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おもに読んだ小説の、あらすじと感想文を投稿します。 大体19-20世紀ごろの古典文学を…

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おもに読んだ小説の、あらすじと感想文を投稿します。 大体19-20世紀ごろの古典文学を取り扱う予定です。

最近の記事

大江健三郎 「個人的な体験」 書評

2023年3月に大江健三郎氏が亡くなったのですが、彼の作品は読んだことがありませんでした。 そこで、買ったっきり読んでおらず、本棚に眠っていたこの作品を引っ張り出して読んだら面白くて読了したので、せっかくだからあらすじと感想を書き記すことにします。 この作品は昭和39年(1964年)に書かれた長編小説です。 大江健三郎が国際的に活躍するきっかけとなった「万延元年のフットボール」の少し前の作品です。 知的障害者である息子の光が誕生した実体験を元としており、大江の今後の作風を

    • アントン・チェーホフ 「箱に入った男」 書評

      岩波文庫 から出ている、チェーホフ 著「ともしび・谷間」の中にある「箱に入った男」を読みました。 冷え込みが深くなってくると、ロシア文学独特の憂愁がなんだか身に沁みてきますね。 これは短編の三部作の一つ目の作品です。 1.箱に入った男 2.すぐり 3.恋について と続いていきます。 どれも20ページほどの短い作品です。 あらすじ ある夜、獣医のイワン・イワーヌイチと中学校教師のブールキンが狩猟に行き暮れて、ある村長の納屋で一夜を明かすことになった。 夜が深まっても二

      • 読書をサボりがちになっている

        久しぶりの投稿です。 このnoteには読書した本のあらすじと感想を投稿するようにしているのですが、どうも最近読書をサボり、読んだとしてもそれきりです。 原因は、日々の仕事や生活に関心が偏っているからですかね。。。 別に読書をサボっても誰かに怒られるわけでもないです。 読書したところで、金になるわけでもなく、頭がよくなるわけでもないですが、物語を通じていろんな色の眼鏡をかけないといけないなと思うわけです。 日々のルーチンワークと、娯楽だけだと、変わり映えのない灰色の生活

        • 夏目漱石 「坑夫」 書評

          夏目漱石の「坑夫」を読みました。 いつもの通り、あらすじと感想を書きました。 「坑夫」は明治41年(1908年)の作品です。 漱石が朝日新聞に入社してから「虞美人草」に次ぐ、2作目となりますので、初期の作品と言えるでしょう。この次に「三四郎」から始まる、いわゆる初期三部作が執筆されます。 漱石は島崎藤村の原稿遅れの穴埋めをすべく、未知の青年(荒井某)から提供された話をもとに「坑夫」を書いたそうです(新潮文庫 「坑夫」巻末解説より)。 ですので、本人の体験があまり素材とな

        大江健三郎 「個人的な体験」 書評

          夏目漱石 「行人」 書評

          久しぶりの投稿になります。 夏目漱石の「行人」を読み終えたので、あらすじと感想を載せます。 どうしても、夏目漱石作品ばかり書評を載せてしまいますね。 どれも読み応えがありますし、読むのがとても楽しいです。 彼の作品は面白い作品というよりは、現代人の倫理上の問題や哲学の問題を読者に鋭く問いかける力があります。 「行人」は夏目漱石の後期三部作のうちの一つです。 『彼岸過迄』明治45(1912年) 『行人』大正元年(1912年) 『こころ』大正三年(1914年) 三年足ら

          夏目漱石 「行人」 書評

          ヘミングウェイ 「老人と海」 書評

          ヘミングウェイ著 福田恆存訳の 「老人と海」を読みました。 ヘミングウェイの作品は初めて読みました。 これまた非常に面白い作品でした。 簡単にいえば、老漁師が巨大なカジキマグロに立ち向かう小説です。 複雑な人間関係もなく、ひたすら老人の独白とカジキとの激戦の状況が綴られています。 まさしくハードボイルドな作品と言えるでしょう。 男のロマンを感じましたねえ。読みやすいですし、おすすめです。 ※ネタバレ あらすじ キューバの老漁師であるサンチャゴは、不漁が84日間も

