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8月のプレイリストまとめ

さて、8月に聴いたアルバムリストいってみましょう!!
今回も殆どブラジル、南米が中心です。
基本的に初めて聴いたアルバム、たまに久しぶりに聴いたアルバムも載せています。

① Eu Tenho a Senha - João Gomes

「ピザジーニャ」*というブラジル北東部で人気の音楽が、2019年あたりから大ヒットを起こしているんですが、ついに全国的ヒットしてきたのを肌で感じております。
というのも、私が住んでいる「セルタネージョの首都」であるゴイアニアの街中でも、セルタネージョよりもピザジーニャが聴こえてくることが多くなりました。

ピザジーニャは北東部の文化フォホーという音楽が、いろんな経過をもって進化したもの。
特徴は1台のキーボード(音色は主にアコーディオン、シンセ)が中心になって音楽全体が作られている事です。

よく「セルタネージョとピザジーニャの区別がつきません」と質問されるのですが、セルタネージョの歌手がライブなどでピザジーニャの流行曲を積極的に歌っているので、わかりづらくなってます。

具体的に言うと、ピザジーニャのメロディはフォホー特有の哀愁があり、基本的にマイナーコード、つまり悲しげな感じです。
セルタネージョのような「みんなで大合唱!」的な大サビはありません。

ベースは常に同じパターンで、ドラムはエレクトリックな音を使います。これは元々キーボード奏者がキーボードに入っているプリセットを使って弾き語りしていた名残でしょう。
また、お隣である北部の音楽で同じくキーボードを使うテクノ・ブレーガなどの要素も混じっています。

歌い方も、セルタネージョは全体的に張り上げ気味&こぶしを効かせるような(声を濁らせるような)感じに対して、ピザジーニャは語りのような感じ。たまに声をうねらせることも。

ピザジーニャの代表的なアーティストと言えばオス・バラオンィス・デ・ピザジーニャなんですが、最近ジョアン・ゴメスが凄い勢いで追いついています。このアルバムは昨年の大ヒット作ですが、今でも流れています。TikTok効果だそうです。

ジョアンは若干20歳にして、本年のロック・イン・リオに出演も果たした今後注目の歌手です!

*ピザジーニャは、ピゼイロとも呼ばれます(ピゼイロはピザジーニャのパーティーが行われる会場の名前。その呼びやすさから、最近はピザジーニャをピゼイロと呼ぶようになったそう)

②Hermeto Solo: Por diferentes Caminhos - Hermeto Pascoal

エルメート・パスコアルの1989年のピアノソロ作品がストリーミングサービスでも公開されました。
これは本当に素晴らしい!!

もうね…「次は何が出てくるんだ!?」という好奇心に駆られっぱなしです! 
特に「Ê São Paulo」なんてオケに編曲したいぐらい壮大。
名曲「Bebê」は、1分29分のリハモナイズ(元々あるハーモニーをアレンジすること)が美しすぎて思わずため息出ちゃいました。

ボーナストラックにはピシンギーニャの「Rosa」とジョニー・アルフの「Eu e a Brisa」を収録。
これは意外な選曲だったな。

エルメートに関する記事は「奇才!豚やひげを楽器にする!!」みたいなものが多くて、中には「変態」*なんて書く人もいますね。

エルメートの異色な部分ではなく、器楽奏者としてのキャリアも長いという部分、もっと広まってほしいです!

*もちろん褒め言葉なんだと思いますが「hentai」という言葉は、近年ブラジルでも通じるので、あまり使わない方がよいと思います

③‎Samba Irresistível - Casé

若くして亡くなった伝説のサックス奏者カゼー
西荻窪アパレシーダのWillieさんが「今日カゼーの誕生日ですね!」とお知らせしてくれて、久しぶりに聴きました。なのでこれは何度も視聴してます。

カゼーはミナスの音楽一家生まれで、ナイトクラブやラジオ局でバリバリ演奏していました。日系人が経営していた「クラブ一番」というお店でも演奏していたそうで、確か日本の曲を収録したアルバムがどこかにあるはず。。

彼の演奏スタイルですが、音楽院時代にこのアルバムをよく聴いて、中でも気に入った「Feito de Oração」を耳コピして分析しましたが、フレーズは完全にビバップ(いつか清書して載せます)。

