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別れの贈り物

HAPPYマインド・ダイアリー P. 4


週末のオフィスには誰もおらず、しいんとしていた。
私の足音だけが響くフロア。
テレワークに移行してからは、月に1度、週末のオフィスに出向いている。
PCのメンテナンスが主な目的だ。けれど、今日はもっと重要なミッションのために来た。


デスクの上に贈り物が置いてあるよ、と向かいの席の同僚が教えてくれた。
先週末に退職したKさんからのものだ。
贈り物について何も聞いていなかった私は、それを知ってすぐにKさんへLINEメッセージを送った。
「これまで大変お疲れさまでした! いつか、お茶でもしながら語りましょう♪」

退職すると知ったとき、LINEに登録したいと伝えたら、Kさんは快く承諾してくれた。だから、退職後たまに連絡を取り合って、近況報告をし合える関係になれるんだと思っていた。

「お世話になりました。早くコロナが落ち着くといいですね。どうぞお元気で!」
Kさんからきた返信メッセージに、あれ? と首をかしげてしまった。
「お元気で」って、別れのメッセージじゃない?
あれ??

同僚が退職する際、小さな贈り物が手渡されるのはよくあることだ。
だから、贈り物が置いてあると聞いたとき、たいして深く考えなかった。
LINEでひとこと伝えてくれればすぐにお礼が言えたのに、と思ったくらいだ。
けれど、どうやらそれは、別れの贈り物らしい。

「どうぞお元気で!」のメッセージに返信する言葉が見つからないまま、週末に贈り物を回収するというミッションの重要度が上がった。


私のデスクの上には、赤い紙袋が置いてあった。
中に入っていたのは、かわいらしい薄水色のハンカチ。四隅に小さな花の刺繍が入っている。

丁寧で、細やかな気配りができる彼女らしいチョイスだな、と頬がゆるんだ。
もう顔を合わせないつもりの相手にも、こういう気配りをしてくれる彼女は、本当にできた人だと思う。

私も、この乙女チックなハンカチが似合う、気配り上手な女性になりたい。


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