副業:公務員

本業はaiko研究。副業のサラリーで生きながらえる。

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最近の記事

深夜ロマンティック春鉄道

金曜日0:10の上り列車は朝のようだ。 少し飲み過ぎた地元の三人組。   お揃いのグレーのパーカーを着たカップル。 寝過ごして一駅戻るサラリーマン。   イヤホンをして眉間にしわを寄せている色っぽい女性。 何をも共有しないのどかな乗客たちの間には、かすかな連帯がある。まばらに埋まったシートは、本来のふくらみでもって我々を包む。 無造作に空いている窓から音を立てて投げ込まれる空気は、日に焼けたシートにぶつかって古本のような香りと化す。小鳥のさえずりを乗せた春の風と合

    • 半月

      帰り道の23時。 雨雲の去った群青の海。意味も目的も無い広がりに投げ出され、戸惑いと悲しみでぽっかりと上に口をあけて生きている半月。 私の心は、切り落とされて、断面から血を流し喘いでいる。今日も一つ、黒ずんだクレーターを作る。 それでも私は強く思う。腹の底の根の奥深くの、黄色い光源を、まるく眩しい人を。狼狽える私に、生命の焔をともす彼女を。 幾ら歩を進めども、距離の縮まらぬ半月よ。 願わくば、駆けていって、涙を流すお前の、その美しい命の光を、抱きしめさせてくれたまえ。

      • 友人の部屋

        同僚の彼とは、何となく趣味が合う。仕事の合間によくしゃべったり、居酒屋でくだらない色恋の話をしたりする仲だ。 当初から、「普通の」仲良しだと認識していたが、しかし同時に私は彼と会話するたびに、或る<拒否反応>を自分のうちに感じていた。もしくは、彼のうちに<異物混入>を疑っていた、と格好つけた言い方も許されるか。 (私はここでサルトルの<吐き気>という表現に引っ張られたことを白状する。) 拒否反応1:彼は、いかにも若者が気取って手に取りそうな、たいした値段のしないブランド

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