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【インターネットに「生活のすべて」は書かれていない】

140字でいかに真意を伝えるか。15秒でいかに喜怒哀楽を引き出すか。

「簡略」「短縮」を進化と呼んできた私たちがこれから付き合っていかねばならないのは、行間の解釈を相手に委ねることの恐怖だ。

「どう読んだらそう思うねん」と驚くような解釈を、まじで大真面目にしてくる人がいる。
どう捉えたかは読み手の自由としても、「あなたがいかに間違っているか」の"指摘くん"、「そう思われたくないのなら、こう書き直したほうがいいのでは?」の"助言くん"、「あの人はこんなことを書いていたから要注意ですよ!」の"布教さん"などなどがぞくぞくと湧いて出るのを見て「ニッポンってたくさんの人がいるんだな~!世界は広いな~!」と感心する日々である。

でも考えてみてほしい。その140字の向こうにいる人は、生きている。めちゃくちゃ生きている。電車に乗ったりご飯を食べたり部屋を片付けたり、いわゆる「生活」をしているんだと思う。

そしてその「生活」のすべてをインターネットに書き記しているわけではないのだと、今日言いたいのはそんな感じ。



スイスイさんのcakes記事を読んだ。見知らぬ人からイヤな言葉が投げられてきて(それに対する返しがそれはもう痛快でぜひ読んでほしいのだけど)、まあこういう人いるよなあと思った。
自分の問題を他人にすり替えて、他人を貶めることで頑張って自分を保つ人。

でも一番驚いたのは、そもそも「"読んだだけで"めっちゃ知った気になってるやん」ということだった。
読んだだけなのだ。だいたいの人が。

インターネットに考えを書き置けるようになって以降「書いているものが全て」と思う人のどれほど多いことか。

例えば子持ちの主婦が「今日は誰々とごはんを食べたよ!」と書いたとして、「今日は誰々とごはんを食べたよ!その前に仕事から一度帰宅して子供たちに夕飯を作り置きして上の子の宿題のチェックと明日の時間割りの確認を済ませて、下の子を保育園に迎えに行って制服を洗濯して、夫が帰ってきたからバトンタッチしてごはんを食べに出て1時間で帰ったよ!」まで書かないと納得しない人ってまじでいるのだ。

でも書かんよなあ別に。そしたらすごい解釈で勢いよく行間を埋めてくる。

「たぶん子供を放置して出たんだろう」
「たぶんいつも部屋が汚いんだろう」
「たぶん子供を愛していないんだろう」
「たぶん結婚を後悔しているんだろう」

待て待てと。ちょっと待ってくれと。書いてない部分で飛躍しないで。
だから私は行間を読み手に委ねることにすごく抵抗を感じてしまう。





インターネットに書いてあるのは生活の一部、その人のほんの一部。
それなのに「この人はとても悪い人なんだ。家ではとってもだらしないんだ。その姿は見てないけど、いつも読んでるから分かる!」って大真面目に言う人がたまにいるからおそろしい。

だから私が読んでいてその人の人生の全てが分かったような気持ちになる時は、私が正しく行間を読めているわけじゃなくて、その気にさせるのが上手い書き手だなと思う(褒め言葉)。
「この書き手の人となりがめっちゃ分かった。好き。超好き」ってなること、あります私も。向こうがそう思わせるのが上手なんだろうなきっと。



人に平等に24時間が与えられていて、そのうちのどれほどを言葉にするかはその人の自由だ。
自分が見ている相手の顔はいつでも相手の側面であることを心に留めておかないといけないなと、自戒をこめて思った。

インターネットに生活のすべてを書く人はいないし、いたとしてもそれでもすべて相違なく読み取るのってなかなか難しいと思うから。

人は、液晶の向こうでそれぞれの生活を営んでいる。
すべては開示されていなくて当たり前。
それを理解せずに憶測で人物像をせっせと作らないように、私はワンアーム・ディスタンスを心掛けていく。

2020.09.17    ちゃこ


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