RPGにおける「属性」の存在意義

多くのRPGには「火」「氷」「雷」を代表とする「属性」というものがある。
さて、これらの存在意義とはなんだろう?

まずありそうな答えとして「戦術性を高める」というもの。
ただ殴り合うだけでは戦術もクソもない。
「魔法」や「スキル」が存在することで駆け引きが生まれる。

だが、「属性」はどうだろう?
「火」に弱い敵には「火」で攻撃する。
それが最適解だ。そこに選択の余地はない。
「戦術性」は拡張されただろうか?

だが、肝心の火属性魔法を覚えていなければそうはならない。
「火」に弱い敵であることはわかっている。だけど肝心の火属性魔法がない。
そんなときプレイヤーは「火属性魔法があればなあ」と火属性魔法を欲するだろう。
そして火属性魔法を手に入れるためには、ゲームによってさまざまだが、レベル上げであったり、魔法書などのアイテムだったり、スキルポイントだったりが必要になる。
いずれにせよ、「その戦闘中に」火属性魔法を新たに習得できることはほとんどない。

「属性」によって拡張されるのは「戦術性」ではなく「戦略性」である。

「火属性魔法を覚えたぞ! これで虫とかアンデッドは倒せる!」
「でも今後氷属性が効く敵も出てくるかもしれない。それも欲しいなあ」
「しまった! こいつは雷が弱点か。雷も覚えなきゃ」

そうやって、プレイヤーはそれぞれの「属性」へのリソース配分を要求される。

今度は武器や防具に「属性」が設定されている場合も考えてみよう。
ダンジョンを探索し、宝箱を発見する。あなたは「フレイムソード」を手に入れた。
攻撃力自体は現装備の「ミスリルソード」よりはやや低い。だが、目前には「アイスゴーレム」が待ち構えている。
明らかに「火」に弱い。そのとき、「フレイムソード」の攻撃は「ミスリルソード」をはるかに上回る!

つまり、多様な「嬉しさ」を設定できるということである。
武器の性能を判断する基準が「攻撃力」だけであるなら、現装備より低い攻撃力の武器にはなんの魅力もない。
だが、「属性」が設定されているならば、攻撃力が低かったとしても有効に使える場面が出てくる。

防具の場合も同様である。

総じて、RPGにおける「属性」の存在意義とは「ボリュームを増やす」ことにあるといえる。

逆にいえば、十分なボリュームのないゲームであるならば、「属性」はあえて必要なものではない
火属性も欲しい、氷属性も欲しい、雷属性も欲しい……とあれこれ悩む局面というのは楽しくもあるが、煩わしくもある。
せっかく強力な火属性魔法を覚えたのに数回戦っただけで「次の敵に火は効かないよ。雷で攻撃してね」といわれては興醒めだ。

そして、「属性」にはもう一つ大きな問題として「直感的でない」ゆえの「わかりづらさ」がある。

たとえば「トレント」のような、樹のモンスターがいたとしよう。
なんとなく「火属性が効くだろうな」と予想がつく。

では雷はどうだろう?
「雷で山火事とかになるから効くはず」「アースみたいに根を張ってるから効かない」などいろいろ解釈は分かれそうだ。
あるいは、「そもそも木って思ったより燃えにくくない?」といった解釈もあるかもしれない。

結局のところ、「トレントに火は効くのか」「雷は効くのか」それらは恣意的なゲームルールの設定次第だ。

これらの「わかりにくさ」はUIによって改善できる。
ダメージ表記の色を変え「WEAK!」などと表示させたり、思い切ってターゲット選択時にヘルプウインドウなどで弱点であることを明記してもいい。
とはいえ、「効くか効かないか」はやはり恣意的な設定にすぎず、「なんでこいつに雷効かないの」と納得のいかない場面も出てくるだろう。

一方で、直感的にわかりやすい「属性」に似た概念がある。
「単体」攻撃と「全体」攻撃だ。

「一体の強力なボスモンスター」相手ならば「強力な単体攻撃」を選ぶべきだ。
「一体は大したことはないが、数の多い雑魚の群れ」相手ならば「全体攻撃」を選ぶべきだ。
これは極めて「直感的」である。

つまり、あえて「火」や「雷」といった「属性」を設定せずとも、「単体」「全体」で少なくとも二種類の「属性」は生じる。
この二つだけでも数時間規模のゲームならば十分だ。

「属性」は「多ければ多いほど面白い」ということはないが、「多くの属性を許容できるほどのボリュームのあるゲーム」であるならば「そのボリュームゆえに面白い」ということはあるだろう。

また、「属性」には「弱点を突いて大ダメージが出ると気持ちいい」「耐性をつけて完封できると気持ちいい」といった側面もある。
それもある程度のボリュームありきだ。

「属性」は必要か?
「ボリュームを増やすための手段として採用するか否か」、というあたりになってくるのではないだろうか。

まとめ
・「属性」はゲームの「戦略性」を高め、「ボリュームを増やす」
・「属性」は恣意的な設定に過ぎないため「直感的でなく」「わかりづらい」問題がある
・「直感的にわかりやすい」属性概念としての「単体」攻撃と「全体」攻撃
・ボリュームを増やすための手段として採用するか否か

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