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モダンダンスとコンテンポラリーダンス④ ~コンテンポラリーダンスとは~


コンテンポラリーダンスを日本でも広めたい思いもあり始めたこのnote。

広める為には、コンテンポラリーダンスとはそもそも何か、ハチャメチャ過ぎるコンテンポラリーダンスの捉えられ方を、少しはっきりさせた方が良いと思ったからです。

なぜなら何でも取り入れるコンテンポラリーダンスの特徴から、現在のコンテンポラリーダンスは縦横無尽に取り入れ過ぎてカタチだけ真似した浅いものが増えてきている感があります。そしてやはりカタチだけの浅いものは技術的にも芸術的にもレベルが低く、残念ながら人々が魅了されない傾向があるからです。

コンテンポラリーダンスを知らない人にその良さや、より楽しむための基礎知識、アドバイス、鑑賞方法を分かりやすくお伝えするのも重要ですし、

マーケティングにもっと力を入れる、そのマーケティングの場を作ることなども重要ですが、

そもそもコンテンポラリーダンス自体、つまりアーティスト自身がより深い芸術性や技術的能力を高めて、おもしろくする必要があるからです。

これは決して、人の目ばかり考えて作らなければならないという訳ではありません。芸術は、自分が良いと思ったものを良いと思う方法で表現することだと私も思っているからです。しかしその中でも基礎知識を用いて自分だけのオリジナリティや哲学の追求、見え方の工夫をする事プラス技術面の向上は、物作りをする上では非常に重要、かつ自身の作品をより魅力的な作品にする為、表現したい事をより忠実に表現する為に有効であります。
(空間の使い方や照明、心理的な視覚効果などなど。)


なので、こちらのnoteではダンサー以外の方に知って頂く為だけではなく、ダンサーへの基礎知識の意味合いも兼ねて、バレエ、ジャズ、モダン、ポストモダンとそれぞれ見てきました。そしてやっとやっと、コンテンポラリーダンスの番がやってきました。

もちろん私は難しい事は反対派というか私自身の頭がついていかないので、分かりやすく簡潔にお話させて頂きます!ですので是非ともご一読下さい☆


photo: Batsheva Dance Company

コンテンポラリーダンスとは。 ~定義~


コンテンポラリーダンスとは、元々は更なる表現方法を求めてバレエとモダンの両方を取り入れてみた、20世紀中頃以降に生まれたそれまでにはなかった新しいダンス全般。(現在進行形で続いている。)


「何かのメソッド(バレエ/モダン/その他etc)に
何か新しいフレーバー
(フロアワーク/インプロ/
ジャズ/演劇/ヒップホップetc)
を取り入れた新しいダンス。」

「何か×何か=新しいもの=コンテンポラリーダンス」


それ自体に確立されたメソッドがあることは少ないが、様々なスタイルが取り入れられているため、複数のテクニックに精通していることが求められる、本来なら高度であるはずのダンス。
モダンダンスと同じで、動きの特徴ではなく考え方や時代に対してつけられた名前であります。

しかし何でもアリとも取れる使い勝手の良い名前のため、無法地帯化している側面も大いにあるダンス。



コンテンポラリーダンスとは。~歴史~


上記にありますように、コンテンポラリーダンスは20世紀中頃からと比較的最近のものかつ現在進行形であり、新しいものを取り入れて新しいものを作りだすという、モダンダンスよりももっと曖昧で自由度があるダンスです。その為振付家の数だけ違うスタイルがあり、現在もどんどんと新しいコンテンポラリーダンスが生まれています。つまり無数にあり今後の可能性も無限大です。

なので歴史というよりは、コンテンポラリーダンスが生まれ始めた初期の代表的な天才振付家達と、現在活躍している振付家のスタイルや考え方のご紹介をさせて頂き、いかにコンテンポラリーダンスがおもしろく芸術的なものであるかをお伝えできれば、そして同時に今後のコンテンポラリーダンス発展の為にも、自分も含め現役ダンサー達にとって良い参考になればと思っています☆



<Merce Cunningam コンテンポラリーダンスの父>

(1919~2009)
モダンダンサーであるHortonに学びGrahamのカンパニーでも活躍した彼は、コインを投げて裏表で振付を変えたり、物語がある必要は無いとしたり、ダンスとそれ以外(音楽など)が無関係でそれぞれ独立しているとしたり、抽象的なスタイルを生み出しました。

それまでは、いかに感情を表せるかを模索してきたモダンダンスの時代だったのですが、彼が一気に抽象さを取り入れました。
そしてそれが、後のポストモダン(反モダン)やコンテンポラリーダンスに繋がっていくという、ダンス史において非常に重要な人物でした。

