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【あの人の神様は、私の神様じゃない】

「尊敬する人は誰ですか」という質問が苦手だ。

誰のことも尊敬できないとかそういう偉そうな話ではなくて、私には神様がいない。
いいことが起きた時も悪いことが起きた時も、そこに神様はいなかった。



今日は「お届け」に行く日だからと母に言われて、少し早めに起きた。

母は宗教上の関係で、私が入学した時、免許を取った時、結婚した時など、毎回「お届け」をしている。
神様に報告し、どうぞお守りくださいと祈る。

父の意向で、父と私、そして私の兄もその宗教には入っていない。
母は母で、祖母の意向を継いでいる。

宗教についての持論などはセンシティブすぎで私には語ることなんてできない。賛成も反対もないから。
ただ、このたび転職のお届けをするため教会に行くのだけど、そこにだけはちょっとした違和感があった。

というのも、宗教上は、私の神様ではないのだ。母の神様だ。
別の人間の神様に、報告し、しかも守ってもらおうなんて、おこがましいやら何やらであまり気が進まないのも分かってほしい。

ただそれを私は母に言えなかった。30年間言えないものは31年目も言えなかった。



見よう見まねで手を合わせる。

母はきっと「娘をお守りください」と自分の神様にそう言ってるんだろう。
私はというと、どうも、こんにちは、くらいのレベルで話しかけてみる。

敬い、信仰する気のない者が持つべき所在なさが、きちんと私の元にも現れた。

神様。

私の神様はあなたじゃない。

正直、あなたのことあまり良く思ってない時期もあった。
母と祖母があなたの元へ参拝にくる日曜日、小学生だった私は教会の外の駐車場で石を並べたりして待っていた。
絵を描いたりおしゃべりするのが好きだった私にとって、一人での外遊びの方法が分からなかった。

あの時、時間の流れを速めてくれなかったのは、あなたが私の神様じゃないからなのかな。

ただ、あなたがもしも本当に神様なら、母のことくらいは守るべきなんじゃないですか。

母が兄の不登校を気に病んで分厚い本を読んでいる時、私は思ったよ。
あなた本当はいないんじゃないかって。

神様。

あなたって物理的に誰かを救えないから、だからこそ人と人を強く結ぶのが役目なんだね。

母と祖母は強く結ばれてるのは、あなたのおかげ。

1年前に、母に言われたことある。祖母の具合が一時的に悪くなって、気が動転していた母に。

「お母さんとおばあちゃんの絆はね、あんたとお母さんよりずっとずっと深いんよ。比べ物にならんのんよ」

神様。

私はあなたを信じなかったから、ツケが回ってきたのかもしれないね。



この世にはたくさんの人が生きて、それぞれにとっての神様がいて、それは宗教には限らない。
ある人にとってはプロ野球選手かもしれないし、ある人にとってはその道の先生かもしれない。

私、まだ神様に出会ってない。

けれどあなたの力を借りなくても、自分の力で出会うよ。自分の神様に。
そしていつかそれを見つけても、愛する息子と娘には押しつけないでいようと思う。

たぶん私はもうここには来ないけれど、母は毎週また通うだろうから。

あの人の健康と、親心を、どうかお守りください。



帰りの車は運転席が母、助手席に私。
後部座席に祖母がいた。最近はすこぶる体調が良いらしく、安心している。

二人の会話を聞き流しながら、外の景色を見ていた。
神様のいる教会はあっという間に遠ざかった。

今日は午後から地元の親友のところへ行く。
先月に第一子が生まれて、実家に里帰りしているらしい。病院にも駆け付けたから、赤ちゃんに会うのは二度目だ。

やっぱりあの場所に神様はいるんだろうなって思った。信仰してはいないけど。
だってさっき手を合わせている時、息遣いが聴こえた気がしたんだ。

広島は、昨日までの雨が嘘のように晴れている。
流れていく空を見た。子供の頃、助手席から見上げていた、あの空よりも明るかった。

2019.06.28    ちゃこ

今日の1曲/サンボマスター「ラブソング」

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コメント (16)
仏教徒で神さまは信仰していますが、
仏教の神様でも八百万の神と言って沢山いるから、その中で全ての神様を信仰しているかと言われると違いますね。キリスト教徒の方は一神教だからその神様と合わなかったら終わりだからきついですよね。
自分は神の存在を信じていますが、それは宇宙の「摂理」のことだと思っています。だから、ちゃこさんが語られていること、すごくよくわかります。
神様には会えないと思います。
何故ならちゃこさんが神様だから。
神様は探すのではなく思い出すこと。

いやー、僕もこないだ
そう気付きました。
亡くなった母の晩年ですが、実は母にとって一番大事だったのは自分の姉妹、そして父(私の祖父)だったことがわかった瞬間があります。子供も夫も、母にとっては2番目だった。そのことはどこかで気づいていたけど、子供としては目をつぶっていた現実でした。ただ、母は結構良い母親だった面もあって、いわゆる、子供を所有したがる毒親とは対極にあり、結構客観的に子供を見てくれる人でした。親としては理性的で、賢い母でした。それもこれも、私たちを一番に考えていなかったから、かもしれません。
 良き母であるために何が必要かは、一概に言えません。祖母と母の関係が、母と娘より絆が深くても、それが悪い母親の証明では無いはずです。子供の将来を案じて、氏神様に手を合わせたら、普通の高齢者です。神様が違っていただけです。
 たぶん長く生きると、自分も親とは共有できない自分自身を持つことになるので、だんだん親を客観視出来るようになり、そこに答えが見えるように思っています。
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