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ワークマンとユニクロの出店戦略

こんにちは!
米国公認会計士試験に2回落ち続けているよっしーです!

決算資料を読む力を伸ばす為、今回はアパレル製造小売業(SPA)のワークマンとユニクロの出店戦略を比較してみました。

まずは2社の基礎情報から確認しましょう。


ワークマンの基礎情報

ワークマンと言えば作業着ですが、カジュアルウェアや女性向けウェアなど多様な製品を取り扱っています。

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とはいえ商品別の売上高構成をみると、やはり作業着をはじめとした職人向けの製品が主力となっています。

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2012年度と比較してカジュアルウェアの割合が+5%と増加しているものの、やはり職人向けが主ですね。

そんなワークマンはどのようなビジネスをしているかというと、仕入販売と企画開発、いわゆるSPA(製造小売)モデルを採用しています。


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2015年度から始めたプライベートブランド(PB)開発ですが、2021年度には全商品に占めるPBの割合は58%まで増加させています。

また、直営店だけではなくフランチャイズ(FC)も活用している点がポイントです。

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決算資料を確認してみるとFC比率は95%となっており、ほとんど直営店はありません。
なぜこのように高いFC比率を維持しようとしているのかというと、店舗スタッフの人件費を減らし、固定費を減らす狙いがあるからです。

最後に収益構造を確認しましょう。

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どうやら収益は
①加盟店からの収入
②その他の営業収入
③売上高
の3つに分ける事が出来るようです。まずは①から確認しましょう。

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①加盟店からの収入とは、FCからの収入の事です。これは初期費用とロイヤリティの2つに分ける事が出来ます。

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初期費用は加盟金など合わせて320万円(税込)のようです。
FC契約はAタイプであり、業務委託契約がBタイプに相当するのですが、2021年6月時点でBタイプ店舗は1店舗だけなのでここでは割愛します。

ではロイヤリティはどのように回収するのでしょうか?

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FC店舗の粗利から60%を本部へ納め、40%を加盟店へ分配するようです。

次に最も売上が少ない②その他の営業収入とは何なのか確認しましょう。
有価証券報告書を読むと②その他の営業収入の主な構成要素は

取引先に代わって商品小分け作業や供給等を行う流通業務受託収入

とのことです。
これは一体どのような意味なのでしょうか。

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推測ですが、おそらく以下のような工程で収益化していると予想しました。

1. 取引先から段ボール一杯の軍手を仕入れる
2. 上図右のように、ワークマンのラベル張りやゴム縛りをして梱包
3. FC店舗へ配送

つまり、2. と3. を取引先の代わりに行う事で収益化しているわけですね。

③売上高は直営店の売上とFCへの卸売で構成されています。

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①②③それぞれの内容がわかったので、売上に占める割合を見てみましょう。

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やはり売上ベースで言うとFCへの卸売が主な要素になっていますね。
②流通業務受託収入は4%程度なので重要視する必要はなさそうです。


ユニクロの基礎情報

ユニクロと言えば低価格なベーシックカジュアルを販売する会社です。
オシャレというよりは誰もが着れるような服を提供しています。

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しまむらなどの純粋なアパレル小売企業と異なるのは、自社で企画開発も行っている点です。
2000年に行った改革のおかげで、100%がプライベートブランド商品で構成されています。

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商流はワークマンと似ていますが、ほとんど直営店で構成されている点が大きな違いです。

最後にアパレル業界における2社のポジションを確認しておきましょう(細かい位置取りは適当です)。
デザイン性と価格という2軸で4象限を考えてみます。

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ユニクロと同じ「低価格・デザイン性」の領域ではしまむらやGAPなど、厳しい競争がある一方、「低価格・機能性」の領域はワークマンしかありません。

ワークマンは競争を避ける戦略を採っている事がわかりますね。
靴業界への参入もこの戦略を裏付けており、ABCマートが取り扱わない980円~1900円の領域で勝負をしていくようです。
僕もつま先に芯が入っているブーツをバイク用に購入したのですが、コスパ抜群で良い商品でした。


出店戦略比較(問題)

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ワークマンと言えば郊外にそこそこの広さ、駐車場付での立地が多いですよね。
一方のユニクロは郊外に大型店を構える事もありますが、ショッピングセンターの上層階に店を構えている事もあります。

2社は共に郊外ロードサイドに出店する点は共通しているのですが、店舗数と1店舗あたりの売場面積を比較すると異なる動きをしています。

さぁ、ここで問題です!
以下のグラフのうち、ワークマンの店舗数、1店舗当たり売場面積を表しているのは赤色のグラフと黄色のグラフどちらでしょう?

