MBA志望者向け:テスト選択と学習計画 (2) 学力テスト編

Affinity英語学院の飯島哲也(学習カウンセラー)です。

MBA(Master of Business Administration:いわゆる「ビジネススクール」)出願を目指している方々を対象に「テストの選択」と「学習計画」について連載させていただいております。2回目の今日は「(2)学力テスト編」です。 

(2) 学力テスト編

a) 歴史的な経緯
MBA受験生の審査においては長年にわたってGMAT(ジーマット)という学力テストのスコアが使用されてきました。GMATは1953年に9つのビジネススクールとETS(Educational Testing Service)が話し合って作成を決めたMBA出願用のテストであり、翌1954年に実施が始りました。当初は紙ベースとのテスト(PBT)でしたが、1997年にコンピューター上で実施されるテスト(CBT)へと進化しました。また、2006年に試験作成団体がETSからACTへと変更になっています。私がGMATを教えだしたのは1998年だったので、振り返ってみればCBTの実施が始った翌年だったのですね。また、私は2006年の1月に(=試験作成業者が変更になった直後に)GMATを受験して、数学がぐっと難しくなったことに驚きました。(余談ですが、本稿の準備を通して私自身がGMAT講師としての「キャリアの棚卸し」をすることが出来ました。)

参考:GMATの歴史(公式情報)

閑話休題。GMATはMBA出願用に作られたテストであり、MBA出願の際に受験できる学力テストは長らくGMATのみでした。ところが、ここ数年GMATのみで受験生を評価することに対する不安を覚える学校が増えるようになり、本来は公衆衛生や公共政策などの「一般大学院」入試のために使用されていたGRE(Graduate Record Examination)をビジネススクールが徐々に併用するようになっていったのです。現時点では主要なビジネススクールは私の知る限り全てGMATとGREのどちらのスコアでも出願ができるようになっています。

さらにここ1~2年の動きとして、本来はEMBA(エグゼクティブ向けのMBA)入試として作られたEA(イーエー:正式名称はGMAT EA)を一部のMBAが採用するようになっています。具体的にはMIT(Sloan), Columbia, New York University (Stern), Duke (Fuqua), Carnegie Mellon (Tepper), 等がEAのスコアを受け付けるようになっています。中でもMIT, Columbia, Dukeは英語のテストスコア提出が不要ですので、EAのスコアだけで出願をすることが可能になっています。(実際に、昨年度EAのスコアだけでColumbiaへ合格した受講生の方がいらっしゃいます。)

ということで、現在はMBA出願のために受験する学力テストは通常はGMATとGREのどちらかを、そして一部の学校(MIT, Columbia, NYU, etc)においてはGMAT, GRE, EAのどれかを選ぶことができるようになっているのです。

b) まずはGMATから学ぼう
私は前回の「(1)英語のテスト編」で書かせていただいた通り、「英語のテストは基本的にはIELTSをお勧めしたい」という結論に達しています。そして、学力テストの選択についても色々な視点から検討を重ねてきたのですが、現時点では「まずはGMAT対策から開始すべき」という戦略をお勧めしています。ご存知の方も多いと思いますが私は「とがった」性格なので(笑)「MBA出願はGREで!」という極端な戦略を採用することもかなり検討しました。ですが、研究を重ねる中でGREにもそれなりのリスクがあることが分かってきたので、比較的無難な「まずはGMATで頑張ってみましょう」という考え方に現時点では落ち着いています。以下、掘り下げていきます。

GMATから学習を開始すべき最も大きなの理由は「得られる学びが多い」ということです。たとえば、SC(Sentence Correction)の学びを通して英文ライティングの実力を上げることができます。SCは1982年まではWriting Abilityという名称だったことからも分かる通り、英文ライティング能力を上げるために文法や語法を学ぶ場なのです。特に「曖昧さの少ない分かりやすい英語、簡潔なビジネス英語」を書くためのトレーニングとしてSCの修行を経ることを私は強くお勧めしています。また、SCのトレーニングの副産物として、分析的かつ正確な英文読解力が身に付く場合が多いのです。さらに、CR(Critical Reasoning)の修行を通してロジカルシンキングを学ぶことが出来ます。結果的にMBAへ出願しなかった方でも、SCとCRを学んだことが「ビジネスにおいて非常に役に立っている」と感じられているケースが多いのです。

