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学習理論備忘録(11) 電気仕掛けのオレンジ

帰属の話は続く。


(E)プレゼンがうまくいった のを (A)準備した から、ということと (B)人という字を手に書いてなめた から、というのと、2つの帰属をさせている人を考える。つまり、第1段階で

(A)と(B)→ (E) (プレゼンがうまくいったという効果)

を得ている。それからその人に、成功するには準備だけで十分であり

(A)→(E)

したがって、手をなめる迷信行動(B)は余計なものだということをわからせようとする。その人は、(A)→(E)という情報だけに基づいて、(B)は原因でないという説を受け入れる、というのが前回述べた逆行阻止と呼ばれるものだ。

これは人の因果学習の研究でたしかめられている(Chapman,1991;Shanks,1985等)が、動物では確認されなかった(Miller, Hallam & Grahame, 1990; Schweitzer & Green, 1982)。動物と人間では違いがあるのか?

だが行動分析では、根本的なところで人と動物が違うことはあまりない。

人と動物が違うのではなく、人と動物では同じ条件の実験をしたとは言えなかったということである。

人間の実験ではパソコンを使って学習を研究する。起こる出来事は画面の上のことだ。だが動物の実験ではたいてい、電気ショックが用いられてきた。

これを人間で同じ条件にすると、トラウマの研究になってしまう。光と音の刺激が同時にあった後、電気ショックを与えられた場合、そのとき聞いた光も音にも怯えるようになるだろう。「電気ショックとセットであるのは光だけであって、音は関係ないよ」と言われても、音が鳴れば「あのときのあの音だ!」と、恐怖が蘇る。「トラウマになる」などと言われるあれだ。

動物実験から結論を下す際、この手のミスはよくある。言葉が使えぬ動物から反応を得るために、電気ショックを与える、おぼれさせる、檻の中で麻薬漬けにする、といったことを研究者はしてきた。そこからなにか人間にも応用できる結論を得るとすればそれは、拷問で人はどうなるかといった極端な状況のそれでしかないだろう。


とにかくここで明らかになったのは、原因ー結果の関係が、その個体の頭の中で強く結びついていると、阻止をすることができないということである。


PTSDの治療に応用できる知見である。このあたりはまだまだ探る余地があり、治療のための応用の可能性が開けているように思われる。


Ver 1.0 2020/8/28



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