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療育にまつわる「からだ」へのまなざしvol.33

今回は、以前から気になっていた、ポリヴェーガル理論を中心にお話。
どんな理論かというのは、下記の、花沙さんからの内容に譲るとして、
私が気になるのは、ここが、意識ではなく、無意識の領域であるところだ。

今、小学生の療育の現場に触れることが多い中、子ども達は、言語に翻訳されて指示を受けることが圧倒的に多い。「○○ちゃんが叩いたのは何でかな」「悪いのはどっちだろう」……
無意識に働きかける、例えば感覚に働きかけたり、ムーブメントでからだに働きかけたり…といったものは、言葉を介さないと、その場で他者とは、確認したり、共有したりが、難しい時が多い。ただ、本人の土台を変化させる力は、案外、言葉に依らないことが多いのでは、というのが子ども達を観察していて思う…という事例をいくつかお話した。その中で、花沙さんより「(別の子の取り組む姿)が、その子に浸透して、劇的な変化につながっていったんですね」という言葉が出た。
「浸透する」とは、この無意識の領域を、少しずつ変化させる力があるのだろうか?
このつづきを、次回に。

以下、文責:花沙

今回は、花丘ちぐさ「その生きづらさ、発達性トラウマ?ポリヴェーガル理論で考える解放のヒント」(春秋社2020)という著書に少し触れた。その著書によると、ポリヴェーガル理論とは20世紀末~21世紀初頭に、行動神経学者のS.W.ポージェス博士の理論で、ポリは複数を、ヴェーガルは迷走神経を意味しているとのこと。虐待や不適切な養育を受けた人は、仲間と交わることを促進するという腹側迷走神経系がうまく機能していないことが多いという。腹側迷走神経系は、仲間とつながり、安全に気持ちよく暮らしていくためのもので、いわゆる空気を読むための神経系であり、赤ちゃんは腹側迷走神経系が未熟な状態のため、よく発達した腹側迷走神経系を持った大人が、あやしたり話しかけたり、十分に面倒を見ることが必要とのことだ。
 虐待や不適切な養育を受けた人以外にも、自閉スペクトラム症の人は、この腹側迷走神経系が弱い場合が多いとのことで(スタンレー・ローゼンバーグ/花丘ちぐさ訳「からだのためのポリヴェーガル理論」春秋社2021)、その部分に働きかけるような身体的アプローチなども研究されてきている。
学校になじみにくい子どもたちは、その子の性格的な問題とされる場合が多いなか、このポリヴェーガル理論のような、一つの考え方から「まずは子どもたちのカラダの様子に着目する」という視点が生まれるのではないかな、と感じた。

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