工事現場

話題の入国管理法改正!外国人実習生制度、他国のケースから学ぶべきこと

以前、こちらのブログでも取り上げた入国管理法改正案について、国会が大紛糾しています。中には、人権が全く無視されているような問題のあるケースも紹介されています…。

海外メディアでもこのトピックは取り上げられている中、今回は海外での実習生、またはそれに準ずる制度を取り入れている国をいくつかピックアップしてご紹介し、今後私たちがどのように参考すればよいか、それらを踏まえてご紹介します。

 ・韓国のケース:日本を手本に始めたが、今はより改善した環境へ

 韓国では、経済の発展はあったものの、1980年代までは労働力を送り出す実習生側の立場で出国することが多かったそうです。その後の大きな経済成長とともに労働力不足が深刻化。海外からの人材を確保するため、1993年に日本を手本にした「産業研修制度」を設立。

 しかし、同制度がスタートしたころからルールと実情がかけ離れている矛盾が指摘されており、単純労働のみ、なおかつあくまで「研修生」の立場のため、労働者として守られているわけではありませんでした。そのため、韓国内での社会的立場は非常に弱いものであり、働くか逃げるかしか道がなかったのです。

10年の後、韓国政府もこの事態を重く受け止め、2004年に、外国人労働者を正式に労働者として認める「雇用許可制」を制定。2007年には上記「産業研修制度」は廃止となりました。

「雇用許可制」は大まかに分けて外国人労働者の労働許可を認める「一般雇用許可制」と韓国をルーツに持つ外国人向けの「特例雇用許可制」の2種類がありますが、

一般労働許可制は以下4原則に基づいて運営されています。

 1.雇用機会差別禁止の法則:外国人労働者というだけで、雇用の機会を奪ってはならない

 2.韓国人優先雇用の原則:募集する際は、まず韓国人向けに求人を出してから

 3.定住化禁止の原則:一定の基準を満たせば延長できるが、基本的に期限を過ぎた場合は帰国しなければならない

 4.外国人受け入れプロセスの明確化:不当な業者(ブローカー)介入阻止

 このように、韓国ではすでに研修生としての外国人は事実上存在せず、みな労働者としての権利を得ていますが、不法就労やオーバーステイなどまだ実態としては問題があるようです。

・ドイツのケース:数十年にわたる移民コミュニティの形成、社会的な断絶

 現在1200万人以上の移民を受け入れているといわれている、ドイツでの実習生制度の歴史は古く、1950年代の「ガストアルバイター」制度まで遡ります。「ガスト」とは日本語に訳すと「客」。すなわちあくまで一時的な労働者としての存在として、長く西ドイツの建築現場や製造業を支えました。

大きな問題にはならなかったものの、彼らにはドイツ語の研修などもなく、ただただ毎日働いてもらうのみという存在でした。そのような自国民としての受け入れ、統合を全く行わなかったことが社会の分断を呼び始めました。そして、彼らは帰国せず、むしろ自国から家族を呼び寄せて住み着いてしまい、一部地域がコミュニティと化し、ドイツ社会から断絶されてしまいました。

 2000年代半ばに、ようやく移民法が改正され、移民に対してドイツ語教育が義務付けられるようになりましたが、上記のようにすでにコミュニティが完成されている地域に住んでしまえばドイツ語は不要。積極的に受けようとする移民者は多くはありませんでした。

 今現在も、数十年前の社会的な受け入れを行わなかった傷跡は残っています。

他国の歴史から見えるもの

 韓国もドイツも、タイミングの違いこそあれど、日本と同様に戦後大きな発展を遂げ、その結果労働力が不足し、海外から労働力を求めるというプロセスはほぼ同じ流れであると言えるでしょう。

 しかし、両国ともすでに実習生制度は廃止しており、それも外国からの労働希望者を積極的に社会に受け入れようとしなかったことが原因であることも同じです。

 もちろんそれぞれの国ごとに歴史的背景・文化があり、考え方や価値観の違いもありますので一概には言えませんが、このプロセスだけは同じなのではないでしょうか。各国のグローバル化が進んでいる現在、単一的な労働者としてただ「国にいてもらう」だけでは、全く同じ結果になってしまうのではないでしょうか。現に、メディアを通じて日本での過酷な労働環境をベトナム・ミャンマー・中国人の経験者が訴えています。

 では今後、何が大切なのでしょうか?繰り返しですが、それは決して外国人だからと阻害せず、1人の人間として、労働者として認める職場環境を整えることなのではないでしょうか。

 日本語教育、適切な賃金、労働環境などを差別せず提供する。そのための組織づくりを行っていくことが当たり前ですが大前提として、国・社会・会社として整えなければ同じ問題が起き、より深刻になるでしょう。

今後、外国人労働者は間違いなく日本にとってよりなくてはならないものになることは間違いありません。エボラブルアジアエージェントは皆様と一緒に、海外からの優秀な人材の適切な採用、長期的な人材戦略を考える上でのご相談に喜んで乗らせていただ来ます。ぜひお気軽にご相談ください。

参考資料:

・韓国は外国人に門戸を開いた「労働政策」https://webronza.asahi.com/politics/articles/2018070300006.html

・ドイツ版「技能実習生」ガストアルバイター制度の重い教訓https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/04/post-9981.php

・50年後のガストアルバイター https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2014_12/germany_01.html


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