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今日は誰にも愛されたかった

谷川俊太郎が好き、と言ったら
おすすめだよ、と
詩集をひとつ教えてもらった。

谷川俊太郎さんと
岡野大嗣さんと
木下龍也さんの
連詩をまとめた

今日は誰にも愛されたかった

という本。


「愛されなかった、ではなく?」
そういう文法があるのかな、
なんて思いながら、
良心的な薄さの本のページを捲る。

そこから1時間、
贅沢にもとっぷりと連詩の海に潜った。


浮上してきてまず浮かぶ感想は、

やっぱり、
谷川俊太郎さんが好き
ということ。

その紡ぐ言葉が、好き。

詩って"うた"なんだ、って一作目から思わせてくる。

そしたら、岡野さんも同じことを言ってて、だよね!と部屋でひとりつっこんだ。

思っていたより、谷川さんは自由な人だった。
いや、私が知らないだけで文学の人はみんな自由な人なのかもしれないけど。

岡野さんは、共感しながら思わず笑ってしまうような、そんな歌が多かった。

そしたらこれもやっぱり、
よく共感するって感想をもらうとのことだった。

あと、ちょっとひねってあまりない表現にするところも好き。
今日は誰にも愛されたかった、は岡野さんの言葉だった。

木下さんは、ちょっと芸術作品な感じがした。
一見、意味はわからないような、そんな作品が多い。

でもロマンチックなのもたくさんあった。
なんだか全体的に綺麗で、芸術っぽく感じる。


この本の面白いところは、
作品だけじゃなく、その作品が生まれた経緯やねらったところを
3人で語り合っているところだと思う。

そんなにしっかり解説されると思っていなかったから、
言葉の余韻に浸りつつ、
あ、意外とそこはそうなんだ?みたいな種明かしもちゃんと楽しめた。

しかも、170ページほどの本の中で、
36遍ある詩が3回ずつ登場してくる。

1回目は作品として。
2回目は解説の中で。
そして3回目は、作者名を書かず、すべてをつなげて。

1,2回目で本来十分な気がするのに。
言葉というものの受け取られ方を
緻密に計算してるんだなぁと感じる本だった。

巻末に、「コトバといちゃつく」というフレーズが出てきた。
なんだか、それが全てなきがした。
大人の男3人が、まぁ楽しそうにしているなぁと。
それを読んでる私もいつのまにか一緒に楽しんでた。

今日は誰にも愛されたかった、

詩に抱かれて眠るなんて寂しくて贅沢だなぁと思う。

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