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非エンジニアのための明日からの技術広報のはじめかた -技術広報の目的を定義する -

TechブログやTechイベントの主催や登壇など、この数年技術広報に力を入れる企業が増えています。自社の技術面の強みや特徴、働くエンジニアの取り組みや事例を社内外に発信することで、自社の認知度・好感度を高めます。そして、ソフトウェア業界/インターネット業界にとってソーシャルグッドな取り組みを通して自社のプレゼンスを高めることを目的としています。

さらに、こうした技術広報の担うエンジニアのエバンジェリストたちの自社へのエンゲージメントを高めるだけでなく、学びの機会の拡大によってスキルアップやキャリアアップにもつながります。

こうした中で、非エンジニアである広報担当や採用担当がいきなり技術広報を担当する機会も増えているかと思います。私もそうです。エイチームに入社する2015年まではエンジニアと一緒に働いたことはありませんでした。非エンジニアでありながらも、試行錯誤を重ねながら手探りで技術広報に取り組んできました。

本稿は、技術広報業務に関わる方、これから関わる予定の非エンジニアに向けて、技術広報とは何か、どのような仕事なのか、具体的にどのようにはじめればいいのか、シリーズ化してお伝えしていきます。

<今後、公開を予定するシリーズリスト>
①技術広報の目的を定義する(本稿)
②技術広報の実践方法・コミュニケーション事例(7月上旬公開予定)
③エイチームの実践例を一部紹介(7月下旬公開予定)
④技術広報の失敗談・教訓(8月中公開予定)

技術広報とは何か

技術広報と言えばTechブログやTechイベントをイメージされる方がほとんどかと思います。もちろん手法として効果的な施策です。まずはその前に広報(PR)とは何かからおさらいしましょう。

パブリック・リレーションズ(Public Relations)
パブリック・リレーションズ(PR ※広義で広報)とは企業やブランドに関する世間の認知を高めるために行うこと。アメリカPR業界では「パブリックリレーションズとは、組織と組織をとりまくパブリックの間の、相互に利益のある関係を築く戦略的コミュニケーションのプロセスである。」と定義しています。

コミュニケーションは相手の存在があって成り立つもの。つまり一方的ではなく相互のコミュニケーションを意味しています。相互というのは「社会」と「自社」との関係性を指し、社会とは、お客様やユーザー、取引先企業、社員や社員の家族、株主・投資家、地域社会など、自社をとりまくあらゆる関係者(いわゆるステークホルダーと言う)のことです。

企業はステークホルダーとのコミュニケーションの中で、経営・事業に関する情報、その企業が目指すべき方向や考え・価値観などをあらゆるコミュニケーション手法で情報を伝えていきます。

技術広報はIT業界に携わるすべての人たちとのコミュニケーション
パブリックリレーションズの観点を技術広報に置き換えてみます。IT業界/ソフトウェア業界に携わる企業・エンジニア、またそれらを支援するあらゆる団体・組織に対し、企業の技術に関する考えや価値観、取り組みを、様々なコミュニケーション手法を通じて伝えていくこと。

Developer Relations(DeveRel)
エンジニア向けのコミュニケーション活動を強化しているIT企業では、すでに、DeveRel(Developer Relations)という活動が盛んです。

DevRelとは外部の開発者との相互コミュニケーションを通じて、自社や自社製品と開発者との継続的かつ良好な関係性を築くためのマーケティング手法のことです。大規模なTechイベントを主催している企業はだいたいDeveRel活動が活発なイメージです。

技術広報におけるコミュニケーションとは
そして、そのコミュニケーション手法の1つとして、TechブログやTechイベントが挙げられるかと思います。その他にも、企業が技術カンファレンス・イベントを協賛・支援したり、定期的な技術イベントの主催によって技術コミュニティに貢献したり、OSS活動も技術広報に非常に有効だと思っています。個人活動として、Qiitaや個人ブログで技術の取り組みを発信し、エバンジェリストの役割を担うエンジニア社員の活動も技術広報です。具体的な技術広報におけるコミュニケーション手法は次の記事で詳細をご紹介します。

技術広報の目的

技術広報の目的は企業によって様々です。そのため、技術広報の目的、誰に、何を伝え、どのように感じてもらいたいか(心理変容・態度変容)は、自社で定義すると、技術広報の役割がより明確になるでしょう。