アルバムは1960年リリースで、ちょうどボサノヴァが流行っていた頃。既にサンバジャズもありました。
こういったワンコーラス丸々アドリブする際は、ジャズ、特にビバップがお手本になっていました。
やはりブラジル音楽のリズムに基づいたアドリブが生まれたのは、エルメートやアイルト・モレイラのグループ、クァルテット・ノーヴォがアルバムをリリースした1967年が起点だと考えられます。

カゼーは78年に46歳という若さで死去。
同じくジャズを得意としていたサックス奏者のヴィトル・アシス・ブラジルも81年に35歳という若さで亡くなっています。本当に残念です。

④Em Nome da Estrela - Xênia França

先月、レコーディングの仕事でサンパウロに行った時にお世話になったプロデューサーのピポ・ペゴラーロがシェニア・フランサのプロデューサー&ギタリストで。前々日まで彼女のカナダツアーに同行していたそう。

早速シェニアのアルバムを調べたら…
あれ、見た事ある!!

なんと私はシェニアのアルバム(2017年)を「あとで聴くリスト」に入れたものの、4年間も聴かずにいたのです。。なんてことを!!

黒人であり、女性であり、アフロブラジル宗教カンドンブレの信仰者であるシェニア。
彼女はバイーアを飛び出し、ブラジル、そして世界へ向けて何を訴えるのか。
その答えがこのアルバムに詰まっています。

一聴するとネオソウルのようだけど、めっちゃブラジルです!!
カンドンブレ、アフロブラジル音楽を感じる太鼓とリズム、現代を匂わせる無機質な電子音、そして甘いシェニアの声が混ざり合い独自の世界を作り出しています。
なんと、 アルトゥール・ヴェロカイもアレンジで一曲参加。

⑤Xenia - Xênia França

すっかりハマってしまった!!
こちらが2017年のソロデビュー作です。

サンパウロでモデルをしながら、2008年から歌手活動をはじめたシェニア。彼女の才能に目をつけたのはエミシーダでした。2010年のアルバムにゲスト参加しています。

その後、バンダ・アラーフィアというアフロブラジル文化に注目した大編成バンドでメインボーカルを勤め、同バンドで3枚のアルバムのレコーディングします(現在は脱退)。

なのでソロデビューと書きましたが、長い間サンパウロの音楽シーンで活動していたキャリアがあるんですね。

本作リリース後に行われた当時のライブ映像を見ましたが、落ち着きっぷりが凄い
自分が何をしたいのかハッキリしているアーティストだなと感じました。

⑥ A Mis Hermanos - Javier Lazo

ハビエル・ラソはアフロペルー音楽の超重要人物スザーナ・バカも認める実力とセンスの持ち主。
20年以上の音楽活動を経て、本作もアフロペルー音楽の面白さを魅せてくれます。スザーナもゲスト参加!

ランドー(アフロペルー音楽の一種、8/12拍子)かと思えばロックバラードになったり、ワイノ(アンデスの音楽)と8ビートを混ぜたり。。
とにかくペルーの伝統的音楽とロックが行き来するめちゃくちゃ面白い展開です。

ちょっと「ベタ」な感じが良いんです。
日本で言う演歌に近い?

そうそう!
以前ペルー人の友人に日本の演歌を聴かせた時「ペルーの音楽みたい!」ってたのを思い出しました。

⑦Vientre - Munir Hossn

バイーア出身で今はアメリカで活躍中のムニール・ホッスン(ブラジルでもなかなか聞かない珍しい名前だよ)!
アルフレッド・ホドリゲストリオのベーシストとしても活躍中です。
あ、ちなみにアルフレッドはライブ時に「ムニール・ホースン」と紹介しているので、ホッスンかホースンか、カナ名にするにはどちらが良いのかな。。

世界で活躍する間に得た様々な音楽を吸収しながらも、バイーアの心を忘れない本作。

実は2011年のデビュー作『INdiGenaJazz』も聴いていましたが、当時の私にはグッとこなくて。。

でも本作はグッときた!!
どこが気に入ったかというと、彼の強烈な個性とエンターテイナー的な部分がバンドと非常によく溶け込んでいるので全体的なバランスが良いんです。
やっぱりアルフレッド・ホドリゲスみたいな強烈なアーティストと共演してるからだろうか。。

ちなみに。これは完全なる好みですが、私はソリストが飛び抜けているアルバムより、全体的にバランスが良いアルバムが好きなのです。

⑧Amisturapá - Orlando Martinez

オルランド・マルチネスはパラグアイ出身のギタリスト、作曲家。
スペインに音楽留学した後、私が卒業したブラジルの音楽院でブラジル音楽とショーロを勉強します。日本の北海道にあるリゾートホテルにて半年間ギターとハープの演奏をしていた経験も。
現在はアルゼンチン、パラグアイの国境近くのブラジルのイグアス在住。

このアルバムは南米音楽の良さがギュッと詰まっているんです!本当に美しい!!
旅人オルランドだからこそ作れた作品です。
ということで、これは後日詳しく解説したいなと思っています。

ちなみに2曲目に収録されている会話はブラジル、パラグアイ、ボリビア、アルゼンチンで暮らす先住民グアラニーの言葉です。
こちらもあとで解説します!

