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モード化を加速させるコモン スウェーデン

*このテキストは「AFFECTUS letters」「AFFECTUS subscription」参加メンバー限定有料ニュースレター「LOGICAZINE(ロジカジン)」で、2019年11月26日に配信されたタイトルです。

【こんなニーズをお持ちの方に】
・デザインやトレンドの分析・考察が大好きで毎週読みたい
・専門学校生・大学生でファッションデザインの勉強に使いたい
・アパレル営業・販売の方で、モードファッションの情報収集と商品の言語化の参考にしたい

本文は以下から始まります。

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新しいファッションは、それまでのメインストリームとは異なる場所から生まれることがある。それは決して珍しい現象ではなく、歴史を振り返ると証明されていることが理解できる。1980年代、東京からパリへ乗り込んだコム デ ギャルソンとヨウジヤマモト、1990年代後半から世界を席巻し始めたアントワープ、そして2010年代中盤から帝国のごとくモードを支配してきたストリート。

ファッションの進化に、異世界からの才能は必須である。今日ピックアップするブランドも、デザイナーの歩んできた道がファッション界のメインストリームからは外れているブランドだ。男女のデザイナーデュオによってデザインされるメンズブランド「CMMN SWDN(コモン スウェーデン)」が今回のピックアップブランドになる。

2012年にスタートしたCMMN SWDNは、2018AWシーズンからは発表の場をロンドンからパリへと移し、取り扱いセレクショトショップがヨーロッパではイギリス・イタリア・ドイツ・スペイン、北中米ではアメリカ・カナダ・メキシコ、アジアでは日本・韓国・中国・台湾・香港・タイと、販路は活動拠点のロンドンのみならず世界へと拡大している。

デュオを形成する男性デザイナーの名はセイフ・バキール。彼はイラクで生まれ、スウェーデンで育つ。父親がノースロンドンで縫製工場を営んでおり、「H&M」や「トップショップ」といったファストファッションやロンドンの小規模な若手ブランドの生産を請け負う行う工場だった。そんな環境で育ったセイフは、父親の工場が生産した服に興奮を覚える若いデザイナーたちの表情に感動し、自らもデザイナーになりたいと思うようになる。セイフは母国のスウェーデンを離れ、ロンドンの名門ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションに入学する。

一方、女性デザイナーのエマ・ヘドルンドはスウェーデンで生まれ育ち、セイフと同様にスウェーデンを離れロンドンへ渡り、これまたロンドンが世界に誇る名門セントラル・セント・マーティンズへ入学する。

母国を同じスウェーデンとする二人だが、初めての出会いはロンドン。学校の異なる二人だったが、エマと同じクラスで学んでいた人物がセイフの同居人でもあり、その縁もあってセント・マーティンズを訪れた際に、同郷人がエマをセイフに紹介した。その瞬間、セイフは一目惚れという形でエマに魅了されて後に交際するようになり、現在では夫婦となって二人でCMMN SWDNを運営している。

ファッション界では世界に名だたるロンドンの名門学校で学んでいた二人だが、卒業後の進路が少々変わっている。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションやセント・マーティンズで学んだ学生は、パリやロンドンの有名ブランドや新進気鋭の若手ブランドに就職することが多いが、エマが最初にキャリアをスタートさせたのは、当時ファッション界では無名なカニエ・ウエストのスタジオだった。

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