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ブルーハーツと、真夜中の待合室

3月末の一人旅。長崎の国境離島・壱岐島からフェリーで佐賀の唐津港へ降り立ち、そこから電車で福岡県の糸島市へ。ここが、この旅最後の目的地。

てっきり「糸島」という駅があると思って油断していたら、そんな駅名はなくてこっそり焦る。

そして糸島は、島ではなかった。

これ、間違える人が未だに多いらしい。島ではなく、福岡県の西端部を中心とした海辺の美しい街が「糸島」だった。

糸島半島の中央部および西部と、その南側から南西の福岡県西端部の一帯を市域としている。北側と西端部は玄界灘に面し、東側は福岡市に接する。南部は脊振山地があり佐賀県と接している山岳地域で、南西部は唐津市に、南東部は佐賀市に接す。糸島半島の付け根とその西側の玄界灘沿いの地域を筑肥線(筑肥東線)が東西に通っており、同線沿線の旧前原市域を中心に近年ベッドタウン化が進んでいる。 また豊かな自然環境や、カフェ等飲食店舗の増加、福岡都心まで都市高速またはJR利用で30分程度という立地もあり観光地・移住先としても注目を集めている。(wikipediaより抜粋)

壱岐島の次に糸島へ向かった理由は、有坂さんに会うため。

有坂さんとは、彼が原宿の Fútbol cafe mfというカフェで店長をしていた頃からの付き合い。
mfを辞め、詩人の奥様とふたりで日本一周の旅に出かけ、そこで立ち寄った糸島の魅力に惹かれ、夫婦でここに移住しようと決めたらしい。

未来にも、予定にも、世間体にも何にも縛られない。そんな自由な感性を持つ有坂さんとは、昔からどこか波長が合った。BOØWYが好き、という最高な共通項も。

決して「帰りに寄る」という類いのものではなくて、糸島で有坂さんに会いに行くこと、それ自体も、この旅の重要な目的だった。

糸島の最寄駅である「筑前前原駅」で有坂さんと合流し、まずは知る人ぞ知る「牧のうどん・本店」に連れて行ってもらった。

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恥ずかしながら「牧のうどん」のことは初めて知ったのだけれど、ここでまず最初の糸島インパクト。うまい!そして早い!店員さんの手際のよさ半端ない!
本当に本当に、美味しかった。

牧のうどんは地元でつくる麺を大事にしたいため福岡県内と佐賀にしか展開していないらしい。つまり九州に行かないと食べられない。関東在住者にとって、この希少性がますますそそるじゃないか。

そして海辺の奥にある有名な またいちの塩へ。
大人気スポットらしくて人がたくさんいたけれど、店のすぐ反対側は海で、荒い波が打ちつけ、雄大な景色が最高だった。

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そんな中で絶品の塩プリンをおじさん2人で食べる光景はなかなか香ばしいものだったかもしれないけれど、ここもまた、味も景色も雰囲気も… 必ずもう一度行きたいと思わせてくれる、後ろ髪を惹かれるくらい居心地の良い場所だった。塩プリン、最高に美味しかったな。

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この日は有坂さんが車で糸島の街を案内してくれたのだけど、車の中ではずっと、ブルーハーツがガンガン流れていた。
糸島の街は美しい景色と自然がたっぷり残されている反面、新しい移住者の受け入れを街をあげて取り組んでいるという。
既にあるものを守るだけでなく、これからつくっていくもの、入ってくるものへの柔軟さ。

古さと新しさを融合させながら街を変え、そして守っていく。そんな糸島の街の姿とブルーハーツの曲達が、何だかとてもマッチしていて。

だから今、ふとブルーハーツの曲を聴くと僕の中ではすぐに、あの日の糸島が蘇ってくる。

さらに午後、連れて行ってくれたのが 森とコーヒー
林の中にある、スノーピークのコンテナハウスで造られた小さいお店だった。

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中には大きな焙煎機が置かれ、ご主人が豆を挽いてくれる。
ご夫婦でこの店を開かれたらしいのだけれど、外に置かれたテーブルでコーヒも飲めるし、夜には外で焚き火もするらしい。

ゆっくりとした時間が流れ、コーヒーの濃厚な香りが漂い、ご夫婦の想いが詰まって素敵に溢れている。
ここもまた、とても居心地の良い空間だった。
ご馳走になったコーヒーを飲みながら「ここなら何時間でもいられそう」って、本気で思える場所だった。

自分で書いていて気づいたけれど、居心地 って言葉を、既にたくさん使ってる。
そうか、今思えばあの日、有坂さんは 居心地の良い場所 ばかりに連れて行ってくれたんだなぁ。

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それらの場所だけでなく、もはや糸島という街そのものが、自然と人、そして既存のものと新しいものをうまくハーモナイズさせた、とても居心地の良い街なんですよね。

その日の夜、有坂さんオススメの店で二人で飲みながら、いろんな話をした。

有坂さんはここ糸島の エリア伊都 というクラブを指導していて、ジュニアユース の選手達に関わっているという境遇は、僕と同じ。
お互いにクラブの歴史はまだ長いわけではなく、選手を集めることの大変さなどについてもお互いに吐露しながら、共感するところが多かった。

正直、うち(ロボス)のジュニアユース も昨年度に立ち上げ、選手を集めるのは本当に大変だった。当時の6年生達が中学生になるタイミングでジュニアユース をつくってこいつらと一緒にあと3年間やっていこう、と勝手に思っていたのが、結果的にその子達は全て別のクラブや部活に行った。もちろんそれは自分がそれまで彼らにしてきた指導に対する痛烈な答えだったし、全て自分の拙さが招いた結果だったのだけれど、さすがにあれは堪えた。