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棒グラフが店舗数(左軸)
線グラフが1店舗当たり売場面積(右軸)
を表しています。

■黄色の企業
・店舗数が右肩上がり
・1店舗当たり売場面積は一定

■赤色の企業
・店舗数は減少
・1店舗当たり売場面積は上昇

どちらがワークマンでしょうか?
ヒントは職人向けのワークマン老若男女向けのユニクロという違いです。




出店戦略比較(ユニクロ)

正解は、、、

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ではこれらの数値の推移とそれぞれの戦略を読み取って行きましょう。

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ユニクロは店舗数を減少させている一方で1店舗当たり売場面積が右肩上がりです。
これは、ユニクロが狭い店舗を閉店させ、需要のある広い店舗を新規出店している事を表しています。

出店数

実はこの戦略自体はユニクロの親会社、ファーストリテイリングの有価証券報告書「事業の状況」に記載があります。

スクラップ&ビルドにより新たな生活様式にあった店舗網へと再構築をします。

では一体どうして店舗数を増やすのではなく、需要のある店舗の大型化に努めているのでしょうか?

それは狭い日本では店舗数に限界があるため、1店舗当たりの売上を伸ばす戦略を進めているからです。
1990年代は郊外に150坪の小型店を多く出店していましたが、
以降は200~500坪の大型店の出店を進めています。

しかし店舗数を増やさずに店舗面積を増やしていくと、どうしても売場面積当たり売上高(売上高/売場面積)が低下し、非効率的な経営になります。

が、それを防いだのがユニクロの凄いところです。

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ユニクロのターゲットは老若男女。幅広い年齢層をターゲットにしているため、製品ラインナップの選択肢は豊富です。

そこでユニクロが進めたのがヒートテックやレディース部門拡充。
今まで注力していなかった領域を増築した分だけ拡充する事で、売上/売り場面積の減少を防ぎました。

また、ユニクロは幅広い顧客層と広告宣伝能力を持つため絶大な集客力を持っています。
これを利用して本来人気のないショッピングセンター(SC)の上層階を有利な条件で借りて、SC全体の顧客を流動させるという商業施設としては嬉しい働き(シャワー効果)をしています。

SCは顧客の流動性が向上を期待し、ユニクロはその見返りに安いテナント料を実現しているわけですね。



出店戦略比較(ワークマン)

ワークマンは店舗数が増加する一方、1店舗当たり売場面積は280[m2]程度を維持しています。

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まずは売場面積を一定に保つ理由を考えてみましょう。

製品別の売上構成を見るとわかりますが、ワークマンの主要なターゲットはあくまでも職人であり、軍手や作業着など業務に必要なものを購入します。

つまり、ベーシックな衣類を扱うユニクロと比較して、顧客がワークマンに訪れる回数は多くありません。

よってワークマンの場合は店舗を大型化するより、100坪(330m2)程度の店舗を多く配置した方が売上の増加に寄与すると考えているのです。

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また、ワークマンはデータ経営や徹底的なマニュアル化を推進しているため、100坪という標準敷地面積に従っている側面もありそうです。

しかし2018年にワークマン+を開業してから客層が拡大し、売場面積と駐車場面積が不足する傾向にあるため今後は1店舗当たり売場面積も増加しそうですね。

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では店舗数を増やしているのはどうしてでしょうか?
店舗を増やして売上を増やすという狙いはもちろんですが、僕は新たな販路開拓のための投資でもあると考えています。

実はワークマンは2020年からネット通販に対抗するため店舗受取型の自社ECサービスを開始したのです。

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巨大化するAmazonなどのECに対する有効な手段として考えたのがEC+店舗受取だったのです。
ワークマン公式サイトのプレスリリースでは以下の記述があります。

1) 全リアル店舗が好調で出店条件が緩和され、今後10年で更に400店の新規出店が可能
2) 現状でもネット通販のお客様の67%が店舗受け取りを選択している
3) ネット専業に配送コストでも負けないためには、全国の店舗網のメリットを活用すべき
 店舗在庫の店舗受け取りならば、配送コストと時間でネット通販大手に負けない
4) 世界的に一定の条件下でClick & Collectが優位になっている例が増えている
 国土が狭く店舗の多い英国でBootsやMarks & Spencerは店舗受け取り比率が7割以上(英国では宅配の信頼性が低いこともあるが、日本は宅配コストの高騰が問題)

Amazonとの競争や日本の地理条件を加味した結果、ECではなく店舗受取で優位性を見出す事にしたようですね。

店舗を増やす事は純粋な売上増加に繋がりますし、店舗受取とのシナジーも抜群なので積極的に店舗数を増やしているという事ですね。




まとめ

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ワークマンとユニクロは販売するアイテムが異なる(作業着orベーシック)

客層が異なる(職人or老若男女)

接客不要なワークマンはFC、必要なユニクロは直営メイン

客層が異なる(職人or老若男女)

購入頻度が異なる

低回転のワークマンは小型店、高回転のユニクロは大型店

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感想

ワークマン、いい企業ですよね。
徹底したデータ経営とかマニュアル化とか大好きです。

今回は財務数値ではなく店舗面積と店舗数に着目して分析をしてみました。
日常生活で身近な数値(店舗面積など)を基に分析するのは楽しいですね!

分析が面白いと思って頂けたら是非スキボタンをお願いします!!!!

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