「Before Cunningham、After Cunningham」と言われる位重要な人物です。




<Pina Bausch 演劇とダンスの境界線排除>

(1940~2009)
ドイツ出身のピナはNYの名門ジュリアードスクールやモダンダンスの偉人マーサ・グラハムのダンサー達に学び活動をした後、「世界はもう変わった。新しいものが必要。」と感じました。そしてダンスによる表現方法を作り直し、古くなってしまった伝統的な制約からダンスを解放させることを決断。
彼女はダンスと演劇とドイツの感情主義芸術をブレンドする事によって、それまでになかった新しい表現方法を作りました。

彼女の作品は「ダンスなんだけどもダンスではなく、演劇なんだけども演劇ではない。」というような印象で、ダンスと演劇の間に垣根がありません。
言い方を変えますと、ダンサーの内面、感情があってその感情がダンサーをそのように動かせており、ダンサーがそう動くからそこからまた感情が生まれるのです。

彼女自身、「私にとっては、ダンサー達がどの様に動く(踊る)かではなく、何がダンサー達を動かせるかが大事なのです。」と言っており、だからこそ彼女のダンサー達の見た目や年齢はバラバラです。外見や踊り方よりも、ダンサーを突き動かして躍らせる程の強い感情/内面を持ったダンサーを重宝していたのでしょう。

彼女のダンス界への影響はここではとても書ききれない位計り知れず、今日のコンテンポラリーダンス作品のいたるところに彼女の遺産が見て取れます。現在活躍する多くの振付家が、彼女に影響を受けていると語っています。

<作風>
人間本来のありのままの姿、汚い所や土臭さを思い切り出すところなど。

<創作過程>
自由に色々な事をどんどん試してみる姿勢。
ダンサーにも率直な意見やアイデアを求め、インプロ(即興)をさせてダンサーの個人的経験を振付に重ね合わせたりするところ。

<舞台の使い方>
ステージから水を吹き出させたり、岩を置いたり、ミュージシャンにステージ上で演奏させたり、ダンサーが観客席の中で踊ったりなどと、ステージや観客席の境界線やもはや概念さえもなくした所などです。




George Balanchine & William Forsythe バレエを”使って”新しいものを作った。> 

•George Balanchine (1904~1983 コンテというよりはネオクラシックやモダンバレエに分類される事もあります。)
•William Forsythe (1949~)


彼らはバレエを称賛し、17世紀から続くクラシックバレエのテクニックを用いながらもその伝統、表現の慣例をぶっ壊しました。バレエのテクニックでどこまで出来るか、そしてどんな新しいものが出来るかという限界に挑戦。
バレエをダイナミックで全く新しいものに生まれ変わらせた、最も重要な開拓者たちであります。

「バレエテクニック自体は古くはならない。古くさせるのはその使い方である。私はバレエを使って”今”のストーリーを創り上げるのだ。」
by William Forsyth

「純粋なクラシックバレエ」や、「バレエに反発して生まれたモダン」ばかりだった時代に、バレエを良しとし採用しながらもクラシックバレエではないものを生み出したGeorge Balanchineと、それを更に自由にダイナミックにして世界中に広げたWilliam Forsythe。現在あるバレエベースのコンテンポラリーダンスは、彼らがいなければ存在していなかったと言われています。


⇩ George Balanchine作。衣装や振付的にも白鳥の湖のような、いわゆるそれまでのバレエではない事が見てとれると思います。


⇩ William Forsythe  Georgeのものよりももっと進化し、様々な動きが取り入れられています。

⇩ 彼はインプロにも精通しています。バレエダンサーの持つ身体の可能性を全て使いきる彼のインプロメソッドは、世界中のダンサーを魅了しています。




<Ohad Naharin より人間らしいのに人間離れしたありえない動き。Gagaテクニック創始者。>


(1952~)
イスラエル出身の彼のスタイルは、超絶ワイルドで想像を遥かに超えて意味分からない位あり得ないダイナミックな動きなんだけども、これ以上ない位超絶ガチでリアルで繊細
えげつない位に、酸いも甘いも欲望も汚さも全てさらけ出して ”人間” を出しきってきます。

(Gagaメソッドとは)
イメージを大事にし身体の声をよく”聴く”事によって、身体の隅々まで感覚を研ぎ澄ましていくメソッド。それにより、より繊細でワイルドな、新しい身体の使い方、動きを発見していけるようになるメソッド。
ダンサーだけでなくダンス未経験の方でも思いっきり身体を動かす事の楽しみを発見出来る事から、老若男女問わず世界中で人気のあるメソッド。(実際クラスでは、プロダンサー、お年寄りの方関係なく一緒に受けています。)




<Butoh (暗黒舞踏) 海外で大人気>

全身ドーランで真っ白、坊主頭、ほぼ裸で縮こまった手脚などなど、不気味とも言われる日本生まれの暗黒舞踏。”ジャパニーズコンテンポラリーダンス”として、世界ではダンス史の教科書にも載っています。

