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バンクスルーブレーキの寸法計算

ミニ四駆のミニテクニック!
今回は、バンクスルーできるブレーキの寸法を計算する方法を考えてみました。

フロントブレーキ寸法の計算

バンクスルーできるフロントブレーキの位置を計算するために導いた式はこちらです。

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図の赤色部分がブレーキです。
(求める数値)
 b : 車軸からフロントブレーキ後端までの距離[㎜]
(必要なデータ)
 R : バンクの半径[㎜](20°バンクは650㎜)
 r : タイヤ半径[㎜](※直径ではないので注意)
 ℓ : ホイールベース[㎜]
 h : ブレーキ最低部の高さ[㎜]

タイヤ軸からフロントブレーキ後端までの距離が、この計算式で求めたb未満であれば、ブレーキはバンクに当たりません。

バンクの半径は、3レーンで使われる20°バンクなら650㎜です(測定方法は記事の最後に貼ってあるnoteを参照)。
タイヤ半径とホイールベースはマシンごとに決まる数値なので、あとはブレーキ最低部の高さを決めれば、バンクスルーできるブレーキ位置が計算できます。

では、実際に計算してみます。
フロントブレーキの効きをしっかり確保するため、ブレーキ最低部の高さは、レギュレーション上の最低地上高ギリギリである1㎜とします。
バンク半径は650㎜です。
タイヤは直径24㎜で半径12㎜、ホイールベースはMSシャーシで80㎜として計算してみます。

エクセルや関数電卓を使えば一発で計算できますが、スマホの電卓でも地道にメモをとれば計算できます。

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計算の結果、地上高1㎜のブレーキは、車軸との距離14.1㎜までならバンクスルーできるとわかりました。

実際にセッティングしてみます。

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車軸からフロントブレーキまでの距離を14.1㎜にセット。
計算上は丁度バンクに当たる数値ですが、実際はブレーキの最低地上高を1㎜ちょうどではなく、少しだけ余裕のある1.2㎜程度にセットしているので、バンクに当たらないはずです。
マシンをバンクチェッカーに乗せると、

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計算どおり、ちゃんとバンクスルーできています。

ただし当然ながら、斜めブレーキでなければ、ブレーキ後端がバンクスルーできていても、ブレーキ前方部分がバンクで路面に当たってしまいます。
スロープ突入時にブレーキが面で路面に当たるくらいの角度がつけてあれば、バンク路面よりも角度が大きくなるので、バンクで当たる心配はありません。
斜めブレーキの作り方は、こちらをご覧ください。

フロントブレーキの考え方

そもそも、フロントブレーキはどんな位置がいいのか。
経験上、フロントブレーキが後方寄りであるほどジャンプ時の姿勢が低い傾向があるので、私はフロントブレーキをできるだけ後方に寄せます。
かと言って、ブレーキをそのまま後方に寄せるとブレーキの効きが落ちます。
ブレーキの効きを維持するためには、後方に寄せると同時に地上高を低くすればいいですが、レギュレーション上、ブレーキ最低部の地上高は1㎜までしか下げられません。

そこで、ブレーキ最低部の高さをレギュレーション上の最低地上高である1㎜とし、そのとき、バンクスルーできるギリギリまでブレーキを前方に出した位置を狙います。
ブレーキはできるだけ後方に寄せたいものの、これ以上ブレーキを後方に寄せると、ブレーキの効きが弱まります。なので、これがブレーキの効きを確保しつつブレーキを後方に寄せられる限界の位置と思われます。
そこで、ブレーキ最低部の高さを元に、車軸からフロントブレーキ後端までの距離が何㎜以内であればバンクスルーできるかを計算しました。

計算式は、円弧の性質と三平方の定理を使って導いています。
前輪と後輪の両方がバンク路面上に乗っている状態を考えると、前輪の路面への接地点は、マシンが平らな路面上にあるときよりも前に出ます。このため、計算式はやや複雑になっています。

リヤブレーキ高さの計算

続いてリヤブレーキです。

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図の赤色部分がブレーキです。
(求める数値)
 h : ブレーキ高さ[㎜]
(必要なデータ)
 b : 車軸からブレーキ後端までの距離[㎜]
 R : バンクの半径[㎜](20°バンクは650㎜)
 r : タイヤ半径[㎜](※直径ではないので注意)
 ℓ : ホイールベース[㎜]

ブレーキの高さが計算式で求めたhより大きければ、ブレーキはバンクに当たりません。

バンクの半径は一定で、タイヤ半径とホイールベースはマシンごとに決まる数値なので、あとは車軸からブレーキ後端までの距離だけ設定すれば、そのときのバンクスルーできる高さを計算できます。

