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変わるご褒美観

ここ十数年で『ご褒美』が大きく変わりつつある。
ブランド志向からカジュアル・シンプル志向へ。
そして、自分を褒め称えるものから慰めるものへ。

私が好きな海外ドラマにSex and the Cityがある。
ニューヨークのマンハッタンを舞台にキャリアウーマン4人の恋愛模様を描くラブコメディだ。2004年の終了まで6年に渡り放映され、アメリカだけではなく全世界の女性に人気を博した大ヒット作。
ドラマの中に出てくる女性たちは、こぞってブランド物を買い求めそれらを身にまとい鼻高々にパーティーに繰り出す。

もちろんドラマなので多少オーバーに表現されている部分もあるだろうが、この時代の働く女性たちの「自分へのご褒美」に対する考え方は、ドラマの中の彼女たちとそこまで大きくは違わなかったであろう。
ボーナスが入ればハイブランドの化粧品やバッグ、靴を買いに出かける。
頑張った自分にふさわしい物として。

しかし今はどうだろう。
自分へのご褒美としてブランド物を買う人はどれだけいるだろうか。
そもそもご褒美という概念自体が、昔と少し違ってきているように感じる。

元々ご褒美は、頑張った自分を褒め称える為のものだ。
仕事・家事・育児など対象は問わず頑張った度合いも人それぞれだが、共通しているのは自分を誉めてあげたいという自分への愛情が発端なのである。

一方、現在に目を向けてみる。
調査会社が2019年に取得したアンケートデータによると、
「自分へのご褒美を買おうと思うのはどのようなときか」という質問に対し、20~50代の男女の約6割が「ストレスがたまったとき」と回答している。

https://www.asmarq.co.jp/data/ex201909reward/

つまり現代社会では、"ご褒美=ストレス発散の手段"を化しているのだ。
ご褒美の購入動機が自分を慰める為だなんて、社会はいつの間にこんなにもストレスまみれになったのだろう。

こうなると、ご褒美を買うときの気持ちも変化していると考えるのが自然だ。昔は、「これを着たらどんな自分になれるだろう」「どんなに誇らしい気持ちになれるだろう」とワクワクしながら選んでいたのが、今では、「どんな物がこの嫌な気持ちを忘れさせてくれるだろう」というネガティブな感情のもとで選ばれる。

そりゃあブランド物が売れなくなるし、代わりにお菓子やお酒の購入が増えるわけだ。
すぐに消費できるものはすぐに癒しを与えてくれるから。

世の消費財メーカーがプチご褒美訴求を強化しているのは、それだけ多くの人が頻繁に発散しなければならないほどのストレスを抱えていることの表れなのだ。

昔のように純粋に、自分へのご褒美を買える時代はまたやってくるのだろうか。




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