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ジェンダー炎上?日経新聞広告チェック&炎上対策!代案あり

厳しめ!広告の炎上チェック

広告自体の問題度:
結果:プチ炎上
理由:ネガティブな表現がNG


ここが炎上!社会背景と共に読み解く

ネガティブなインサイトを突く
1 消費者を焦らせるコピー
2 ジェネレーションギャップによるお叱りの構造
背景の社会構造
3 男性は忙しい、女性は「すごい」「やばい」の対比になってしまっていた
4 「すごい」「やばい」のリアルな使用シーンとのギャップ

1. 消費者を焦らせるコピー


少なからず、消費者を焦らせて購買につなげようとする構造がありました。『乗り切れなくなってきた』『この年まで来てしまった』を背景と一緒に考えて見ましょう。

日経の屋外広告

これはインサイトをついたいいコピーだと思います。
これらのコピーの元にあるのは、定性調査で出てきた消費者の生の声なのかもしれません。
『乗り切れなくなってきた』の背景には、今までは乗り越えられていたという事実があることが窺がえ、どうして乗り越えられたのかというと若いから、や女性だから、というような理由が画像から想像できます。
『この年まで来てしまった』も忙しく会社員として働いていると社内や自分のいる環境だけが自分の世界になってしまって、知らぬ間に年を取ってしまった、と言うのもシチュエーションとして納得できます。
この刺さるコピーが問題になるとすれば、それはこのコピーが消費者を焦らせて購買につなげようとする構造であるからです。広告内の人物と合わせてこのコピーの背景を考えると、20代の若者は男女ともに知識が無いままだよね、それは(年を取ると)通じなくなるんだ、と言っているように理解できます。Lumineの広告と同じく、このように消費者に「欠陥がある、だから変わろう」、というようなメッセージは不快感を起こす傾向があります。

20代の若者に訴求している広告で若者に欠陥がある、と思わせるわけですから、日経はターゲットを見下している、とさえ思われる可能性もあります。

2.ジェネレーションギャップによるお叱りの構造


新聞を作っている企業から、若年層への“上から目線”を感じさせる構造になっています。
なぜかというと、消費者(20代の若者)に知識が少ない、ということが広告コピーの起点になっているからです。「すごい」「やばい」「忙しい」と言っているであろうターゲットに対して、「だから日経新聞を読んで意見を言えるようになろう」というのは広告として自然なことです。しかし、普段SNSなど多様なメディアにあたっている消費者からすると、新聞は電子版であってもそうでなくても絶対的なメディアではありません。「新聞=読むべきもの、新聞を読まない人がやばいで乗り切る、忙しいと言い訳する」という認識は、ずれている、と感じる若者が多いのかもしれません。
そのため、企業が「私たちは新聞を読んでて偉い、若者もちゃんと新聞を読むべきだ」というような“上から目線”でのお叱りの構造になってしまっていました。

3.男性は忙しい、女性は「すごい」「やばい」の対比になってしまっていた


さらに、たまたまかどうかは分かりませんが、電車内などの広告配置として男女の対比に見えてしまったことも不幸でした。

屋外広告での配置

これは一般社団法人のパートナーシップ協会が弁護士の協力のもと、海外で公表されている性を扱う広告ガイドラインや男女雇用機会均等法、児童ポルノ法、憲法上の人権などの諸法令を参考に作成した「ジェンダー平等・多様性広告ガイドライン」でも禁止されている事項に当てはまってしまいました。

ジェンダー平等・多様性広告ガイドライン


具体的には「女性はやばいで乗り切る」「男性は忙しさを言い訳にする」という対比描写になってしまった点です。

4.「すごい」「やばい」のリアルな使用シーンとのギャップ

男女平等が良く議論される現代で、女性がいつ「やばい」「すごい」を使っているかを配慮しなかった事も炎上のきっかけとなりました。
女性では、特に男性や年配の方がご自分の事や、親和性のない話題を長く話す際は「すごいですね」などと言って“乗り切る”・あしらうことを処世術として使っている節が少なからずあります。
また、同様に男性の若者が年上の人と話す際も、日本のパワーバランスを重視する文化から、若者が自分の意見を言うことは控え、「すごいですね」「それはやばいですね」などと年上の人が気持ちよく話せるように相槌として使うことが大変多いと感じます。
そのような背景が事実としてあるのにも関わらず、「すごい」「ヤバい」と発言する若者は「新聞を読んでおらず知識がないからだ」と決めつけてしまっていることが垣間見れる今回の広告は、割と知識も意思もある若年層に対して不快感を与えたと思われます。

炎上を回避!消費者に不快感を与えないためには?

・消費者を焦らせて購買につなげようとする構造を回避

消費者自身が「新聞で世界の見え方が変わった」というような、前向きに新聞を手に取るようなコピーにする。
また、炎上してもこの広告を取り消さないという対応を見れば、日経は「新聞こそが絶対的な存在である」という企業意思を感じます。そこはブランドポリシーを保っているという点で評価できます。

・広告に出す前にターゲットに確認

違和感はないか、ターゲットの年代に確認する、調査をして事前確認することは良い予防かもしれません。例えば、Twitterで今回のカテゴリーの新聞や情報メディアに対してどんなことを思っているか、などを探ることは可能です。
今回炎上後にはTwitterで炎上広告の代案がつぶやかれていました。
例えば、この代案は、多くの若い女性のインサイトついているのではないかと思います。

笛美さんの代案 


おまけ:広告効果を最大化するために

・定性調査から出てきたものをそのまま使わない

今回、企業としても少なからず消費者のインサイトに沿ってコピーを書いたはずです。新聞を読みたいけど読めていない層にインタビューをしてインサイト発掘を行ったのかもしれません。しかし、定性調査で出てきた声をそのまま使うのではなく、そこに企業の考えをのせられるかが肝だと思います。

・企業としての方針の一貫性

企業として伝えたいメッセージはぶれないか、そして、炎上した後にこの広告をこのコピーで出した背景と意図がしっかり説明できるようにしておくことが、企業態度としてもコミュニケーションとしても大切かと思います。

実際に自社の広告を事前にチェックしたい

広告炎上や批判可能性を抑えること、メッセージを適切に伝えるには、
社会背景や、ターゲットの傾向、感情など様々な要因を理解する必要があります。
デスクリサーチ、アンケートの実施、調査会社への依頼など方法は様々だと思います。

当方は、広告評価を行った経験を活かし、広告内容のチェックを行っております。もし自社広告、発信内容に不安がある方はお役に立てますので、ご連絡ください。

出典:「ジェンダー平等・多様性広告ガイドライン」

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