では、このハイこんがはびこっているのです。

日本はハイコンテキスト文化でした!?

日本では、かつてハイコンテキスト文化が成り立っていました。その背景として以下のものが挙げられます。

  • ほぼ単一人種の社会

  • ほぼ単一宗教

  • 画一化された教育環境

  • 国民総中流階級思想

これらの背景により、ほとんどの人が同じ前提、つまり「当たり前」や「普通」といった言葉をごく当然のように他の人にも使うことが出来たのです。同じような環境、生活リズムで暮らしているので、主語や目的語などなくても会話が成立することだってあります。

図3.ハイコンテキストでも意味が通じる

このような行動すべきだ」「こう考えるだろう」といった自分の中の当たり前が相手の中にもあることで、少ない言葉で意思疎通ができる環境だったとも言えます。

今では日本人でも「普通」は通じない?

グローバル化という言葉が使われてから、ずいぶん時間が経ちました。
グローバル化という言葉自体が既に古い言葉のように感じられて久しいです。
さて、今日本の環境はどのようになっているでしょうか?

  • 人によって異なる育った環境

  • 人によって異なる教育環境

  • 人によって異なる日々の生活習慣

  • 人によって異なる組織や立場

昔と違い、今は色々なものが他の人と「違って良い」時代となりつつあります。他の人と色々なものが違うのに「普通」や「当たり前」が通じるでしょうか?
もちろん通じるはずがありません。

図4.ハイコンテキストで意味が通じない

昔なら通じた、主語や目的語を抜いた言葉や、同じ背景があるからこそ通じた会話も、今では「普通」でも「当たり前」でもないのです。

例:道案内

道案内を例に、この問題を考えてみましょう。
AさんとBさんが待ち合わせをします。待ち合わせ場所を知らないBさんに、Aさんがメールで道案内をすることにしました。

図5. Aさんの道案内

ここで以下のような前提があるとしたら、二人は待ち合わせ場所で無事合流することは出来るでしょうか?

  • 待ち合わせ場所はD駅の近く

  • Aさんは普段Y線のD駅を利用している

  • Bさんは普段Z線のD駅を利用している

  • Y線もZ線もD駅の出口は一つしかない

図6. Bさんは違う場所に辿りついてしまった

お互い自分の前提があるので、別の駅の出口の事なんて確認なんてしません。なので、Bさんは自分の普段利用してる駅の出口からの道順だと疑うはずもなく、全然違う場所に着いてしまいました。
待ち合わせ失敗です。

実際の待ち合わせでこんなこと起こるはずない、と思うかもしれません。
では仕事の内容についての会話や、問題が発生したときの会話の中で、ちゃんと伝えたはずの言葉が全然違うように伝わったことはないでしょうか?

これこそまさに待ち合わせの失敗。前提の違いにより、意思疎通の失敗(Communication Error)が発生している状態なのです。

同じ土俵に上がろう

同じ答えを出すには

では会話の中で意思疎通を成功させ、同じ答えを出す(=待ち合わせ場所に来てもらう)ためには、どうすれば良いでしょうか?

それはお互いが同じ土俵に立つこと、つまり話の前提を揃えることです。

問題の5W1Hを知る

まず問題が発生したなら、会話する時にその問題の5W1Hを確認することが必要です。問題解決に関わる人が、解決のための出発点を知ることで、問題解決の前提を揃えることができます。

図7. 問題の5W1H

先ほどの道案内を例にしてみましょう。5W1Hでは、下記のことが分かっています。
When:ある日時に
Who:Bさんが
Why:Aさんと会うため
What:待ち合わせに
Where:D駅まで
How:電車で来る

ただ、ここで自分の常識(前提条件)で物事を決めてはいけません。相手の背景、都合を知る必要があるのです。
この例では、Bさんはどの路線のD駅からどのように来るのか?ということです。ここが問題解決の出発点となります。

図8. 道案内の問題の出発点

問題解決の条件を知る

問題解決の出発点が分かったら、次は問題解決のための条件を知る必要があります。

今回は、待ち合わせ場所に来てもらうためにどうすれば良いか、ということです。そのためにBさんからどのD駅には何の路線でくるのか、駅からは何で来るのかを知らなければなりません。

Bさんに確認をとり、D駅にはZ線に乗って来て、D駅からは歩くということを聞きました。これにより、BさんにZ線D駅から待ち合わせ場所までの道案内をすることが、問題解決の条件ということが分かります。

図9. 道案内の問題解決の条件

解決方法を具体化して共有する

問題解決の出発点とその解決の条件が分かったら、今度はそれを具体化して、共有する必要があります。問題解決の方法が具体化されて共有されなければ、だれも問題を解決することが出来ず、結局問題はそのまま残ってしまいます。

道案内の例で言えば、Z線D駅から待ち合わせ場所までの道順を具体的にBさんに伝えることです。
ここで具体的というのは、BさんがZ線D駅の出口についた時から、必ず待ち合わせ場所に着けるように、道案内の順路、途中の目印などを明確にしておくことです。

図10. 道案内の具体化と共有

幸い、最初の案内ではAさんは前提であるD駅の路線を間違っていただけで道案内の内容は具体的でした。出発点をZ線D駅の出口に直して改めて道案内をすることで問題は無事解決することができます。

まとめ

ハイコンテキストが通じない現代において、前提条件の違う人同士がコミュニケーションを行うのは簡単ではありません。
そのためには、以下の3つの事を頭に入れておく必要があるでしょう。

  • 意思疎通が難しいのはその人の前提条件に頼っているから

  • 前提条件は、その人の背景によって変わる

  • 問題解決には、前提条件を明確にし、解決方法を具体化、そして共有することが重要

仕事の話や、問題が起きた時のコミュニケーションをより確実に行うために、これを実践することよってコミュニケーションエラーが減り、きっと意思疎通がうまく行くようになるでしょう。

終わりに

いかがでしたか?
今回は、背景の違う人同士には異なる前提条件があると知ることで、より確実にコミュニケーションをとることが可能になると、今までの体験を元にしたお話でした。
私の体験が、皆さんのお役に立てたなら幸いです。

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