          ヘミングウェイ 「老人と海」 書評

          アントン・チェーホフ 「六号病棟」 書評

          あけましておめでとうございます。 アントン・チェーホフ著 松下裕訳 「六号病棟・退屈な話」に収録されている、 「六号病棟」を読んだので、あらすじと感想を紹介します。 「六号病棟」自体は100ページそこそこで、そこまで長くありません。 「退屈な話」も名作ですが、こちらもかなり面白いです。 ざっくり言うと、田舎の医師として赴任してきた主人公が、六号病棟にいる精神病患者と議論を重ねるうちに、まわりから気狂いになったと思い込まれて、六号病棟に入れられてしまうお話です。 戯曲で

          アントン・チェーホフ 「六号病棟」 書評

          夏目漱石 「道草」 書評

          夏目漱石の「道草」を読んだので、あらすじと感想を書きました。 この小説は、私小説的な要素が多く、漱石自身の体験が色濃く作品に表れています。 作品順としては、遺作である「明暗」ひとつ前のものです。 ストーリーの面白みや、オチの爽快さはありませんが、漱石自身の知識人としての苦悩や葛藤が、かなりリアルに描写されていて、漱石の心の暗い部分を知る上でも重要な作品だと思います。 ※ネタバレ あらすじ 大学教師である健三はイギリス留学から帰ってきて、大学教師の仕事に追われる日々を

          夏目漱石 「道草」 書評

          夏目漱石 「門」 書評

          夏目漱石の「門」を読みました。 こちらは、前期三部作のうちの最後の作品となります。 三四郎⏩それから⏩門 「それから」は前にもあらすじと感想を書いたのでよかったら見てください。 物語の展開にそこまで起伏がなく、インパクトに欠ける感じはしましたが、「罪の意識」や「後ろ暗さ」みたいな心境がかなりリアルに描かれていて、引き込まれるところがいくつかありました。 あらすじと感想です。 ※ネタバレ あらすじ 役所勤めの野口宗助は、嫁の御米と二人きりで、東京の崖下にある閑静な借家

          夏目漱石 「門」 書評

          夏目漱石 「それから」書評

          夏目漱石の「それから」を読みました。 三四郎⏩それから⏩門 と続く、3部作のうちの2つ目です。 もはや、読み尽くされている名作だとは思いますが、改めて読んでみて名作だと実感しました。面白い。 あらすじと感想を書いたのでどうぞ。 ※ネタバレ あらすじ 主人公の長井代助は30才にもなるが、仕事を持たず、結婚もせず、財産家である父からの援助をもらって、日々のらくらして過ごしていた。代助は定職につかない一方で、読書に励む知識人で、演劇やら音楽も味わい、日々、精神活動に励ん

          夏目漱石 「それから」書評

          ヘルマン・ヘッセ著 「デミアン」書評

          新潮文庫から出版されている ヘルマン・ヘッセ著 高橋健二訳の 「デミアン」を読んでみたので、あらすじと感想を載せます。 この作品「自分とは何か」という自己探求が主なテーマだと思います。 名作だとは思いますが、抽象的なテーマが最後まで貫かれているので、結構読むのに骨が折れました。 ※ネタバレ含む あらすじ ラテン語学校に通う少年シンクレールは、親兄妹に愛され、善良で穏やかな家庭で育ってきた。 しかし、シンクレールは不良少年フランツ・クローマーの手下の一人であり、彼を大

          ヘルマン・ヘッセ著 「デミアン」書評

          アントンチェーホフ 「ともしび」 書評

          岩波文庫から出ている、アントンチェーホフ著、松下裕訳の「ともしび・谷間(他七篇)」の中の、「ともしび」を読みまして、非常に面白かったので、あらすじと感想文を書きました。 チェーホフといえば、戯曲が有名ですが、短編小説の名作も数多く残しています。 チェーホフの書く小説は、ドストエフスキーやトルストイが書くような、重厚な内容ではなく、軽快でウィットに富んでいて読みやすいので、ぜひおすすめです。 ※ネタバレが含まれますので、気になる人はあらすじを読まない方がいいかもです。 「

          アントンチェーホフ 「ともしび」 書評