⑨Decretos Reais, vol.1 - Marília Mendonça

2011年11月5日、ライブ出演に向かうために乗った小型飛行機の墜落事故で26歳という若さで帰らぬ人となったマリリア・メンドンサ。

彼女はセルタネージョ界で最も人気のある女性歌手で、失恋ソングの女王、ライヴの女王という呼ばれ、亡くなる前は「セルタネージョの女王」と呼ばれていました。

マリリアの死後、親族はライブ録音などを発表する準備をすすめており、彼女の誕生日である7月21日に合わせ、このアルバムをリリース。
vol.1ということで、続編もあるはず。

抜群の歌唱力と、多くの女性たちを勇気づけたマリリアの温かい声。
いつまでもファンに愛され続けるでしょう!!

⑩Stockholm Syndrome - Will Vinson

こちらはもう何百回と聴いているんですけど、つい最近また聴き直したので載せちゃいます。

私が大好きなイギリス人サックス奏者ウィル・ヴィンソン。
実は2019年にブラジル公演にきたんですよ!
その時はロシア人トランペット奏者アレックス・シピアジンとの来伯。二人ともニューヨークで活躍するトップミュージシャンです。

授業を休んで、音楽院仲間とサンパウロの会場まで行きました。なんと入場料は無料です!

もう涙出るぐらい最高だったんですけど、ショーの最後の方はアレックスが時計を気にしてて。
どうやら2人は終演後、空港に猛ダッシュする必要があったそうです。
終演後のトークショーは、彼らと共演したブラジル人アーティストのみで行われました。

で、本作は私の中でウィル・ヴィンソンの最高傑作。
彼の魅力は柔らかい音色とメロディアスなソロ。激しい曲でもバラードでも気品漂う繊細な世界観ではないでしょうか。

特にコール・ポーターの「Everything I Love」は典型的なジャズ進行の中、ビバップフレーズとは全く違うアプローチを見せてくれます。

ビバップのソロが小さなフレーズが重なりあうパズルのように作られるのに対して、彼のフレーズは横に大〜きく広がるようなアーチのような感じ。
できるだけ縦線(コードが変化する部分)を消すような感じです。

ちなみに彼のオリジナル曲のコード進行はⅡ-Ⅴ-Ⅰ進行というよりも、やはり大きなアーチ的なメロディに沿うように付けられた不規則なものが多め。
そういう曲ではⅡ-Ⅴ-Ⅰのフレーズはあまり使えません。使えても浮いてしまう。

なので、コードが変わる時に「できるだけ前の音からインターバルが少ない音を選ぶ」っていう大きなスケールを作るようなアドリブの作り方*があるんですけど、ウィル・ヴィンソンはジャズ・スタンダードでもそれを多様している感じですね。

よ〜く聴くとビバップ的なアプローチも部分的にしていますけど、独特なソロになります。
面白い!!ちょっとマニアックですみません。

*NYで活躍していたブラジル人サックス奏者ホドリゴ・ウルサイアは「グランデ・エスカーラ(大スケール)」と呼んでいました

【余談】
ショーにはルイーザのフォルクスワーゲン・タイプ2に相乗りして行きました。
露天商の人やヒッピーが好む、基本的には荷物を運ぶための車です。長距離には向いていません。

サンパウロまでバスなら往復80レアル…
でも相乗りならガソリン割り勘で20レアル!!
これはかなり助かりました。

肩を寄せ合いながら座る9人を乗せて走るボロボロの小さなバン。重すぎたようで、超ノロノロ。
1時間40分の道のりを結局3時間かけて到着しました。

ルイーザは「もう二度とこんなに人乗せて走りたくない」と言っていました。。
ありがとう、そしてお疲れ様、ルイーザ。

私の右隣がルイーザ。本当にありがとう。今はリオ在住。会いたいな〜。

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