まりにゃ

東京外大卒、近現代史、国民国家形成を中心に東南アジア研究をやっていました。発育途上の国…

まりにゃ

東京外大卒、近現代史、国民国家形成を中心に東南アジア研究をやっていました。発育途上の国民国家が好きでナショナリズムの膨らみに興奮します。子育てのため限界旅行は引退しました。エスニック料理研究は継続中です。推し国家はイスラエル、中国、シンガポール

最近の記事

横浜中華街デートで1日過ごせ

中華街について雑に作ったネタがバズって地元の友達からも回覧されてきた。横浜出身の相互からもリア友からお前のポストがLINEで送られてきてビビったなどの苦情が寄せられている。 せっかくなのでこのポストについての解説と、じゃあ実際中華街で丸一日デートするとしたらどうしたらいいのかについて書いていく。 結論から言うと中華街は単体でデートで1日過ごしても十分楽しめる魅力的な街である。 1.「中華街でしてはいけないこと」の解説別にしてもいいのだけど、せっかくデートなどで行くなら中華街

    • 移民が築いたマレー半島らしさ、そしてプラナカン文化

      10年ぶりにシンガポールを訪れた。物価が高いと言うので、高校の修学旅行で行ったアラブストリートのロティチャナイも10ドルくらいになってるかと期待していたのだが、相変わらず卵を入れても2ドルや3ドルと安かった。体感としては東京23区と大差ない物価であった。 10年前とは違い家族連れで、ベビーカーを押しての旅行だった。当時は限界バックパッカーだったのでスーツケースを押しての旅も初めてだった。 全体的にバリアフリー化が進んでおり、他の東南アジア諸国とは違い歩道に大穴が空いてるのに突

      • あの頃の外語祭が好きだった

        多分5年ぶりくらいに外語祭へ行った。外語祭は東京外国語大学の大学祭で、世界中の料理と専攻語による劇(通称語劇)を楽しめるのが売りだ。初めて訪れたのは高校2年生のときで、母校との出会いでもあった。 結論から言うと、久しぶりに訪れた外語祭で、規制が文化を物足りないものにしてしまうのを感じてしまった。 先ほども書いたが、外語祭は世界中の料理を楽しめる料理店が最も人気だ。語劇にも力を入れているが、ほぼ内輪かその言語に興味ある人を中心に盛り上がっている。言語や外国に興味がない人も集

        • 乳幼児連れの海外旅行方法

          1.赤子を連れてシンガポールに行くことになったシンガポールで暮らしていた妹から、結婚することになった、式をするので来てほしいと突然連絡があった。 それ自体は構わないのだが、私には生まれたばかりの娘がおり、妻含めてどうするかという問題があった。 まずそもそも何歳から飛行機の搭乗が大丈夫なのか。小児科の見解をネットで調べた。乳幼児の負担になるのは間違いないので冠婚葬祭などやむを得ない事情がある場合を除いて奨励されないとのこと。そして今回は冠婚葬祭に当てはまっている。 航空会社

        横浜中華街デートで1日過ごせ

          イスラームの世界観と共存の可能性

          中田考著『イスラーム学』の「総論 タウヒードとカリフ制」を参考にイスラームの世界観について説明していきたい。 中田考氏はエジプトの大学でイスラーム法について学んだ、日本人で数少ないイスラーム法学者(ウラマー)である。近年イスラームについて解説する日本語の本は驚くほど増えたが、ムスリムとして正式にイスラームの教義を学んだ法学者により日本語を母語とする者が読める形式で書かれた本はまだ少ない。 それ故にイスラームについてムスリムでないものが「これこそが本当のイスラームだ。あれは違う

          イスラームの世界観と共存の可能性

          ブータン 「幸福の国」の実像

          ブータンについてこのような風説が広まっている。 ツイッターなどで定期的に誰かが呟いてはバズっている。 この俗説はある程度は正しいが、ブータンの実情のほんの一部しか捉えられておらず、不正確である。 なぜならブータンは海外の情報が入ってくる前から貧しく、大して幸福なわけでもなかったからだ。 「幸福の国ブータン」とは、ブータン政府が先進国の観光客を呼ぶためのキャンペーンであり、言ってしまえばプロパガンダに過ぎない。ブータンはインドと中国に挟まれた山岳地帯の貧しい国である。資源

          ブータン 「幸福の国」の実像

          お家騒動から見るシーア派とスンナ派

          某幸福の科学教祖が死去して後継者をめぐり実子と後妻のお家騒動が起こったようだ。あまりちゃんと追ってないので真偽のほど定かではないが、後妻が実権を握り、長女の前世がアマテラスから妖怪おたふくに格下げされてしまったというツイートを見かけた。妖怪おたふくって誰だよ。 既視感があるなと思っていたが、初期イスラームにも実子と後妻の対立とも言えるものがあり、後妻のグループが実権を握り、実子派を迫害していったとも言える過程があったなというのを思い出した。実はこれが後のシーア派とスンナ派へ

          お家騒動から見るシーア派とスンナ派

          アフリカ諸国の覚え方

          前回書いた世界史の良問について、および一橋世界史の解説記事が好評だった。ありがとうございます。 「なぜモザンビークとジンバブエはアフリカ統一機構への加盟が10年遅れたのか」という問いに対して60%くらいの仮説を立てて検証する能力は外国とビジネスする際にも必要だ。断片的な知識を有機的に繋げ合わせて仮説を立てていく思考のフレームワークはどんな分野でも重要だし、こうした仮説検証が常に要求される歴史科目は社会に出てからも役に立つスキルなのである。単なる無味乾燥な役に立たない暗記科目

