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フリーランスとして専業で合気道の道場を始めて1年。見えてきた「合気道の現在地」#1


(1)少しずつ、色々なことが見えてきた

① フリーランスとなって約2年

2022年11月、岐阜へUターンして、合気道の道場を始めました。道場の本格稼働は2023年4月なので、この記事を書いている時点(2024年6月)で、1年余りが経過したことになります。

2022年6月末に環境NPOを退職して、本格的に道場開設の準備を始めたので、フリーランスとなって2年が経ちました

② 少しずつ、色々なことが見えてきた

フリーランスとなることも、地元へのUターンも、合気道の道場を運営することも、全てが初めての経験です。「出来ることをひとつずつ」と自分に言い聞かせながら進んできましたが、2年も経てば見えてくることがあります。

例えば、合気道の現状。また、それに対して自分がどう動くべきか

例えば、好きなことだけに関わって生活できることの幸運

例えば、地方(田舎)で暮らすことの楽しさ

今回は、「合気道の現状」について書いてみようと思います。

(2)まずは合気道の実状を受け止める

① 好きだからこそ、厳しい現実を受け止めることから始める

最初に断っておきますが、私は合気道が大好きです。

これほど面白く、稽古をする人にとって有益な技芸・習い事は他にないのでは!?と思うくらいです。だからこそ、ひとりでも多くの人に、合気道に触れて、感じてもらいたいと思い、日々活動をしています。

ここから合気道が置かれた厳しい現状について書きますが、「だから合気道はダメだ」などと言うつもりは毛頭ありません。現状を把握して、課題を明らかにできなければ、厳しい状況を変えることはできません。

自分がすべきことを明らかにするために、まずは現実を受け止める。ただそれだけの作業です。

② 合気道は普及・拡大しているか?

合気道は普及・拡大している武道でしょうか?(公財)合気会のHPにはこのようにあります。

合気道は、世界的広がりを見せています。合気道の海外普及は1950年代から始まり、現在(2018)、世界国々の約7割、約140ヶ国に組織・団体があります。(中略)近年、海外普及の活動において(公財)合気会の指導者派遣や合気道本部道場の活動と共に、各国の合気道組織・団体による積極的なセミナーや交流活動、国際交流基金による指導者派遣、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊、シニア海外ボランテイアによる指導者派遣なども活発になっております。

(公財)合気会HP「世界に広がる合気道」(*1)

日本の漫画・アニメが世界的にも広く人気を獲得しているので、袴姿で稽古をする、いかにも「日本らしい」合気道は、文化の違う外国人も興味を持ちやすいのかもしれません。

とはいえ、イメージや思い込みだけで物事を捉えることは危険です。まずはデータを見てみましょう。

(3)データで見る、合気道への関心の低下

日本や日本国外における合気道人口の現状や推移については、情報源が確かなデータを見つけられませんでした。そこで、ここからは「Aikido Journal」に掲載された、こちらの記事(2017)のデータを参照させていただきます。

「Aikido Jornal」は英語主体のWEBマガジンです。記事中のデータは「1,000人以上の回答者から得られた調査結果(data compiled from over 1,000 respondents)」とありますが、必ずしも日本のデータが多く含まれているとは限りません。

ですが、合気道は海外普及が進み、稽古者数は日本人よりも外国籍者の方が多くなっているので(*2)、合気道全体の傾向を見るうえで支障はないと考えられます

データ①:指導者1人に対して、5.4人の生徒

Student: Chief Instructor ratio: 5.4: 1

Aikido Journal

指導者(Chief Instructor)1人に対して、(平均)5.4人の生徒(Student)しかいない、というのが合気道の現状です。生徒5人では、質の高い稽古も、持続的な道場運営も望めません。ましてや、指導者が「専業」で道場運営をするにはほど遠い数字です。

