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広報人講座 生活者はどう情報を選ぶのか? 四つの情報源/生活者に対するコミュニケーション

こんにちは。荒木洋二です。

今回が「生活者は情報をどう選ぶのか?」の最終回です。最後までしっかり学んでいきましょう。

前回は、メディア環境研究所の「メディア定点調査2018」の調査結果から、生活者がどのように情報と向き合っているのか、ということについて解説しました。今回も『メディアガイド 2018』に掲載されている、同結果を分析した情報を紹介します。前回説明した四つの情報源を詳しく見た後に、生活者に対するコミュニケーションはどうあるべきか、ということについて触れていきます。

■四つの情報源

繰り返しになりますが、生活者の情報に対する向き合い方は三つありました。
1.自分なりの確かさで雑音は排除する
2.確かさを確保するための四つの情報源を持つ
3.四つの情報源を自分なりに組み合わせて、情報を選ぶ
ということが明らかになりました。

今回は2番目に挙げた、「確かさを確保するための四つの情報源」を一つ一つ詳しく見ていきます。

ここでもう一度、四つ情報源を示します。
1、公からの発表
2、みんなの意見
3、当事者の見解
4、専門家の知識
です。

1、公からの発表
正式な取材に基づいたテレビや新聞などのメディアで発表されるニュース、記事です。国や官公庁が発表する情報もそうです。そして、企業の公式ホームページに掲載される情報です。経済広報センターの調査結果とも一致します。

2、みんなの意見
SNSで発信・共有される情報、あるいは実際の口コミの情報です。さまざまな商品などのレビューサイトやブログ情報などが、みんなの意見です。

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3、当事者の見解
実際に体験した人の情報です。本人の口から発せられる本音です。つまり、「舞台裏」の情報ということです。体験というのは、その会社で働いたのか、商品を買ったのか、取引したのか、株主として投資したのか、ということです。生活者として、組織人としての当事者の見解も重要な情報源です。

4、専門家の知識
専門性の高い詳細な情報です。専門家の深い知識に基づいた判断、あるいはそういう専門知識の詰まったメディアの記事などを指します。

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生活者はこれら四つを組み合わせて、確かさを判断するということです。

■生活者に対するコミュニケーション

さらにこれらの結果から、生活者の二つの欲求が明らかなりました。四つの情報源を4象限に分けたうえで、二つの欲求をこれから解説します。欲求が明らかになることで、生活者に対するコミュニケーション、つまり生活者にどういう情報を提供すればいいのか、が見えてきます。企業・組織として、どういう情報を発信すべきかを見ていきましょう。

この図解(下図)は『メディアガイド 2018』に掲載されています。関心のある人は、ぜひ同書を購入してみてはいかがでしょうか。

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まず、一つは「俯瞰で広く見たい」という欲求です。もう一つは「詳細に深く知りたい」という欲求です。四つの情報源を、4象限に分けて考えます。欲求を横軸とし、縦軸で客観と主観に分けます。

・欲求①俯瞰で広く見たい
「俯瞰で広く見たい」という欲求から、国や企業などの最新かつ正式な発表などの情報を選ぶわけです。これは客観的な情報として、確かさを確保できます。同じ「俯瞰で広く見たい」という欲求で、より主観的な情報として選ぶのが、2番目の「みんなの意見」です。「世間一般の平均的な考えとは何か」を知ることで確かさを確保でき、その欲求は満たされます。

・欲求②詳細を深く知りたい
続いて、2番目は「詳細を深く知りたい」という欲求です。その客観軸に当たるのが、4番目の「専門家の知識」です。「詳細を深く知りたい」という欲求から求める情報は、専門性の高い知識と専門家が下す判断です。同じ「詳細を深く知りたい」という欲求の、より主観的な情報として挙げられるのが「当事者の見解」です。実際の体験談や本音を知ることで欲求は満たされるし、確かさを確保できます。二つの欲求を横軸に、そして縦軸に客観と主観を分けていくと、ちょうど四つの情報源がこのように分類されるわけです。

四つの情報源から生活者の欲求が明らかになりましたので、ここから生活者の欲求に対するアプローチ方法が見えてきます。アプローチ方法の肝は何か。要は生活者への「見える化」です。生活者に包み隠さず見せる、ということです。

・群れで見せる
まず、1番目の「俯瞰で広く見たい」という生活者の欲求に対しては、「群で見せる」というアプローチをします。ライブ・イベントなどのフェスの活況はその欲求ゆえの現象です。音楽などで楽しむ空間を共有することで欲求が満たされます。現在は、コロナ禍にあってなかなか開催されませんが、調査を実施した2017年当時は活況を呈していました。テレビ番組で流行したダンスを個人で楽しむという現象はここ数年続いています。個人やグループでダンスを踊り、その様子をスマホで撮影した動画を共有します。このような現象から分かることは「俯瞰で広く見たい」と思う生活者に対しては、「群で見せる」というアプローチが有効である、ということです。

2番目の「詳細に深く知りたい」という欲求に対してはどうアプローチすればいいのか。これは「常にさらす」ということです。例えば、商品の開発過程を見せるということです。つまり、これは「舞台裏」の情報ですね。会社の覚悟や開発者の自信や思いを伝えるのです。クラウドファンディングで開発資金を募る場合、資金を集める過程を公開しています。まさしく「舞台裏」の姿をさらしています。クラウドファンディングの場合、SNSも同時に開設し、応援し資金を提供してくれる賛同者たちのメッセージが投稿されることで、ポジティブな空間を醸成していくことができます。そこに共感が生まれます。

ここまで確認してきたように生活者の二つの欲求に対しては、「群で見せる」というアプローチと「常にさらす」というアプローチが重要です。いずれも生活者への「見える化」が重要なポイントです。「群で見せる」アプローチは主に「表舞台」の情報です。「常にさらす」アプローチは、まさしく「舞台裏」の情報である、ということが明らかになりました。

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最後に今回の講座をまとめて振り返ります。
・生活者は四つの情報源から自分なりの確かさを求めている。
・生活者には、二つの欲求がある。
①「俯瞰で広くみたい」欲求
②「詳細に深く知りたい」欲求
・生活者への「見える化=包み隠さず見せる」ことが重要だ。
・生活者の欲求に対するアプローチは、 ①群れで見せていく②常にさらす
・「表舞台」と「舞台裏」の情報を伝える。
(そうすることで、生活者から選ばれます。)


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