          アフリカ諸国の覚え方

          世界史における悪問とはなにか

          世界史における悪問・良問一橋大学の世界史入試問題について、これは悪問であるという趣旨のツイートが流れてきた。 地図中のAとBの国がアフリカ統一機構に加盟したのが遅れてしまった理由を400字で説明する問題だ。高校世界史ではアフリカについて扱う量が少なくて、たしかにこれは難問ではある。一橋受験生でもこの問題の100%正解の解答を出せる人はほとんどいないだろう。 しかしこれが悪問かというとまた話は別だ。なぜなら高校世界史の教科書で扱う知識で十分に書くことができるからだ。必要な知

          世界史における悪問とはなにか

          『「社会正義」はいつも正しい』を読む-①Modern(近・現代)とは何か

          1.ポストモダンって何?『「社会正義」はいつも正しい』はポストモダン思想が変質し現代の「不寛容なリベラル」となったことを検証し、「不寛容なリベラル」に対する処方箋としてのリベラリズムを提唱する「真面目」な本である。 「不寛容なリベラル」のありのままをところどころで描いてるので露悪的にも見えるが、ありのままを描いたら差別と言われるのもたまったものではないし、個人的にはそのようなパターナリスティックな忖度の方が不健全で不誠実だと思うので「真面目」な本であるということをあえて強調す

          『「社会正義」はいつも正しい』を読む-①Modern(近・現代)とは何か

          『「社会正義」はいつも正しい』を読む-序

          『「社会正義」はいつも正しい 人種、ジェンダー、アイデンティティにまつわる捏造のすべて』を読んだ。感想、解説をまとめていきたい。 早川書房は翻訳の出版と同時に訳者である山形浩生氏による解説もネット上に公開したのだが、その解説が「差別的である」として大炎上した。解説記事が公開停止に追い込まれた事件も記憶に新しいだろう。 全く同じ内容の訳者解説が同書の後書きに載っている。この本は思想史についてそれなりの背景知識がないと読むのが難しい。そしてこの本に関心を持った人の多くは「最近の

          『「社会正義」はいつも正しい』を読む-序

          「ミャンマー民主化」はなぜ失敗したのか

          序章 2021年クーデター2021年2月1日、ミャンマー最高指導者のアウンサンスーチーと側近のウィンミン大統領は軍の部隊に突然拘束された。ミャンマー国軍は首都ネーピードーおよびヤンゴンの主要拠点を制圧、政府高官を拘束した。アウンサンスーチー拘束から4時間後、軍は憲法第417条に基づき非常事態宣言を宣告、418条に基づき国軍最高司令官が全権を握った。あくまで憲法に則った措置ではあるが、事実上のクーデターであった。 2011年に民政移管、つまり「民主化」がなされて、2016年の

          「ミャンマー民主化」はなぜ失敗したのか

          なぜユダヤ教はキリスト教に迫害されたのか

          先日公開したシオニズムについての解説に「なぜユダヤ教徒がヨーロッパで迫害されるようになったのか知りたい」という質問があった。 これはローマ時代、キリスト教とユダヤ教が未分化だった時代まで遡れるテーマなので、シオニズムについて説明する記事では詳細を省略した。前回のnoteでも紹介したが「ユダヤ教には選民思想がある(ので迫害された)」というのはヨーロッパのキリスト教徒による迫害の正当化のために使われてきた言説である。にもかかわらず歴史や倫理の教科書には堂々と「選民思想」という言

          なぜユダヤ教はキリスト教に迫害されたのか

          シオニズムとは何か―公平な中東理解のため

          駐日イスラエル大使の抗議声明に寄せて2022年5月31日、イスラエルのギラッド・コーヘン駐日大使はテルアビブ空港銃乱射事件の実行犯および首謀者が社会で暖かく迎えられていることに抗議の意を表明した。 https://www.j-cast.com/2022/06/02438593.html?p=all テロの歴史を語る上でテルアビブ空港銃乱射事件は「テロリストが無差別に多くの一般市民を襲撃した初の事件」として象徴的である。日本では実際に「イスラエルの圧制に対するパレスチナ人解

          シオニズムとは何か―公平な中東理解のため

          マンションデベロッパー営業をしていたころの話

          学歴不問の職場とはどういう場所か世の中には流れ者の集まる職場がある。学歴・職歴不問という求人はだいたいそれだ。かつて学歴不問の職場で働いていた。地元の50人くらいの社員規模のマンションデベロッパーだった。どういう場所だったのか記録しておきたい。 まず筆者の経歴について、なぜそのような場所で働いていたのかについて簡単に説明する。 1.経歴について元々は外務省で働きたくて勉強していた。 だが部活と学科の人間関係のトラブルで鬱になり、外務省の試験にも失敗した。民間就活に切り替える

          マンションデベロッパー営業をしていたころの話

          カンボジア現代史⑤ ポルポトとは何者だったのか

          前回までのあらすじ クーデターで政権を追われたシハヌークはクメールルージュと手を組んだ。ロン・ノル政権に国家をまとめる力はなく、ベトナムと中国の支援を受けたクメールルージュは勢力を拡大、5年後に政権を奪い民主カンプチアを建国した。  政権奪取後、ポル・ポトは旧ロン・ノル政権の閣僚、軍人、官僚、警察官などを殺害した。しかしロン・ノル政権を崩壊させたはいいものの、当初の予想よりも早く革命に成功してしまったため、これからどのような国家を作っていくのか具体的なプランがクメールルージュ

          カンボジア現代史⑤ ポルポトとは何者だったのか