丸井とイオンから見る小売×クレジットカード発行事業
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丸井とイオンから見る小売×クレジットカード発行事業

よっしー

こんにちは!
豆を挽いて飲むコーヒーにハマってるよっしーです。

今回は丸井グループとイオンについて、クレジットカード発行事業(イシュア)という側面から分析をしてみました。
小売事業とイシュアの両方を手掛ける点では共通しているものの、施策と戦略の違いが顕著に表れる面白い分析になりました。

3-2. ではクイズを用意しているので是非挑戦してみてくださいね!


1. 丸井の基礎情報

丸井導入

丸井と言えば百貨店!
渋谷駅前にある渋谷モディは誰もが一度は見たことあるのではないでしょうか。

このように、百貨店と聞くと都心の一等地で高価な商品を販売するビジネス…とイメージしてしまいますが、売上構成を確認するとそうでもない事がわかります。

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なんと売上の半分をフィンテック事業が占めているのです!

しかし、百貨店事業で成長を続けた丸井はなぜフィンテックや不動産に軸足を移したのでしょうか?

それは業界として百貨店が1990年代から衰退基調にある事が原因です。

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1990年代には大店法規制緩和・自動車の普及によって郊外ロードサイドのユニクロやニトリなどの専門店(特定のアイテムに特化した販売店)消費者を奪われます。

さらに2000年代にはそれらの専門店が都心に出店攻勢をかけた事でいよいよ住みわけが難しくなりました。
百貨店の主要な売上は衣類で構成されていた為、ユニクロの台頭が特に致命的になったのではないかと思っています。

ユニクロが2000年ごろから都心に出店攻勢をかけ始めた事は以下の記事にも記載があるので是非確認してみてください。

もはや「テナントからの売上徴収」「好立地を生かした仕入販売」だけの単純な戦略では利益の確保が難しくなったため、百貨店業界はテナント誘致による賃貸収入や、経営統合による規模増強、丸井のようにフィンテック事業へ進出するなどの工夫が求められています。


2. イオンの基礎情報

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イオンと言えば非常に大きな小売グループですよね。
街に出て石を投げたらイオングループに当たるくらい大きいです。

物流最適化などの経営効率上昇のため、地方スーパーの買収合併を繰り返してきました。
僕は地元のイオンをジャスコと呼んでいますが、ジャスコがイオンに変わったのもスーパー「マイカル」との統合が原因だったようです。

それだけ小売業に特化している事もあり、売上構成の9割近くを小売事業が占めています。

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しかし営業利益ベースでは構成比がガラッと代わります。

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総合金融・小売・ディベロッパー事業で綺麗に3等分されています。

「小売で消費者を呼びこみ、金融やディベロッパー事業で稼ぐ」といった戦略でしょうか。

イオンの総合金融事業は銀行業や生命保険、住宅ローンまで様々です。
今回はクレジットカード事業について丸井と比較してみましょう。

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3. クレジットカード発行事業の収入源

クレジットカード発行事業(イシュア)としての収入源は以下の3つがあります。

3分解

①キャッシング
②加盟店手数料
③ショッピング金利

の3つに大別されます。
それぞれがどのような収入なのか確認しておきましょう。


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キャッシングは現金の貸し出しです。
店頭でクレジットカードを提示して決済・・・ではなく、現金を借りる形です。
このときの金利相当分がイシュアの収入となります。

では消費者がクレジットカードで決済した時はどのような収入がイシュアに渡るのでしょうか?

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消費者がクレジットカードで決済した場合、まず加盟店から手数料収入が入ります。

(厳密には加盟店手数料を得るのはアクワイアラであり、丸井はアクワイアラから「加盟店手数料」という科目でインターチェンジフィーを受け取っています。が、厳密に表現すると混乱を招くので割愛。)

このとき消費者がクレジットカードで決済したとしても、一括払いでは金利収入が発生しません。
しかし分割払いやリボ払いを選択した場合、金利相当がイシュアの収入となります。

今回はショッピング金利をメインに分析します。

ここ


金利(ショッピングクレジット事業)の売上を以下のように分解し、それぞれの要素について2社を比較してみましょう。

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3-1. 会員数&稼働率の比較

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クレジットカードのように手数料・金利収入を得るビジネスではユーザーを増やす事で売上を確保する事が大切です。
そのため、会員数と稼働率が重要な指標として扱われています。

※稼働率・・・総会員数のうち、1年に1回以上そのクレジットカードを利用した会員の割合

まずは丸井の会員数と稼働率の推移を確認しましょう。

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2020年度にカード会員数は700万人を突破し、稼働率も65%前後をキープしているため順調と言えそうです。

※クレジットカードは稼働率50~60%で優良な部類

ではイオンの率いるイオンカードはどうでしょうか?

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2020年には会員数が1800万人を突破しているうえ、稼働率65%をキープしています。

会員数と稼働率の推移は2社とも大きな違いは確認できませんでした。

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イオンカード会員数はエポスカードのおよそ4倍!こうやって並べてみるといかにイオンが巨大なグループかわかりますね。


3-2. 会員1人当たり決済額(クイズ)

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イオンが圧倒的だった稼働会員数ですが、1人当たりの決済額はどうなのでしょうか?