さらに、GMATから修行を開始した方が、仮に後にGREやEAへ転向することになっても「GMATの学びが役に立つ」のです。近年「数学が苦手ならば最初からGREを選ぶべき」あるいは「GRE Verbalの方が努力と根性でどうにかなるから最初からGREを選ぶべき」等の、一理あるものの誤った考え方を耳にすることが多く困っています。確かに数学はGMATよりもGREの方が「問題が易しい(問題のレベルが低い)」のは事実です。ただし、GRE数学は「問題が易しいかわりに高い正答率が要求される」ため、GMATとGREの両方を受験した方々のデータを見ると、数学セクションは「GMATの方が点数が高い人」の方が多いのです。また、GRE Verbalは読解と単語のみなので「根性でどうにかなる」という考え方には一理あります。ただし、今までの人生で受験勉強や英語学習をきちんと経てこなかった方の場合は、レベルが極めて高いGRE Verbalの問題を数多く解いても「空回り」するだけで、実りが無いまま時間だけが過ぎていくケースが多いのです。この「今までの人生で受験勉強や英語学習をきちんと経てこなかった」というタイプに該当すると自覚されている方は、まずはGMATのSCとCRの修行を実践してください。そうすると、仮に後にGRE へ転向しても「文法とロジックという武器を携えてReadingと格闘することができる」という意味において効率的な学習と順調なスコアアップが期待できるのです。実際に、最初からGRE一本で対策を進めてきた方が点数の伸び悩みから(GMAT受験の予定がないのに)私のSCクラスを受講されるケースもあるのです。(もちろん、ひっくり返して考えれば、受験勉強(中学、高校、大学)において英語、国語、数学(算数)の3種目を徹底的に学習していた&得点源だった方であれば、最初からGREを選択しても順調にスコアアップできる可能性が高いです。)

ご注意いただきたいのは、私はここで「GMATから学習を開始すべき」と申し上げているのであって、「GMATを選択すべき」だとはお伝えしていない点です。まずはGMAT Math, SC, CRの学習から開始し、目安として2~3か月間の学習期間を経た後に「GMAT問題や模試の正答率や点数」「本人の感じる<相性>と<のびしろ>」「指導者(講師、カウンセラー、等)が感じる<相性>と<のびしろ>」等の諸要素を総合的に分析した上でGMAT or GRE or EAの結論を出せばよいのです。私の学習カウンセリングにおいては、この「試験選択」の議論に時間を使うケースが多いのです。私自身の理論や経験を基にして、お一人お一人に向いていると思われるテストをご提案させていただくことが可能です。(そのためには、3つのテスト全ての模試を最低でも1回ずつは受験して点数と感想を事前に教えていただきたいです。)

よって、MBA出願のためにAffinity英語学院にてクラスを受講されたい方には、原則としてSC戦略クラスCR戦略クラス(共に私が担当講師です)から受講することをお勧めしているのです。そして、SCとCRの学びを深めつつ、3つのテスト(GMAT, GRE, EA)との相性を模擬試験の受験等を通して少しずつ見定めていけばよいのです。仮にその後GREやEAへ転向することになっても、SCとCRで得た学びは活きるはずなのです。ちなみに、GRE Verbalには出題の割合は少ないもののCRも含まれています。GREにはSCは存在しませんが、SC学習はGRE Verbalリーディング力向上に間接的に役に立ちます。さらに、EAは実質的に「GMATの圧縮版」であり、SCとCRは共にEAにおいて出題されます。

c) 出願の際に有利なのは?
「GMATとGREのどちらの方が出願に有利なのか?」というご質問をいただくケースが多いのですが、簡単に申し上げると「ほとんどのケースにおいてはどちらでも同じ」なのです。ただし、一部のビジネススクールがGMATをGREよりも優先的に考えているようなのでご注意ください。このあたりは細かい出願戦略論なので本稿では具体的な学校名には言及できないのですが、例えば某MBAのアドミッションディレクターは「もしGMAT 700点の人とGRE 700点(GMAT換算)の人がいたとして、二人のスコア以外の要素が全て同じだと仮定したら、当然ながらGMAT 700点の人を選びます。」と私に発言されています。上記の通りGMATはMBA出願のために作られたテストであり、GMATの方がビジネスを学ぶ上での能力を図る試験としてはGREよりも優秀なテストだと考えるのは自然なことです。