このデータは、私が実際に見聞きした、日本各地の合気道の実状にも合致します。

2024年1月27~28日にかけて、(公財)合気会が主催する「指導者候補講習会」に参加しました。この講習会からは、合気会の「若手の合気道指導者を大切にしたい、育てたい」という、強い決意を感じられました(ちなみに、参加費は不要+遠方からの参加者には宿泊先(朝食付き)が用意されました)。

日本各地の若手指導者・次期指導者(40歳以下 / 二~四段)が集まるこの講習会では、参加者から各地の合気道の実状を聞くことができました。そして、どの参加者も、口を揃えて次のように話してくれました(もちろん、これに当てはまらない参加者もいたと思います)。

  • 自分以外に、若手の道場生がほとんどいない(メンバーの高齢化)

  • 入門者は少なく、稽古はいつも少人数(メンバーの減少)

私が主に通った2つの道場(東京)でも、新たな入門者がほとんどいない(入門しても定着しない)という状況が長らく続いています。新たな入門者が少なければ、既存メンバーの高齢化が進みます。

また、仕事や家庭などの事情で、熱心な既存メンバーが道場を離れることも珍しくありません。必然的に、稽古に参加するメンバーは高齢化しながら、全体の参加者数は減っていくことになります道場生が少なく、新たな入門者も少ないという状況では、持続可能な道場運営は困難です

ですが、これが合気道の現状なのです。

データ②:合気道への関心の低下

Interest in aikido has declined an average of -9.3% per year over the last five years.

Aikido Journal(注:太字化は筆者による)

合気道に興味を抱く人は、WEBで「合気道」について検索します。ですが、同記事によると、WEB検索における合気道への関心は、顕著な減少傾向を示しています。同記事では、2011~16年の5年間で、年間平均-9.3%の検索動向の減少が見られた、と分析しています。

・Google Trends: 2004-2017
Growth Rate: -86%

Aikido Journal

2004~17年のGoogleトレンド分析では、WEB検索における合気道への関心の低下は、何と86%の減少傾向となります。現時点(2024年)では、さらなる関心の低下が続いていると推測できます。

データ③:若年層の合気道離れ

同記事では、もう一つの分析対象として、Instagramのハッシュタグデータ*を扱っています(*2017年12月現在のデータ)。

「Instagramは、主に18~29歳の人々が使用するSNS(Instagram is a social network predominantly used by those age 18-29)」として、分析対象に選ばれています。そして、その分析結果として、次のように示されています。

Yoga(43.9M)>MMA(11.3M) >BJJ(8.2M)>Karate(2.8M)>Judo(2.0M)>Aikido(0.3M)

引用元:「Aikido Journal」作成のグラフ

「MMA(総合格闘技)」や「BJJ(ブラジリアン柔術)」に高い関心が集まるのは、日本国外のデータ割合が大きいことが要因と思われます。ですが、日本の若年層における合気道の関心度合を分析しても、同じような結果になるはずです(Yoga・MMA・BJJが、別の対象に置き換わるにしても)。

この結果を踏まえて、同記事は次のように結論付けています。

Within the 18-29 demographic, Aikido is nearing total irrelevance.

(筆者訳)18~29歳の層は、合気道にほとんど見向きもしなくなっている。

Aikido Journal

若年層の合気道への関心の低下は、そのまま合気道を始める若者の減少に直結します(ちなみに、私が合気道を始めたのは28歳)。そして、日本では急速な少子高齢化が進んでいます。

若年層が減り続ける日本において、そもそも肝心の若者が合気道に興味・関心を持たないのであれば、「合気道を始めよう」と思い立つ若者が少ないのは当然なのです。

(#1)はここで終わりです。次の記事(#2)はコチラ ↓↓


【参考・引用文献】

(*1)http://www.aikikai.or.jp/aikido/about.html

(*2)「公益財団法人合気会令和4年鏡開き推薦昇段者一覧(The list of Kagamibiraki Grading in 2022)」を見ると、新たに推薦・昇段した高段者(五段位以上)は、日本人よりも外国籍者の方が多いことがわかります。



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