自分の中で、かなりの挫折だった。

糸島で有坂さんと会っていたこの日は3月31日。つまりジュニアユース 2年目の(2019年度)が始まる前日。

この段階でもまだ、ジュニアユース 2期生の選手集めには苦労していて。この日の時点で入団が決まっていたのは9名。やっぱり最低でもひと学年11名以上はいてほしいところだけど、まだ9名。そんな状況だった。

たったひとりの有り難さ。ひとり「入団します」って連絡が来て、毎回毎回どれだけ喜んだことか。
そのたびに、嬉しい記念 で一人しみじみとビールを飲む。この頃は、そんな日々だった。

そして
有坂さんとそんな話をしていたところに、一通のLINEが来た。

うちへの入団を最後まで迷っていた子がいて
彼の所属するチームのコーチから
「彼がロボスに入団することを今日決めました」というLINEだった。

有坂さんとあんな話をしてる真っ最中に来た、この知らせ。
新年度が始まる前ギリギリのこの日に、きっと彼は 人生で最初の大きな決断 をしてくれたのだろう。
明日から中学生になる、その前日に。

そんなことを想うと、僕はもう本当に本当に嬉しくて。
想いが溢れた。
感極まっていたことは、有坂さんにはバレていたらしいけれど。

それを聞いた有坂さんが「熱い!いい!その子にメッセージ送りたい!」って 笑
こんなこと言ってくれる人、そうはいない。
嬉しいなぁ。最高だなぁ。

「でもどうせなら、うちの選手全員にメッセージしてほしい」(僕)
ってお願いしたら、飲んでる最中なのに、有坂さんは黙って、黙りこんで、ずーっとずーっと、真剣にメッセージの内容を考えてくれていた。

「せっかくなら、エリア伊都の選手達にもメッセージして」(有坂さん)

となり、僕もじーっと考え込む羽目に。笑
何だかとても嬉しくて、幸せな時間だった。

真夜中、終電間際、筑前前原駅
ほぼ誰もいない駅の、誰もいない待合室の中で、おじさんふたりがお互いに動画を撮り合った。

僕はエリア伊都の選手達へチェ・ゲバラの話を交えながらメッセージを送ったのだけれど、その後に有坂さんがロボスの選手達に送ってくれたメッセージは、僕のなんかとは比べ物にならないくらいに熱くて、熱くて、優しくて、愛情に溢れたものだった。

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有坂さんからの動画メッセージは、新年度最初の練習の時に選手達に観せた。
彼ら、食い入るように黙って観てくれていましたよ。
何かが伝わった。きっと

本当に、嬉しかった。
結果的にこの待合室での時間が、この旅の一番の想い出になったのだと今でも思う。

この時、何を話してくれたかはもちろん内緒だけれど。

そういえば
有坂さんが糸島へ旅立つ前、吉祥寺の「いせや」でふたりで飲んだ時にキリンの置物をプレゼントした。

実は、キリンを贈ったのには理由があって
Mr.Childrenの「進化論」という曲の歌詞の中に、次のような一節がある。

進化論では 首の長い動物は
生命競争の果てに そのフォルムを変えてきたという
強く望むことが 世代を超えて
いつしか形になるなら この命も無駄じゃない

無限の自由、夢、希望、楽しさ。有坂さんはそんなことを何よりも優先し大事にしている人だと思っていた。だからこの歌詞にもあるように「強く願うこと」を大切にしながら子ども達にも関わってほしいし、糸島でも自由に生きてほしいし

そしてその願いも、ピュアに生きることも、それは決して変わり者でもなんでもなく、自分も共有してますよというメッセージを、キリンに込めたのだけど。

彼は何も変わっていなくて、そして前よりもさらに懐が大きくなり、自由度が増し、魅力がすげぇ増していた。

キリン、まだ家のトイレに置いてくれているらしいのでよかった 笑

たった一日しかいなかった糸島。でも、中身はあまりにも濃厚で、居心地が良くて、優しくて
糸島の魅力を知り、そこに住む人達の魅力を知り、そして有坂さんの魅力を再確認した、とっても思い出に残る素敵な一日になったのです。

有坂さん、本当にありがとう。

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1000のバイオリン
(詞・曲/真島昌利)

ヒマラヤほどの消しゴムひとつ
楽しい事をたくさんしたい
ミサイルほどのペンを片手に
おもしろい事をたくさんしたい

夜の扉を開けて行こう
支配者達はイビキをかいてる
何度でも夏の匂いを嗅ごう
危ない橋を渡って来たんだ

夜の金網をくぐり抜け
今しか見る事が出来ないものや
ハックルベリーに会いに行く
台無しにした昨日は帳消しだ

揺篭から墓場まで
馬鹿野郎がついて回る
1000のバイオリンが響く
道なき道をブッ飛ばす

誰かに金を貸してた気がする
そんなことはもうどうでもいいのだ
思い出は熱いトタン屋根の上
アイスクリームみたいに溶けてった


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子ども達にサッカー教える仕事してますけど、サッカーより女性とBOØWYとGuitarと釣りのほうが3億万倍大好きです。たぶん、現場不適合者です。だって試合そんなに好きじゃないし。そんな不遜なサッカーコーチだからこそ見える、少し変わった景色と視点を書いていこうと思います。

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