きのこカレーでケンカ勃発

私は中・高・大とバレーボール部に所属していたのだが、高校のときの砂川での3泊4日の合宿は今でも鮮明に思い出される。

合宿では、出された食事は残してはいけないという暗黙のルールがある。私も普段から食べ物は残さない人なのだが、尋常じゃない量を食べきるのは合宿中の一つの試練であり、何よりも苦痛なのは食事の時間だった。それでもなんとか毎回完食し、お腹いっぱいの状態でランニングをはじめ毎回脇腹を抑えながら走っていた。

合宿3日目の午前、私は練習試合中に足首の靭帯を損傷してしまった。練習試合がストップし、他校の子が瞬時に雪を詰め込んだバケツを持ってきてアイシングをしてくれた。そう、これが北海道のやり方だ。冬場は氷水ではなく雪で怪我をした部位を冷やすのだ。これがまたものすごく冷たい。

その後すぐに昼食の時間となり、チームメイトに心配されながら私は食堂に向かったのだが、この日のメニューは “きのこカレー” 。それもいつもに増して量が多かった。前日に怪我をしないように気をつけろと言われていたのにも関わらず怪我をしてしまった悔しさと、通常の3倍くらいある量のきのこカレーを見て、私は自然と涙がポロポロ溢れてしまった。しかし自分で言うのもなんだが私は真面目である。とにかく全部食べなければ、という気持ちだけできのこカレーを水でグビグビと流し込み、雪に突っ込んだ左足の痛みに耐え、涙と鼻水を垂れ流しながらも完食した。

一方で、もしかしたらチームメイトもストレスが溜まっていたのかもしれない。合宿も3日目で、自分たちより強いチームばかりで練習試合も負け続けている中、毎回出される大量の食事。「こんなに食えるかよ」という叫びが皆から聞こえてきそうな雰囲気だった。そんな中、きのこが大の苦手な同期が、もう一人の同期のカレーに自分のきのこを何食わぬ顔で移し入れていたのだった。

「ちょっとあんた!何勝手にきのこ入れてんのさ!」

普段温和な同期が怒り出し、ケンカが始まった。普段ケンカなんてしない、バレーボール部員にしてはかなり穏やかな人たちだったので、監督も驚いていた。きっと、目の前の大量のきのこカレーに追い詰められて皆必死だったのだろう。

というわけで、合宿の1番の思い出はきのこカレーだ。最終日に大滝村(調べたら現在は大滝区になっていた)の “きのこ王国” という観光スポットに寄って帰ったのだが、きのこ嫌いの同期は全く興味を示さなかった。

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