ニュートラル

●仕事の案件がひとつ終わると、落ち込む。
 医師は「社会とのつながりが切れてしまった、という喪失感でしょうか」と言っていたが、その表現はあまりピンとこない(たぶん私が『社会』という言葉をそれほど好きでないせいだ)。指し示す事象は似たようなものかもしれないけど、「これでまた役立たずに戻るんだ」というぼわぼわした黒い霧に、ゆっくりと体中を支配されていく感覚。

●カーテンを開けるのが億劫。どんな光もまぶしすぎるように感じる。どんな音もうるさすぎるように感じる。
 五官が働くだけで体力を消耗する。なんとか薬だけ飲んで(空腹時の服薬については、事前に医師か薬剤師に確認してください)、ベッドで丸くなり、体が要求するまで――お腹すいたとか、お手洗い行きたいとか――待つ。能動的なことは何もできないけど、こうして過ごしていると生活リズムもあまり乱れず、だんだんとマイナスがゼロへ戻っていく。ただしゼロを越えてプラスに傾くことはない。
 むかし躁状態を「元気な状態」と誤解していたように、この「ゼロ」時点を「うつが治り、穏やかで元気な状態」とこの前まで勘違いしていた。車だってニュートラルじゃ走れないのに。まだなんだ。体の中のギアが噛み合っていない。無理やりエンジンに点火しても意味はない。
 しばらくは、このままじっくり過ごそう。

よい一日を、お過ごしください(*^▽^*)