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時は進む、お前は美しい


引っ越してからというもの、就職活動中であるが、、

たくさんの絵が飾ってある施設が2つ。一方は見慣れぬ画風の大きな絵があって、一瞬で目を奪われた。理事長の息子さんが有名な画家で、その作品なのだそうだ。もう一方には、シャガールがあった。かつてはピカソも所有していたという。飾る絵を定期的に変えるための職員までがいるそうで、「まるでGoogleじゃないですか」と思った(というか口にしてしまった)。

どちらの施設の説明も頭には大して入っておらず、絵の印象ばかりが残っている。


さて、note の企画に従って順調に読書の秋を楽しんでいる。『読みたいことを、書けばいい。人生が変わるシンプルな文章術』以外は書籍を購入しては読んで感想文を書いているのだが、これが見事に繋がっていくのだ。


『蜜蜂と遠雷』ーー音で世界を観る人たちの話

『目の見えない人は世界をどう見ているのか』ーー視覚以外の感覚で世界を観る人たちの話(しかも著者は美学の研究者)

『宇宙に行くことは地球を知ること』ーー光・重力が絶たれる特殊な環境で世界を観る人の話

『ピン』ーー自分の感覚とそれを発信する話


キーワードはどれも " 感覚 ” だ。それも直感的な感覚とか、これまでのものの捉え方とは別の捉え方の話だ。” 美 ” もキーワードだ。


そこにこの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』が加わった。この本は凄い。

要は、論理的思考だけでは限界があるという話で、直感の重要性を説いている。


ところで『ピン』の感想文のところで、原田先生が神田橋先生の自閉療法について述べていたという話をした。その中で、「からだ」の感覚を感じることが大事である、ということに触れた。

この本では脳神経学者のアントニオ・ダマシオのソマティック・マーカー仮説というものが取り上げられ、同じようなことが説明されていた。意思決定には情動が必要だ、というのだ。

たしかにSFで論理的な異星人が描かれることがあるが、本当に感情がなければ正しいことを「しよう」とさえ思わない。それどころか「1+1は?」と聞かれても、答え「よう」ともしないはずだ。納得の行く話である。

プロコンリストを作っても、人間は会計士のように自分の損得を計算はできない。あれは正しい選択の動機づけには役立たないことが知られている。結局直感的なものがかなり大事なのだ。



私が一瞬で気に入ってしまった『論理的思考の放棄』の話にも通じる。論理的に考えるようにはできていない人間が論理を実装するというのは、BASICインタープリターで作ったプログラムのように遅くなる。無理があるのだ。


また、『ピン』の感想文で、比喩の重要性についても触れたが、本書でもメタファーの重要性が説かれていた。


他にも、理詰めで考え込むから自分はいつまでたっても大局観が身につかず将棋がうまくならないんだな、とか、直感で決めてから修正するベイズ統計みたいな発想が大事、とか、マズローの欲求5段階説は実証されていなくても直感的に正しいものは正しいとか、とにかく納得の行く話ばかりである。

Googleのような成功している企業が、直感的な判断、美的なものを大事にしているということがよくわかった。

真の教養とはこういう風に役立てられるのだと唸らされてしまった。



さて就職である。この際どちらの施設にどんな業務があって、給料がどれだけとかいったことはもうほっておいて、どっちの絵を気に入ったかだけで勤め先を決めてみようかな。





#読書の秋2020

#世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか


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