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第4話:イタリア日本食飲食店での葛藤と新たな道への模索

慣れない飲食店で働きながら、私は小さなレストランとホテルの大規模な宴会会場でのウェイトレス業務がいかに違うのかを痛感しました。ホテルでは決まった時間にイベントが始まり、すべてが計画通りに進みます。料理もあらかじめ決まっているため、私の役割はその順序に沿って担当テーブルのお客様を満足させることが中心でした。

しかし、小さなレストランではそのような決まりがほとんどなく、その場の状況に応じた柔軟な対応が求められました。ただ、その柔軟性は個々の主観によって正解が変わるため、長く働いているスタッフの声が大きな影響を持つことが分かりました。トレーニング資料などは一切なく、すべてが人からの指示や経験によって決まるため、新参者にとっては戸惑いが多い環境でした。

この経験を通じて、飲食業がいかに体力を消耗する仕事であるかも改めて実感しました。お客様としてレストランに行くときには、美味しさや清潔さ、店の雰囲気、そして店員のホスピタリティを重視していましたが、裏側の労働者視点で考える機会を得たことは非常に貴重でした。

また、日本酒への興味についても、真剣に考え直すことができました。週4、5回の仕事に疲れてしまったため、週3回ほどのペースで働けるレストランを探しながら、日本酒に携わるかどうかを再検討することにしたのです。

その一環として、イタリアで日本や日本酒に関連する人々や会社をリサーチし始めました。まずはXでミラノでの日本酒に関するイベントを調べ、イタリアで日本酒を製造している日本人のAさんを発見。彼と連絡を取り、ZOOMで詳しい話を聞くことができました。彼は、日本酒試飲会を開催しているイベント企画者を紹介してくれた上、実際にミラノで行われる日本酒イベントにも招待してくれました。

そのイベントでは、多くの日本酒が並び、招待されたイタリア人たちが次々とテイスティングしていました。Aさんの話で特に興味深かったのは、イタリア人に記憶されやすい日本酒は、少し癖のある味のものだということです。多くのお酒を一度に試飲すると、どうしても味の薄いものは強いものに相殺されるため、日本人が選ばないような癖のある味が記憶に残るのだとか。私自身も日本に帰ると色々な日本酒を飲むようにしていましたが、正直言って、味の違いがそこまで分からないことが多いです。このイベントを通じて、自分が日本酒を扱うビジネスにどれだけ情熱を持てるかを見極めようとしましたが、現時点ではその情熱は湧かず、ひとまず保留することにしました。

同時期に、イタリアの不動産スタートアップ企業との面接も行いましたが、2次面接の連絡があったものの、その後全く音沙汰がなく、結局諦めることにしました。さらに、別の日本食レストランでも仕事を始めましたが、このレストランは開業からまだ1年以内であり、懐石料理というイタリア人には少し特殊な料理を提供していたため、あまりお客様が入らず、私が働ける時間も限られていました。

ここで感じたのは、なぜ飲食店で働くと人は嫌味っぽくなるのか、という疑問です。日本から来たスタッフが、自分たちのやり方が唯一の正解であるかのように振る舞う姿勢に、私は違和感を覚えました。イタリア人の同僚も、いつも怒られると言いながらも、感情をあまり表に出さない姿が印象的でした。それでも、日本人スタッフからは「彼は何を言ってもすぐに忘れるから大丈夫」と言われ、仕事の仲間としての信頼関係や職場のあり方について考えさせられました。

こうして、飲食業界での経験を通じて、多くの学びや葛藤を得ましたが、私自身が本当に進みたい道は何なのか、まだ模索が続いています。次回は、5月に入ってからの新たな挑戦についてお話します。

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