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問題はそれが起きたのと、同じレベルで解決することはない

27歳独身。彼女なし。そこそこの大学を出て、つぶしの効かない仕事をしている僕が、紳士から教わったのは、まったく聞いたこともない新しい成功法則だった――。「学び方を学べ」「才能は幻想。すべては技術だ」「必要なことはすべて調達できる」「日本を解散せよ」……、5年前に刊行され「今こそ読むべき!」と話題の書籍を特別に無料で公開。事業家・思想家の山口揚平さんが、新しい時代の新しい成功ルールを紹介します。


問題はそれが起きたのと、同じレベルで解決することはない


「あなたと話をしていると驚かされるばかりです」

「そうかい?」

「今までなにげに見ていたニュースや出来事を、多角的に捉えて、深く考察していて……」

「私は、ただたくさんのものを見て、体験してきただけだ。その中で、人生で最も大事なことは、“意識の焦点”だと信じている。私は、いつも異なった次元からモノを見ることを心がけている

「意識の焦点……」

「意識の焦点を、3次元、つまり時間や空間、お金(数字)に置くのなら、君はお金という次元を超えることができない。つまり、パラダイムを変えることはきっとできない。結果、問題は解決しない。アインシュタインの名文句にこんな言葉がある『問題はそれが起きたのと、同じレベルで解決することはない』。問題解決は、一次元上での調和によってしか解決できないんだ。だから君は、いずれ3次元(時空間・金)から、意識の焦点をずらさなければならなくなるだろう。それだけは覚えておく必要がある」

「わかったような……わからないような……」

「ははは。いずれわかるようになる」

「じゃあ、もう1つ質問を」

「どうぞ」

「あなたの言葉には時折、宗教的とも聞こえる話が出てきますよね。目には見えないものをなぜそんなに確信を持って話されるのでしょうか?」

「君は、宗教(哲学)の話に抵抗があるかな?」

「宗教の自由は尊重します。差別もありません。ただ、自分の中ではリアルではないですね」

「まず私は、熱心な宗教家ではない。自分の体験・直観と、アカデミズムの成果である知識と、宗教が担ってきた知恵の蓄積から話をしている」

「はい」

「君達は、自分が存在していると思っているが本当は存在していない、ただ漂っているだけだ、と言われたら、どう思うかね?」

「僕はちゃんとここにいます!と思いますが……」

「だね。君達は3次元に住んでいることを疑っていない。つまり時間と空間をいつも意識している。そしてお金はこの時空間を自由に飛び回るための道具だと定義している。そしてそれは本当に実在し、誰にとっても変わらないと思っている」

「はい。疑いません」

「でも時間も空間も脳による錯覚にすぎないのではないかな?」

「錯覚ですか……」

「ヤカンの上に手を当てたら?」

「熱いです」

「熱い!と感じるだろう。そして、その時間は途轍とてつもなく長く感じる。しかし、好きな子とデートしている時には、時間は恐ろしく短く感じる」

「ありますね」

「つまり時間は、意識の焦点の当て方によって変わる相対的なものにすぎない。それは現実ではない」

「なるほど」

「特に女性は年齢を意識し、男性は、空間を意識しがちだ」

「女性が年齢というのは、やはり美しさとかに関係してくるのですかね」

「それ一択ではないがね。女性にとって年齢はとても重要だ。エイジングストラテジー、つまりどのように歳をとるかは女性にとって最も重要な話題になったりする。でも本当に若く美しい女性は、年齢(時間)に意識の焦点を合わせていなかったりするものなんだよ」

「確かに、バケモノみたいな人いますね……」

「そういう意味でなく、年齢と関係なく美しい女性は多い。聞こえは悪いが、時間を超越している存在というのは、えてして女性のほうが多いと私は思うね」

「男性の空間認識能力は、地図を読めたりするという、あれですか?」

「そうだね。車の運転も得意だ。また、追いかける夢も違う。私のように、電気自動車の開発や宇宙開発ビジネスに精を出すなんて、多くの女性にとってはバカバカしく感じられるだろうね」

「素敵な夢じゃないですか」

「だろう? 男性にとっては空間の果てを目指すことが、唯一、この3次元を克服する方法だと思っているからじゃないかな。多くの宇宙ドラマは、ヒーローが宇宙の果てを目指し、ヒロインは、地球にとどまりながらも愛を知っている、そんなプロットになっているのもそのせいだと思う」

 3次元の克服……という言葉を聞き、僕の頭に“タイムマシン”が浮かんだ。時間を行き来するSF映画。その映画に魅入り、いつか自分もあの“タイムマシン”を発明したい!という夢を持った少年時代を思い出した。

「何かね?」

 紳士は、僕に尋ねた。

「あ、いえ。少し子どもの頃持っていた“夢”を思い出して」

「ほぉ、どんな夢だね」

「いえ、子どもの頃ですから、言ったら笑われますよ」

「まあ、無理には聞かないよ。ただ、純粋な子どもの頃の夢を甘く見てはいけないよ」

 紳士はなぜか、嬉しそうに見えた。

本質的なことへ意識を向けることが、コンピューターと戦わない方法である


「そういえば、SFではよく、人類とコンピューターが戦う物語が描かれるね」

「定番ですね!」

「今はまたAI(人工知能)のブームが来ているだろう。ビッグデータやらIOTやらドローンやら、ロボット。つまり機械の隆盛だ」

「それはひしひしと感じます」

いわゆるシンギュラリティ問題という」

「何ですか。それ……」

「機械が人間を上回るという世界観だ。そこで人間はどうするのか?ということが問題になっている」

「まさか、人類VS機械が起こり得ると!?」

「ないこともない……。でもそれを回避する答えは簡単さ」

「え? それは、どんな手ですか?」

「機械と戦うのをやめるのさ」

「はぁ……」

 それは当たり前なのではないかと思うのだが……。

「コンピューターと人間とでチェスを競うなんてことをやっているね」

「将棋もやっていますね」

「私は否定的だ。そんな平面的(2次元的)なことは、コンピューターが最適化するに決まっている。3次元、たとえばエネルギーや交通、医療の問題だってコンピューターが勝手に最適化してくれる」

「じゃあ人類が、コンピューターに勝てるものはないと?」

「いや。コンピューターは次元を超えることができない」

「また、次元ですか……」

「コンピューターの本質は数字の処理だ。コンピューターが次元を超えてくることはできないだろう」

「でも人類も今はまだ次元を超えられないですよ……」

「そうかな? 先ほどの例でいえば、コンピューターに生物は作れても、生命は作れない。一方で、我々人間は、意識の焦点を、より本質に当てることで次元を変えることができる。それこそが問題解決の要だよ。その究極の時点が愛であり、無である」

「愛?」

「愛とは何か? それは遍在であり全体であり一体だということさ。文系では愛だけど、理系用語でいえば、最終次元ということになる」

「愛は次元を超えるんですか……」

「詩的だろう。我々は機械と戦わない。ただ意識の焦点をずらすことによって、コンピューターの到達できない次元にスライドするだけだ。あとのことは全部、機械に任せればいい」

「なるほど」

「最後に、君は悟るだろう。他人とは自分の一部を映し出したフィードバックをくれる鏡の存在だということをね」

「鏡……」

「そして、時間も空間も存在しないということ。他人など存在しないこと。そして最後に自分さえも存在しないことを」

 紳士がポツリと言った言葉は僕には理解ができなかった。でも、大事なことのような気がして、記憶しておこうと思った。

 彼は立ち上がった。

「さて、コーヒーも飲んでしまったし。今日はここまでにしよう」

「ありがとうございます!」

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