ここでクイズです!

以下のグラフ内の緑色・紫色の企業のうち、どちらが丸井でしょう?

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■紫色の企業
 ⇒会員当たり利用額は30万円ちょっとで横ばい

■緑色の企業
 ⇒会員当たり利用額は右肩上がり。2021年にはピンクの2倍近くに。

ヒントはそれぞれの戦略です。
国内ではなく海外のカード会員獲得に動いているのは・・・と考えるとわかるかもしれないです。

正解は、、、、



3-2. 会員1人当たり決済額(解説)

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緑色の企業が丸井でした!

2014年度は利用額が同じでしたが、2021年になるとイオンのほぼ2倍です!

ではどうしてこのような結果になったのか、各社の取り組みを見てみましょう。

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まずは丸井ですが、顧客にエポスカードを電気料金や携帯料金などのインフラ決済に使う事を促すキャンペーンを打ち出し、付与されたポイントでtsumiki証券という自社資産運用サービスへ誘導する施策を打っています。

実は丸井は、カード会員が「長いサイクルの中でどのくらい利用しているか?」というライフタイムバリュー(LTV)を重視しているのです。

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小売でのクレジットカード利用だけでなくインフラ関連も重視しているのは、家計におけるエポスカード利用割合を増やすための施策というわけです。

ではイオンは何もせずに胡坐をかいているだけなのでしょうか?
もちろんそんなことはありません。

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縮小する国内市場ではなく、中期的に中間層が増加する東南アジアへの出店攻勢を強めてるのです。

1人当たり利用額ではなく、海外も含めた稼働カード会員数を重視しているという点で丸井と大きく異なっていますね。



3-3. テイクレート

最後にテイクレートを比較しましょう。

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いくら取扱高やカード会員1人当たりの取扱高(利用額)が大きくても、自社の売上に繋がらないと意味がないですよね。

取扱高が何パーセント売上に繋がっているのか?を示す指標がテイクレートです。
そしてエポスカードとイオンカードのテイクレートを比較した結果は以下の通りです。

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イオンのテイクレートが2.1%なのに対して、丸井のテイクレートは3.8%でした。

2倍近い差はどうして生まれたのでしょうか?

答えはリボ・分割払いの大きさにあります。

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イオンが稼働会員数1749万人、(リボ+分割)払い売上が233億円なのに対し、丸井は稼働会員数が453万人、(リボ+分割)払い売上が435億円です!

エポスカード会員はリボ払いを多く利用している事がわかりますね。
リボ払いは大きな金利収入を生むため、テイクレートが大きくなったという訳です。

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加盟店手数料と比較すると、分割払い金利の方が売上に貢献する事がわかりますよね。
これが原因でエポスカードのテイクレートが大きくなりました。

ではどうしてエポスカード会員はリボ払いが多いのでしょうか?

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実は丸井はエポスカードのイラストにアニメ等人気作品を採用する等の施策で20~30代の会員数を増やしています。

そして(リボ+分割)払いは若者に利用される事が多いため、丸井は(リボ+分割)払いの金利で稼ぐことが出来るのです。

※イオンが低価な日用品を販売するのに対し、丸井は高価な商品を販売するという違いもありそうです。
しかし「エポスカードを使う人は丸井で、イオンカードを使う人はイオンで買い物をする」という仮定であれば考慮する要素ではないと思ってます。

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(リボ+分割)の7割が39歳以下に利用されている事からも納得できますね。

ではエポスカードとイオンカードの会員の年齢を比較してみましょう。

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イオンは39歳以下の会員が占める割合は17%なのに対し、
丸井は56%と非常に高い割合です。

この会員の年齢層の違いが(リボ+分割)払いによる売上高を大きくしていたのです。

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4. まとめ

まとめ

小売×イシュア業務という組み合わせは同じだった2社でしたが、施策の違いが重要指標の差となって現れました。

丸井はカード会員1人当たり利用額を重視

インフラ決済など家計に食い込む施策を採用

イオンはカード会員数を重視

積極的海外進出

またLTVを重視する丸井は若年層のカード会員を増やし、結果として(リボ+分割)払いによる売上が増加し、テイクレートも上昇しました。


5. おまけ

小売×イシュアという軸で2社を比較してみましたが、戦略を見ると丸井と楽天で比較するのも面白そうです。

LTVを重視するのは楽天カードにも共通しますし、証券やモバイルなどカード会員の家計を攻める点は大きな共通点です。
しかもウォルマートから西友の株を20%取得して小売業界に本格参入しました。

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売上の半分をクレジットカードに頼り、LTV戦略を進める丸井の最大のライバルは、楽天なのかもしれないですね。



参考資料






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よっしー
機械エンジニア→アフリカ無職→今はSEとして働いてます。 USCPAや企業分析に関する学習を不定期でアウトプットします。