思考論_第一章_のコピー

3-1|アフターオリンピックの世界【1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法】

ここまで、「考える」ということについて論じてきた。
 本章では具体的なテーマに焦点を当てて、その変化の本質を考えてみたい。テーマとするのは、読者の生活やキャリアに直接関わる2020年以降の社会・お金・仕事・個人の意識変化の本質である。

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たくさんの方に手に取っていただいた「1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法」(プレジデント社)。大反響を記念して、8/14限定で全文を公開します! 令和時代の生き方・働き方をぎゅっと凝縮した一冊です。

2020年以降の世界

  私はこの国は、2020年の東京オリンピックを境として大きく変化すると考えている。オリンピックまでは1960年代から作り上げてきた旧社会システム・既存産業をなんとか温存しようとするだろう。だがオリンピック後の2022年から2023年にかけてそれも崩れていく。新旧体制(社会システムと産業)の交代が起こるのはちょうど大阪万博の開催される2025年以降だと推察する(図23)。

 当然この4つのテーマは複雑に絡み合っている。社会と個人は常に対立的な概念であるし、個人は仕事を通してお金を得る関係にある。お金は社会の共通言語であり、個人が生きてゆくための最低限の原資である。

2020年以降の日本はこうなる

 では今後の日本はどのように変化するのか、先にそのあらすじを書いておこう。
 まず、社会に個人の人生を当てはめてきた時代が終わりを迎える。日本という単一社会は溶解し、いくつかのコミュニティに分化する。人々は自分が快適に過ごせるコミュニティに所属し、そこに溶け込んでいくだろう。一人が複数のコミュニティを掛け持ちすることが当たり前になる。それぞれがまるで複数の人格を持ったかのように各共同体の中に溶けていくのだ(図24)。

 そして個人は社会という存在に対し、冷たい眼差しを向けるようになるだろう。社会との付き合いは最低限の及第点さえ取れば十分だと考えるようになる。
 コミュニティは基本的にヨコ社会である。そこでの言語は従来のお金ではなく価値観や信用・貢献・品位である。お金はタテ社会における言語として残るが、ヨコ社会(コミュニティ)の中では通用しない。お金は主に価値観やスタイルの異なるコミュニティとコミュニティの間の言語として使われることになる。そしてコミュニティは進化し、やがて独自の法律やルールを持つようになるだろう。
 一方で、個人と仕事は結合する。仕事とは、個人の天才性を周りの環境へはめ込む作業となる。仕事の定義は労働からコミュニティへの「貢献」へと変わる。相手の感情を知覚する力が尊ばれる。

 仕事とその時間は、価値や貢献と比例しなくなる。誰に対して何をどのように提供するかが合致してさえいれば、短時間でも大いに貢献となる。さらに言えば、何もしなくても、存在するだけで貢献している人もいる。

 人々が自らの所属するコミュニティに対して、仕事を通して貢献することによって、コミュニティは「共同体」から「経済体」へと進化し、外部に対しても価値創造(貢献)をするようになってますます発展する。コミュニティがお金を稼ぎ、新興のコミュニティが新しい独自通貨を発行するだろう。

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