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決算資料から見る「ボタニスト」のI-neと「パーフェクトワン」の新日本製薬

初めまして!
機械エンジニア→アフリカ無職→SEとしてフラフラしているよっしーです。

この頃はUSCPAをはじめとした会計・企業分析の勉強に取り組む日々が続いています。
今回はその学習内容をアウトプットして、皆さんからのフィードバックを頂くという初の試みです。
コミュニティ「ファイナンスラボ」内で発表した内容の備忘録としての役割も兼ねています。

記念すべき第一回目のアウトプットは

​「ボタニスト」をはじめとした複数ブランドを持つ株式会社I-neと

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「パーフェクトワン」がとにかく強い新日本製薬株式会社の比較です!

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I-neの基礎情報

I-neの製品ラインナップは多様です。
シャンプーの「ボタニスト」、家電の「サロニア」、飲料の「チルアウト」などジャンルも跨いだブランド作りをしています。

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ブランド別の売上はボタニストが半分を占めるものの、多角化を推進している姿勢が見て取れます。

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これらの多様な製品は自社で企画し、他社へ外注する事で生産しています。こんなに色々な製品群を自社の生産設備で賄おうとしたら大変なコストになりますので納得ですね。
流通経路としてはEC(楽天など)と小売が主なようです。

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しかしI-neとしてはECと卸売のどちらを重視しているのでしょうか?
売上に対するその内訳を見るとほとんどが卸売となっている事がわかります。

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今時流行りのザ・DtoCというよりは、Webを上手に利用した実店舗販売といったイメージです。

実際、同社の大西社長は「ネットで流行らせたものを店頭で売る」という施策を講じており、決算説明資料の他にも様々なメディアでそのような記載が散見されます。

大西CEO

資生堂のように店頭でのロイヤリティを重視する施策とはまた違う面白い戦略だと思います!
純粋なECだとブランド価値を築きにくいですし、ブランド観を伝えるのにも限界があるため有効に思えます。



新日本製薬の基礎情報

一方の新日本製薬といえば化粧品とヘルスケア商品を手掛ける企業ですが、ブランドが強いのは何といっても「パーフェクトワン」です。
公式オンラインショップによると

化粧水・乳液・クリーム・美容液・パック・化粧下地・ネッククリームの1品7役の薬用オールインワンジェル

とのことです。魔法のような製品です。

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製品領域ごとの売上を見てみると、化粧品が9割を占めている事がわかります。

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同社の化粧品の製品はほとんどが「パーフェクトワン」ブランドのため、
新日本製薬≒パーフェクトワンの会社
というイメージです。

そんなパーフェクトワンをどのように流通させているかというと、I-neとほとんど変わりません。
自社で企画した製品の生産を他社へ委託し、通信販売と卸売で流通させる戦略です。

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しかしI-neと大きく異なるのがその比率です。
I-neの売上の7割を卸売が占めていたのに対し、新日本製薬は9割を通信販売が占めています。

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以上が2社の基礎情報です。
次に2社を製品・広告宣伝・流通の観点から比較して違いを明確にします。



製品の比較

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I-neはシャンプーの「ボタニスト」、家電の「サロニア」、飲料の「チルアウト」など多様なブランドを保有していました。

一方の新日本製薬は「パーフェクトワン」に頼っている側面が強く、経営陣もそれを課題として認識しています。

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上に示した有価証券報告書の通り、「パーフェクトワン」の主な顧客層であるシニア世代に依存している事も暗示されています。
しかし当然これらの課題に対する施策も講じています。

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決算説明資料では
①ミドル、若年層にも化粧品を売り込む事
②ヘルスケア領域を強化し、ミドル~若年層を取り込む
事が示されています。

若年層をターゲットにするI-neと異なり、シニア世代に強い点がポイントです。



広告宣伝の比較

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次に広告宣伝の比較を行います。
まずは2社の損益計算書を横並びにしてみます。

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販管費に大きな差が生じていますね。
新日本製薬は売上の77%を販管費が占めるのに対し、I-neは44%を占めています。

今回は広告宣伝費の分析を行うので、さらに販管費の内訳を見てみます。

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広告宣伝費率に大きな差が生じています!
では2社の広告宣伝の手法を比較してこの差を生んだ理由を考えます。

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I-neの主なターゲットは若年層であるため、Tik-TokやInstagramをはじめとしたWeb広告が主流です。
これらの広告はテレビや新聞などのマス広告と比べて割安になるため、比較的広告宣伝費率が低くなったというわけですね。

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一方の新日本製薬の主なターゲットはシニア世代です。

シニア世代の多くはSNSを利用しないため、新聞やTVを通じたマス広告でアプローチする必要があります。
これらのメディアはWebと比較すると割高になるため、販管費の割合が相対的に高くなったのです。

広告宣伝費率の理由



流通の比較

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2社とも卸売とEC(通信販売)を利用する点は共通しているものの、それらの比率は大きく異なります。

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この販売チャネルの違いがどのように財務諸表に表れるのでしょうか?
再度2社の販管費率の内訳を見てみます。

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I-neは荷造運賃が販管費の20%を占める一方、
新日本製薬は発送配達費が販管費の10%を占めています。

通信販売が主な新日本製薬の配送コストの方が、大きな割合になると考えていた為意外な結果となりました。

では、この10%の差がどうして生じたのか考えてみましょう。

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I-neの物流コストが高い理由としては、自社で在庫管理から梱包、配送を手掛けている事が原因と推測できます。
採用ページの社員紹介では、これらの業務を社員が担当している事が見て取れます。

また、決算説明会資料では物流拠点の再編に投資をした旨が記載されている事や

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倉庫管理システムを提供するロジザード株式会社の導入事例紹介ページに記載されていることから、自社物流能力の向上に注力している事がわかりますね。

ロジザード


一方の新日本製薬の配送コストが相対的に低くなっているのはなぜなのでしょうか?

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有価証券報告書に目を通すと、商品配送業務を委託している事がわかります。

このことから、自社で負担する配送コスト(発送配達費)のほか、委託先企業へ支払う費用が発生しているはずです。
この費用が「外注委託費」もしくは「その他」の勘定科目に計上された結果、割安に見えたと推測しています。

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以上がI-neと新日本製薬の比較でした。

4P分析に則り価格についても比較したかったのですが、商材が異なるため実施していません。

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結論

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2社は化粧品を企画販売するDtoC企業という点では一致していたものの、主力製品が異なりますし、何といっても顧客の年齢層が違います。

そのため、それぞれの顧客に最適な広告手法を採用し、Web広告とマス広告という差が生まれました。

販売チャネルの違いも年齢層を意識したものと言えそうです。

シニア世代は数ある製品を店頭で選ぶのが困難なため、新日本製薬は通信販売が主力となりました。
若者は店頭とWebの両方を重視するため2つを組み合わせたチャネルを用意しているというわけです。



感想

2社ともに中国進出を目指しているようですが、個人的に新日本製薬は苦労をしそうだなーという印象を持っています。

中国と言えばインフルエンサーを利用したSNSでの宣伝が主ですし、新日本製薬が得意とするシニア層を新規開拓するのはそう簡単ではないように思えます。(海外のシニア世代の保守的な姿勢を崩すのは難しそう)
もちろんインフルエンサーとTik-Tokを利用したマーケティングも行っていますが、他社に比べるとノウハウの蓄積が足りないためこちらも一筋縄ではいかないと感じてます。

今後もアウトプットを通じて理解を深めたいと思いますので、コメントやスキボタンをよろしくお願いします!

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