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新生プラダから感じた違和感の正体

*このテキストは本日10/21(水) 23:59まで無料公開中。10/22(木) 0:00以降は有料(¥500)になります。本文以下から始まります。

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ファッション業界を驚かせた稀代の天才デザイナー二人の共演。とうとうミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)による「プラダ(Prada)」のデビューコレクションが発表された。ここではコレクションそのものの特徴と価値ではなく、このコレクションのデザイン構造について触れていく内容になる。

今回のデビューコレクションを見ていて、私は次第にこう感じるようになった。

「二人の持ち味が相殺されている」

まずはじめにミウッチャとラフ、それぞれが持つデザインの特徴について整理しよう。

二人に共通している特徴に「違和感」を作り出す点があげられる。それがなければ美しいと思える違和感を、ボリューム・カッティング・ディテール・素材・色などの構成要素を用いて服の中に取り入れる。それがミウッチャとラフに共通するデザインの特徴である。

ただし、違和感をデザインするにあたり二人の得意分野はそれぞれ異なる。ミウッチャが素材の組み合わせ、ディテールの組み合わせなど平面分野で違和感を作り出すことが得意なのに対し、ラフはシルエット、つまり服の造形面に関する立体分野で違和感を作り出すことを得意としている。

ミウッチャは私が「悪趣味なエレガンス」と呼ぶデザインを最大の武器としている。脈絡のない要素を一つのスタイルの中に隣接させて(融合ではない)、関係性のない要素が隣り合ったときに生じる違和感、その違和感から発せられるパワーがプラダのコレクションに吸引力を生み出している。

だが、ミウッチャはシルエットに関してはコンサバティブで、服の形そのものに大胆なデザインは見られない。あくまでコンサバティブなシルエットの内部でアヴァンギャルドな積極的デザイン展開を見せている。ミウッチャのデザインはシルエットがコンサバティブなために、一見すると馴染みのあるファッションに感じられるが、内部にデザインされた悪趣味なエレガンスによって、これまでに見たことのないファッションに感じられてくる不思議さを体験できる。悪趣味なエレガンスが初めて披露されたプラダの2014SSコレクションは、ミウッチャが持つ平面デザインの特徴がわかりやすく現れていた。

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