また、別のビジネススクールにおいては「GMATとGREは平等に扱います」と明言されているものの、望ましい点数(competitive scores)としてはGMAT VerbalよりもGRE Verbalの方により高いpercentile(パーセンタイル)を提示しています。そして、実はその示されているGRE Verbalの望ましいスコア(competitive score)が通常の日本人には達成が極めて難しい点数なのです。(英語のネイティブスピーカーを想定したデータなのでこのようなことが起きます。)つまり、この学校へ出願する際には、示されている基準点を持っていればGMATとGREのどちらでも確かに「平等に扱われる」のですが、GREの基準点の方が取得が遥に困難だという事実を考慮すると、実質的には「GMAT有利」だという判断ができるはずなのです。(このあたりは”information”ではなく”intelligence”の世界であり、私自身の分析結果に過ぎないことをご理解いただきたく存じます。実際に、私の知る限り、この学校への合格者はGMATスコアによって出願した方の方が圧倒的に多いようです。)ただし、この「GMAT優先」のスタンスをとっている大学は少数派ですので、一部の例外を除けばあまり大きな論点ではないとも言えます。

逆に、GREやEAの方が出願上有利なケースもあります。MBAの世界ではランキングが重要であり、ランキングの中には合格者のGMATの点数のみをランキング算出において使用しているものもあるのです。(例:エコノミストのランキング算出方式

よって、ランキングを少しでも上げたいと考えるアドミッションオフィスが、GMATの点数は低いが魅力的な出願者を合格させる際にGREかEAのスコアで出願させるという裏技を使うケースがあるのです。

d) 英語のテストとの兼ね合い
英語のテストのスコアメイクを完全に終えてから学力テスト(GMAT, GRE, EA)の対策へ移行するのが理想的なのですが、状況によっては英語のテスト対策と並行してGMAT対策を始める、あるいは英語のテスト対策を中断していったんGMAT対策に注力することも有力です。この論点にはあまりの多くの変数(出願校、出願の時期、年齢、大学の成績、英語力のタイプ、学力タイプ、等)が関わってくるので一般論を語ることは極めて困難のなのですが、本稿では参考になる考え方をいくつか示しておきます。

まず、前回の「(1)英語のテスト編」でも書かせていただいた通り、「英語のテストには代わりがある(=テストの点数が低くても面接等で英語力をアピールできる)」が「学力テストには代わりがない」のです。そもそも英語のテストスコアが不要な学校も存在しますし、仮に英語のテストスコアを要求してくる学校でも、面接等の場で高い英語力をアピールできればスコアが基準を満たしていなくても合格できることがあります。ですが、学力テストについては、少なくともある程度のランキング以上の学校であれば、GMAT, GRE, EAのどれかのスコア提出が必須です。いつまでもずるずると英語のテスト対策に時間とエネルギーを使っていると、学力テストのスコアメイクが間に合わなくなってしまうリスクがあります。目安として「5月になったらどのような状況であってもGMAT対策を実施したほうが良い」とここではお伝えしておくことにします。

ここでは一つのモデルとして「純ドメでIETLSのReadingとWritingの点数は安定的に高いが、音声系(ListeningとSpeaking)の点数が低い人」が「5月になったのにまだIELTSの点数が7.0点に(または7.5点に)達していない(注:IELTSにおいて必要な点数は志望校によります)」ケースを考えてみましょう。音声系(ListeningとSpeaking)の修行の成果が出るまでにはある程度の期間が必要になるのが通例なので、音声系の学習は「長期戦モード」「本質重視モード」へ切り替えることをお勧めします。つまり、「テンプレートの暗記」や「サンプルアンサーの作成」等の付け焼刃の学習を止めて、発音練習、音読、多聴、等の「本質重視」の学習メニューへ切り替えるのです。そして、IELTSの受験はいったん中断してGMAT対策と受験に注力する。そして、たとえば秋にGMATを卒業できた際にIELTSへ戻れば、GMAT Verbal対策によって英語の読解力や分析力が向上しているはずなのでIELTS ReadingとWritingがより楽に戦える状態になっているはずですし、音声系(ListeningとSpeaking)も「長期的&本質的なトレーニング」の成果がある程度出ているはずなので、比較的短期間でスコアメイクが出来るはずなのです。

本稿は以上です。次回からはGMAT, GRE, EAそれぞれの特徴についてもう少し詳しく語る予定です。


Affinity英語学院を主宰しています。「テスト対策講師(主にGMATとGRE)」「学習カウンセラー(主に英語と数学)」「メンタルトレーナー(呼吸法、瞑想、等)」として大学院留学(MBA, LL.M, Public Policy, etc)のお手伝いをしています。