実際に計算してみます。
バンク半径は650㎜、フロントブレーキのときと同様にタイヤ半径は12㎜、ホイールベースは80㎜とします。
車軸からブレーキ後端までの距離を測ります。

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私のマシンの場合は48㎜でした。
これらの数値を使ってチマチマ計算すると、

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高さが4.7㎜以上であればバンクスルーできるとわかりました。

では、実際にセッティングしてみます。

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リヤブレーキの高さは、4.7㎜に少し余裕を与えて5㎜としました。
バンクチェッカーに乗せると、

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計算どおり、ちゃんとスルーしています。

リヤブレーキ高さの考え方

私は、効きと安定性を確保するため、リヤブレーキはできるだけ後端に寄せています。なので、車軸からブレーキ後端までの距離を先に決め、これを元にバンクスルーできる高さを計算する方法を考えました。

フロントブレーキのときと同様、計算式は、円弧の性質と三平方の定理を使って導いています。
やはり、前輪と後輪の両方がバンク路面上に乗っている状態では、後輪の路面への接地点は、マシンが平らな路面上にあるときよりも後方に下がります。このため、計算式はやや複雑になっています。

リヤブレーキを面で当てる角度の計算

ブレーキ後端をバンクスルーできる高さにしたときの、面で当たるブレーキの角度を計算してみます。

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(求める数値)
 θ : 面で接する角度
(必要なデータ)
 r : タイヤ半径
 h : ブレーキ後端の高さ
 b : 車軸からブレーキ後端までの長さ

計算式に出てくるSin-1とかTan-1は、逆三角関数というもので、アークサイン、アークタンジェントと読みます。私は高校に行ってないのでわかりませんが、多分高校数学で習います。

では、実際に計算してみます。
エクセルや関数電卓を使えればその方が早いですが、なければiPhoneの電卓でも計算できます。
ここでは、iPhoneの電卓で計算してみます。
先程までの数値をそのまま使い、タイヤ半径は12㎜、ブレーキ後端の高さは5㎜、車軸からブレーキ後端までの距離は48㎜とします。アークサインやアークタンジェントの計算をするときは、まず、その中身(記号の右側の部分)を先に計算します。

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アークサインとアークタンジェントの中身が計算できたら、アークサイン、アークタンジェントそのものを計算します。
電卓アプリを開いて、画面を横にします。

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もし、左上にradと表示されていたら、左下のdegを押してください。 1回押すと、左上のradが消えます。

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(こうしておかないと、角度の単位が度ではなくラジアンになってしまいます。)
そして、一番左の列の、上から2番目にある2ndを押します。

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これで、下から2行目の左の方にまとまっている三角関数のキー(sin、cos、tan)に、-1の表示が出て、逆三角関数になります。
これで計算準備完了です。

では、計算します。

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ここまで計算していました。
アークサインとアークタンジェントは、別々に計算します。
まずは、アークサインから。
中身の0.247を入力します。

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次に、sin-1を押します。

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すると、アークサインの答えが出ます。
続いて、アークタンジェント。
中身の0.146を入力します。

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次に、tan-1を押します。

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すると、アークタンジェントの答えが出ます。
これで、最終的な答えまであと1歩です。

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ということで、ブレーキの角度が5.99°のとき、ブレーキが面で路面に当たるということがわかりました。

ブレーキ角度の考え方

ブレーキの角度が水平のままだと、スロープ突入時、リヤブレーキの最も後方の縁の部分だけが路面に当たることになります。
ブレーキは接地面積が少なすぎると効きが落ちるので、できれば、ブレーキ全体が面で接地するよう、ブレーキに角度を付けることが理想です。
そこで、スロープに差し掛かってマシンの前方部が持ち上がり、これに伴ってリヤブレーキが路面に当たった瞬間を考え、この時にブレーキ面が路面と一致するような角度を計算しています。
このとき、タイヤの路面への接地点は、マシンが平らな路面上にあるときに比べて後方に下がるため、計算式が少し複雑になります。

(ご注意)

今回は、私が導出した式から、実際の計算例までをご紹介しました。
当然ながら、この記事で導き出した数値は、私のマシンのタイヤ径、ホイールベース、ブレーキ位置等を用いて計算していますので、全てのマシンに使えるものではありません。自分のマシンの各部寸法の数値を用いて計算をお願いします。
また、式の導出を誤っている可能性もあります。
もし間違ってたらごめんなさい!
そのときは、よろしければコメントにてお知らせください。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

20°バンクの半径の測定


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