【小説】醜いあひるの子 14話
『じゃあ、学校でね』
匠馬は額にキスを残すとアパートを出た。
彼が出て行くのを見送ると、智風は準備を済ませ学校に向かう。
マフラーと手袋を着けて白い息を吐きながら自転車を漕ぐと、下ばかり向いていた自分がいつの間にか顔を上げて景色を楽しんでいた。
見えなかった物が見え、心を刺激する。
とても新鮮で、笑みが零れた。
ほんの少しの変化だが、自分とっては大きな変化に感じられる。
嬉しい。只、その一言だ。
しかし、顔を露わにして匠馬と人目を気にせず、話す事が出来る日が来るのだろうか。