“全て無の状態から想定された状態を想像して、手探りで動き出すのが暗黒舞踏のスタートです。 創造者の1人土方のメソッドは「イマジネーションと身体を結びつける回路の開発」と表現されたそうです。 こうした考えは当時は非常に前衛的でしたが、現在のほぼ全てのコンテンポラリー・ダンスの基礎となっています。”

〜暗黒舞踏 土方巽、大野一雄の創造した前衛舞踊の今 Japanese Contemporary Art dance: BUTOH〜より

立って体の動きで表現をするその他のダンスに対し、暗黒舞踏は立ちあがるどころか、体を動かせるようにする所からはじめなくてはならなかったり
「舞踏とは命がけで突っ立つ死体」
「ただ身体を使おうというわけにはいかないんですよ。身体には身体の命があるでしょ。心だって持っている」(土方巽)という創始者の言葉に現れているように、ものすごく深い思想があります。

単にクネクネしているだけに見えるかもしれませんが、彼らのように身体を動かそうと思えばかなりの研ぎ澄まされた感覚がイメージと身体の隅々の両方に必要です。
この意味で、上記のGagaメソッドに似ているところがあります。彼らのイメージを大事にする所や動き方や体つき(細いけど細かい筋肉がたくさん)など。

正直個人的には、以前は不気味で怖いと思っていました。しかし知れば知る程、怖くて目を離したいけどなんだか気になる、、目が離せない、、、あれ?何だか共感している所があるかもしれない、、それがどこがかは分からないし、創始者の言っている言葉も実はよく分からないけど、何だか気になる。。そうです、私も気付かない内に、魅了されていたのです。


⇩スイス人舞踏家による演技 in 日本

⇩ Levi'sのCMにも舞踏家が採用されており、すごくかっこ良いです。



引用:〜暗黒舞踏 土方巽、大野一雄の創造した前衛舞踊の今 Japanese Contemporary Art dance: BUTOH〜


その他現在活躍中のコンテンポラリーダンス振付家


⇩ DV8  (話しながらの椅子を使ったダンス。構成、振付、話の全てのバランスが素晴らしく、目が離せません。人を惹きつけるのは、派手な動きではないという事がよく分かります。)


⇩ Sidi Larbi Cherkaoui  (色んな物を使って現在のコンテンポラリーダンスという概念を壊し新しい物を作りたい彼の思いと、作品創作は彼からすれば真っ新なキャンパスに何でも自分の思い通りに描く事が出来て楽しくて仕方ないという事が伝わってきます。)


⇩ Sidi Larbi Cherkaoui & Damien Jalet (ステージに作られた建築アート。ダンス作品というのは身体の動きだけではなく、舞台や空間も含めた総合舞台芸術であるという事がよく分かります。)


⇩ Crystal Pite (William Forsytheから強く影響を受けた元バレリーナの彼女の作品は、素晴らしいテクニック、即興、衣装、スクリーンなど様々なものを用いながら、強くストーリーを表現。長らく抽象的だったダンス界に物語性をパワーアップさせて復活させました。)


⇩  Huang Yi  (ロボットとのコラボは、最新テクノロジーを使ったまさに新しく現代的な試みであり、且つドラマチックな作風は、今までの常識を全て覆した画期的なものでした。)



まとめ&終わりに 〜考え尽された思想、構成、スタイル〜


コンテンポラリーダンスは何でもアリっちゃあアリとも言えてしまうのですが、以上に見ましたように、人々を魅了する作品を作る振付家達はやはりそれぞれ皆、考えに考え抜かれた上で作品を作っています。テクニック的にも思想的にも舞台構成的にも。だからこそ人々を魅了しているのですね。
(自身の哲学的にあえてテクニックを排除する事もあります。)


振付家とダンサーとは監督と俳優のように全く別物で、振付家や監督は更なる総合的な知識求められます。上記にあげた多くの振付家達はダンスだけではなく作曲、建築、演劇、文学など様々な事に精通しています。

日本でももっと多くのダンサーや振付家が、それぞれオリジナルの確固たる哲学や知識や技術などの基盤を持って作品を作って(踊って)いけば、日本人特有の丁寧さも加わって、コンテンポラリーダンスが栄えていくのではないかと思っています☆


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これにて「モダンダンスとコンテンポラリーダンス」シリーズはひとまず終了となります。

⇩過去記事はこちら⇩

ですが、まだまだおもしろい興味深い振付家、作品はありますし、もっとお伝えしたい事もございます。なので、またこちらでも随時ご紹介していけたらなと思っています☆

本日もありがとうございました☆

また引き続きよろしくお願い致します!

Aika.

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