無心でいる


もうひどく疲れている。


原因は明白で、先の予定がなくなっていくのがとにかく気を落ち込ませる。今年はラブライブ!フェスの前週から毎週ライブかライブビューイングか円盤をみんなで見る会に行っていて、それは本当に疲れたので思い返せばやらなくてよかったと思うけど、三月の半ばくらいまでずっとそういう週末が続く予定だったのが2月終盤から中止と延期でなんでもなくなった。最初は体力も限界だったしラッキーくらいの気持ちだったが、気づけば4月5月の行く予定のライブや当たっていたチケットもなくなっていて、紛れもない「実害」となってしまった。コミケもなくなったから本を作る予定と気力も消えた。
半年ほど何も考えずに無職でいたあと、去年デザイナーとして潜り込んだ会社では三月の頭からマスク着用が義務付けられているが、もう本当に手に入らないのでガーゼとかを間に挟んでごまかしている。正直転職活動自体には失敗していて、業界には妥協しかないがこういう状況にあまり左右されないタイプの資材を作っていて、会社が急に潰れるとかはなさそうだけど、そもそもの景気は悪くてボーナスが出るかの判断が先延ばしにされていてわからない。みなし残業の枠を毎日越えるか越えないかの時間まで働く中で唯一の希望は週末に出かけること、そういう楽しいことの記録のためにTwitterを使っていたので結果として書くことがなくなった。飲みも遊びも出かけた報告にリスクがあると早い段階で思っていたからで、残念だけどそれは正しかったみたいだ。日々の感情を書き留めるのに使おうと思っても文句か苦しさしか出てこないのは明白だったし、他人の怒りや虚無感の発露を見たくなかったので何人かフォロー解除もしたがTLのしんどさはさして変わらなかった。今は距離の近い(と勝手に思っている)ほんの何人かを入れたリストをたまに眺めて一方的に生きてることを確認している。
あらゆるサービスで今のこの状況に関する通知が来る、このnoteもそうだし、LINE、仕事で使うPinterestやAdobe Creative Cloudにまでオフィシャルな声明の通知が来た。3.11のときとかにいっぱい回ってきた頑張れ負けるな危険を恐れよみたいなものと、何が違うのだろう?定期的に来るインターネット疲れと春の気候とムードとが全部重なって、おれは完全に憂鬱に負けてしまった。もう何も見たくないしどこにも居たくない。自分の部屋にだっていたくないんだ。


憂鬱に完全敗北した自分を繋ぎ留めているのがギターだと言ったら、急にこれを書いているのが多感な中高生みたいになってしまうだろうか。Strandberg Boden RAS 6。昨年末に急に買ったのに土日に出かけている間はまったく弾かなかったけど、今は少しずつコードとかを覚えて好きな曲を弾いたりしている。こうやって弱音を書けるくらいに回復したのもそのおかげだと思う。ギターを弾くのはすごく能動的な行為で、相当な積極性が求められる。シールドが繋がってることを確認してからスピーカーの電源を入れ、マルチエフェクターの電源を入れ、スピーカーのボリュームを上げて、ギターを構え、ギターのボリュームを上げ、それからピックがどこにいったか探し、弾くと音が出る。何段階もの面倒くささの壁を越えなければならず、なのに音を出しているときは誰のためでもなく、たぶん自分のためですらない。音が出ても、何も変わらない。今は。それくらい何とも繋がらない行為でしか今は自分を守れない。いつかは誰かの前で弾くとか、バンドを組むとか、好きな人の歌をうたうとか、そういういつかを期待すると手が止まることもわかってきた。おれはとにかく無心でいることにした。結果としてどうこうじゃなく、少なくとも今この時期にはそうするしかなかったってことだけは書き留めておく。

サポートしていただけると、ありがたい気持ちでブックオフに行くことができます