神野藍

文筆家/エッセイスト 私のこと、頭の中に浮かんだことを綴っていきたいと思います。 執…

神野藍

文筆家/エッセイスト 私のこと、頭の中に浮かんだことを綴っていきたいと思います。 執筆などのお仕事はお手数をおかけしますが、TwitterのDM又は下記メールアドレスまでお願い致します。 ai.jinno.y@gmail.com

マガジン

  • 私のせいかつ

    私に暮らしについての記録

  • わたしと彼女

最近の記事

「彼、キャロットケーキが好きって言ってたから。」

「彼、キャロットケーキが好きって言ってたから。」  そんな可愛いことを言いながら、眉をひそめて人参をすりおろしているのは友人のSちゃんだ。彼女は私が出会った中でも群を抜いて愛くるしい女の子で、見た目ももちろんだが、彼女の発する空気そのものがふわふわとしていて包み込まれる感じがする。よく思うことだが、愛することに、愛されることに何の疑いももっていない人間は一緒にいて穏やかな気持ちになれる。 「でも、こんなに人参をすりおろし続けたら、手から人参の匂いがするようにならないかな」

    • 「家庭的だね」なんて言われたくない

       家庭科の調理実習以外で包丁をろくに握ったことがなかった状態で上京してから6年。特にきっかけがあったわけではないが、いつのまにか料理が面倒なものから楽しいものに変化した。日常的に一度で何品も作ったり、何時間もかかるような手の込んだものを作ったりはしないが、かけられる手間と時間のバランスを見ながら工夫してやっている。  何のメニューにしようか考え、無心になって作業をし、出来上がったものを胃袋に収めるまで、これら全ての工程が好きだ。部屋の中が温かい匂いで充満している中で、火にか

      • 「セックスで何が大事なことですか」と知りたい人へ

        Q,「セックスにおいて大事なことはなんですか?」 A, 19歳の私「都合よくセックスできること、面倒じゃないと尚可」 21歳の私「身体の相性、あとは仕事だったらなんでもいい」 23歳の私「             」 何人とセックスしたかは覚えてないが、確実に普通の人間より経験は多い。 セックスが趣味だったときもあるし、仕事だったときもある。ここ何年かの人生で切っても切り離せないものの1つであった。 女優をやっているとき「どうやったら気持ち良いセックスができますか」「セ

        • 京都への逃避行。

          その衝動は突然だった。 「私がいるのはここじゃない」と思った。 東京の自宅に缶詰状態になっている私は、”沖縄県・梅雨明け”のネット記事を見て、そう思ったのだ。特にニュースで話題となっていた沖縄という土地は大して重要ではなく、自然に囲まれた、今ここではない場所に行きたいという衝動に駆られた。 最初に、今自宅に缶詰状態になっている私について説明しよう。 私は解決しなければならない大きな問題を抱えていた。 東京の自宅は何一つ不自由もなければ、無駄もない。しかし、ただ難点なのは感

        「彼、キャロットケーキが好きって言ってたから。」

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        • 私のせいかつ
          2本
        • わたしと彼女
          1本

        記事

          「ちょうどよく病んでクリエイティブしよ」

          胸下まで伸びた長い髪を一つに纏めた彼女。 明け方まで続いた飲み会を引きずっているのか、 珍しく一杯目はビールではなかった。 土の中に眠る根は同じものから分岐していても、地上に出る部分はまるで違う、真逆な私たち。アルコールを摂取しても、平坦なテンションのままで、嬉しい話も悲しい話もする。表情も声のトーンにも気を遣わなくて良い、そんな表層から読み取らなくても、何となく言葉の裏にある感情は推測することができた。毎週末会うほど仲が良いというわけではないが、「どこに向かうか足踏みして

          「ちょうどよく病んでクリエイティブしよ」

          AV女優とさよならしても、わたしは渡辺まおとさよならしない。

          本日で私は一つの人格を失うことになる。 お風呂の設定温度は常に42度だった。 実家で設定されていた温度を今でも引きずっていて、それが他人の家と比べると少し高めであると知ったのは仲の良い友人に言われたからであった。 熱い風呂には決まってスマホを持ち込んで、タイムラインをぼんやりと眺める。私の髪の毛の生え際からは汗がにじんで、目に入ったしずくは私を苦しる。もう無理だと思ったときに脱衣所の珪藻土のマットの上で涼むのが日課だった。 「これがトトノウってやつか!」とサウナが苦手な私

          AV女優とさよならしても、わたしは渡辺まおとさよならしない。

          わたしと彼女(1)

          これで私のことを呆れたとしても、 嫌いになったとしても それでいいと思えるようになりました。 デビューしてもうすぐ2年、 休業まであと2ヶ月ちょっと、 AV女優渡辺まおになったことで、 あの頃の自分を客観視することができて 受け入れることができるのを 何よりも嬉しく感じます。 己の弱さを認められるようになることが 強さや成長への一歩なんだと ある人に教えてもらいました。 最後まで上手く綴れるか分からないけれど、 お付き合いください。 __________________

          わたしと彼女(1)

          AV撮影のセックスは本物?

           ある女の子に聞かれたことがずっと頭の中に引っかかっている。その子は疑問を抱くのが当然かのように聞いてきた。 「AV撮影のセックスはセックスなの?精子を出してないセックスってセックスなの?」   この質問には正直面食らってしまった。1年間AVの撮影現場にのめり込んでいた私はそんなことを疑問に思ったことがなかったからだ。というよりもそんなことを疑問に思えないぐらい、ある意味"麻痺"していたのだ。  まずこの女の子は私と同じ早稲田の学生で、普段はAVと無縁の生活を送っており、

          AV撮影のセックスは本物?

          モラトリアムと性欲

          大学生のモラトリアムがなくなるのかもしれない、とふと思った。 それは大学生だけじゃなくて、色んな世代でモラトリアム自体を許さない、そんな風潮があるように感じてしまう。  エリクソンが定説したように心理的モラトリアムとは青年期の自分探しの期間のことである。誰しもが"自分探し"といって、色んなことにチャレンジしたり色んなところにいったりして"本来あるべき自分の姿と位置"を探そうとする。その行動の根底には「自分にはもっと輝ける場所がある」「自分に合うもっと楽しい仕事がある」という

          モラトリアムと性欲

          渡辺まおとの付き合い方

          1,初めまして 初めまして、渡辺まおと申します。職業はAV女優です。 しかしながらnoteでは性的好奇心を唆らせることとはかけ離れた、私の頭の中に浮かんだこと、私の心の中にあるもの、デビューの前後にまつわることを綴る予定です。目的が違う方は、このページを閉じて黒い暖簾の向こうにお進みください。  私の人となりやAV女優として歩んできた軌跡はこちらの文春オンラインさんのインタビュー記事に端的にまとまっているので、参考にしてみてください。 https://bunshun.jp/

          渡辺まおとの付き合い方