ベンチャー企業やスタートアップ企業では、自社が開発したシステムやプロダクトの認知度を高め、技術力の高さをアピールすることによって、より投資家からの応援や支援を得られやすくなるかもしれません。

エンジニアの人材獲得が難しくなる中、エンジニアへの採用広報を目的に、自社の技術に関する取り組みや事例、エンジニアの考えや価値観を伝えることによって、共感を得た方々が自社に興味を持ち、応募・採用につながるかもしれません。応募を獲得することにつながるかもしれません。

エンジニア比率が高い企業であれば、エンジニアのエンゲージメント向上を目的に、OSS活動の推奨やTechイベント/勉強会への参加支援をすることで、ますますパフォーマンスが向上するかもしれません。

技術広報を通して、その企業やエンジニアコミュニティにどのような関係性構築をしていきたいのか。それを第一にコミュニケーション戦略を設計すると良いと思います。

まずは「エンジニア」を理解する

まずは、エンジニア技術を理解しましょう。エンジニアの採用や技術広報をはじめたころ、私はこの本質的な理解にとても苦労しました。

本質的な理解とは、エンジニアが使う技術用語を理解できるとかだけではなく、そのエンジニアが最も大切にする価値観や思考を理解すること。そして、技術用語は概念をしっかり理解すること(私はまだこれからです…)

サーバ、ネットワーク、Webアプリケーション、ソフトウェア…「一つひとつの用語を、自分の言葉で小学生でもわかるように伝えられること」、これが概念的に理解したと言える状態だと思います。

敬愛する池上彰先生が仰ってました。
普段何気なく使っている「日本銀行」とは何かを、専門用語を使わずに子供に伝えることはできますか?「株」「為替」なども伝えられますか?と。

私たちが何気に使っている経済用語も正しく理解して伝えることは難しい。非エンジニアである私たちが、技術用語の概念的に本当に理解することはとても大変です。ましては、目に見えた「もの」でもないし、私たちは触ったこともない。

ですが、ある程度の知識を身につけないと共通言語も得られないですし、一緒に仕事をする上で良いコミュニケーションが図れません。そのため、時間をかけてでもしっかり理解することが大切だと思います。

ちなみに、エイチームでは、技術の理解やモノづくりの楽しさを知ってもらうため、新卒研修では、非エンジニアであってもプログラミング研修があります。

私がおすすめする書籍とnoteをご紹介します。また普段からエンジニアとのコミュニケーションを大切にすることで、少しずつ理解を深めていけると思います(私もまだまだこれからですが)

文系でも知っておきたいプログラミングとプログラマーのこと
非常に良書です。私がエンジニアたちとのコミュニケーションに悩んだ時に藁にもすがる思いで読んだのがこの本です。エンジニアの性格的な特徴、思考回路、どのように物事を考えプロダクト設計をしているのか。そして理解すべき技術的な専門用語の解説などもわかりやすく紹介してくれています。

ころちゃん @corocn のエンジニア採用勉強会資料
bosyu社でエンジニア採用に意欲的なエンジニアのころちゃんが公開している「エンジニア採用をする上での基礎知識」の勉強会のスライドです。非常にわかりやすい。ころちゃん、いつも勉強させていただいています。ありがとう。

実はエンジニアってめっちゃかわいい

エンジニアたちと働くようになって早5年。最初は苦労したコミュニケーションも、完ぺきとは言えませんが、良い関係性を築くことができていると思っています。

お互い歩み寄れたことは本当に良かったと思います。私は彼らの事が知りたいし、理解したい。彼らは、自分たちを理解してもらいたくて、難解な言葉も共通言語化して丁寧に説明してくれる。

プロダクトへの愛情だったり、ものづくりが楽しくて仕方がない様子、本当に良いものがつくりたくて妥協せず驚くほどの努力をし続ける姿勢など、接するたび尊敬します。

私か彼らのそうした姿や考え、価値観を世の中にもっと広めたいし、世の中からも認められたい。私が技術広報に力を入れる理由はそこにあります。

エイチームの広報担当として、企業イメージの向上を目指しあらゆるコミュニケーション活動は責務ではあります。そして同時に、エンジニアたちの活動(もちろんそれ以外の職種や社員もそうだけど)をもっともっと、世に広めていけたらと考えています。

もし、エイチームのエンジニアへ登壇やインタビュー等のご依頼がありましたら、ぜひご連絡ください。

twitter:https://twitter.com/aggressiveushi(DM開放しています)

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