リレーのような、二人三脚のような
春なのに雨の日が多かった最近。
やっと晴れた週末に出かけたのは、県北の日向市。目的は父親に会いに。小学生になった息子の卒園式や入学式の写真などを見せるためだ。父親は未だにガラケー。スマホでホイ!と写真が送れないので見せるには会いにいくしかない。まぁ、それが会いに行く理由にもなるのだけど。
父親のリクエストもあり、家族3人+父親の計4人でグリーンパークという広い公園へ出かけた。高台にある公園で、晴れた日は海が綺麗に眺められる。父親はここから海を眺めながら散歩をするのが好きらしい。
それは突然の提案だった。
「リレーしようよ!」
6歳の息子が言い出した。
はぁ?
思わず声が出た。
自分を含めて今この場にいるのは30代、40代、60代と、6歳。この4人でリレーをして走りたいと言うのか。
「僕と仲間になりたい人!」
周りの反応をよそに、息子はぐいぐいとチーム編成を始める。3人で顔を見合わせていると、父親が手を挙げた。
「はい!俺が仲間になりたい」
あぁ、息子の提案に乗ってしまった。
これはもう、リレーするしかない流れだ。
「いいよ!」
編成を完了させた息子は嬉しそうだ。息子と父親がチームを組んだので、自分は必然的に奥さんとのチームになった。
「よし、じゃあ始めるよ。よーい…」
問答無用でスタートさせようとする息子。
待て待て待て!どこまで走るのよ。
走る順番は?
…って、やる前提で話してる自分も自分だ。
「コレ持っていって、どこまで走るか決めな」
父親が飲みかけのお茶のペットボトルを息子に渡す。
分かった!と頷いて走り出した。息子の姿はどんどん小さくなる。小さな背中は、どこまでも走っていけそうなくらい軽い。
マジかよ。そんなに走るのかよ。
既にげんなりしてる自分とは対照的だ。
息を切らして戻ってきた息子は、走る順番を決め始めた。それに従って、走る順番はこうなった。
第一走者:父親、自分
第二走者:息子、奥さん
「じゃあ、いくよ!よーいドン!」
息子の合図で、父親と2人で走り始める。
父親とかけっこなんて、今まであっただろうか。
あったとしても小学生の時?もう30年ほど昔の話だ。
追い抜くでもなく、歩くでもなく、お互いが無理なく走れるくらい絶妙なテンポで走っていく。まるで二人三脚で走っているかのよう。
今、父親は66歳。自分は37歳。
お互い年取ったな。
あ、そういえば父親は病人だった。走って大丈夫かなとチラリと横を見たが、杞憂だった。
笑っていた。
楽しそうに走っていた。
同じスピードで、お互い第二走者にタッチした。
今度は息子と奥さんが走っていく。
「もう疲れた。終わったら帰るぞ」
父親は、笑いながら話していた。
あぁ良かったと思った。
こんな訳わからないリレーでも、楽しめるくらいの余裕はあるようだった。
少しすると、予定通り息子が一番で戻ってきた。
「ぼくの勝ちー!」
もう完全な出来レースだが、誰の異論もない。
「お前の勝ちだ」
そう言うと、息子は嬉しそうな表情を浮かべていた。
この後、家に戻る途中で奥さんからスマホで写真が送られてきた。父親と2人で走っている時の様子だった。
似た顔が、似た表情で、楽しそうに笑っていた。
(note更新138日目)
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