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「うっかりタピオカに手を出した」という事実は、お客さんの心に結構残りますよ

*この記事の音声版(本文にない解説付き)をYouTubeにアップしています。

「3,000文字以上読むのは面倒くさい!」「何かをしながら聴きたい」という方に、ご活用いただけたら嬉しいです↓

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昨年、何度目かのタピオカブームがやってきたことに乗じて、タピオカのメニューに手を出した個人店のカフェがいくつかあったのを見かけました。

確かに、その時の世間のお客さんが求めていたことかもしれませんし、需要があるところに商機を見いだすというのは、ビジネスの判断としては悪くないものだと思います。

僕個人的には「残念だなぁ……」と思っていましたが。

「世間は何のためにタピオカを飲むのか」という"目的"を理解できていれば、安易に手を出す必要もなくなるのだけど…

世の女の子たちは、何をあそこまで必死になって、何のためにタピオカを飲んでいたのでしょうか?

最終的な"目的"は、いつも言っているように「幸せになりたいから」なんですが、今回はその但し書きの話です。

幸せになりたいから。但し、○○として。

結論から言うと、大多数は「美味しいから幸せ」ではなくて、「今、世間でブームになっているタピオカを、自分はきちんと消費できていますよアピールができて幸せ」だと僕は分析しています。

味云々よりも、とりあえずムーブメントに乗り遅れていない自分を示すのが一番大事なんですね。だからこそ、タピオカ消費は「目に見える」ことが何より大切で、可愛らしいデザインのカップに入ったものや、映える見た目のものの需要が高くなります。

イートインのタピオカドリンクの画像をInstagramに上げている人、ほぼ見たことないですよね?メニューとして存在したとしても、売れていないからなんですよ。必要とされていないから。

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「えー、タピオカ飲んでないの?遅れてる~」と言われないために、消費しているアピールをする……もはや何が何だかわからなくなってしまいますが、これも商売をする上でとても大事な消費者心理。

承認欲求研究の権威・同志社大学 太田肇教授が提唱されているところの【裏の承認欲求】に通ずるお話だと思います。周りと同調しないことによる減点を恐れるがゆえにしている行動、という感じなので。

(太田肇教授のご著書、とても参考になるのでぜひ読んでみてください。おすすめ→『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書))

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本当にタピオカを愛して「これを生業にしたい!」という人がいたらそれは別ですが、基本的にブーム便乗商法なんですよ。美味しいから売れているのではなくて、流行っているから売れている。

僕は基本的に札幌のカフェ・スイーツ界隈をウォッチしているので、この冬の寒さという原因もあるのかもしれませんが、2019年の夏頃と比べると、Instagramのタピオカ系の投稿がガクッと減ったと感じています。

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で、これはとても面白いのですが(笑)、Instagramのハッシュタグ「#札幌タピオカ」の直近の投稿を見てみると、そのほとんどをユーザー(お客さん)の「飲んだよ!」報告ではなく、お店公式アカウントの「タピオカやってますよ~」という虚しい叫びが占めています。

正直、ここはもう焼け野原です。春になっても盛り返せるとはあまり思えないので、札幌のタピオカブームは終わったんじゃないかなぁというのが、僕の見解です。

タピオカで稼いだとして、そのあとどうするの?

ここまで懇切丁寧にタピオカの解説をしてきましたが、僕が今日したかったのはこの内容ではありません。あくまで前提の整理。

メイントピックは、お客さんに惚れ込んでもらって、ファンになってもらって、長く愛してもらうお店になるために、その手段がタピオカで本当に良かったの?将来的に見てプラス?それともマイナス?という話です。

ただ「タピオカを出したけど、あんまり売れなかったね」だけなら良いのですが、お客さんの心には「あの店、ブームになびいてタピオカに出したんだ」という印象が、しばらく残り続けます。

これは、お客さんファンになってもらって、愛され続けるお店を作っていく上では、結構マイナスになることだと僕は思います。

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お客さんに惚れ込んでもらうには、「理念」や「店主の想い」が大切ですという話を、ずっとしてきています。

その点で考えると、「今、タピオカがブームだから」という理由でタピオカに手を出す、そういうお店に理念を感じることができるでしょうか?

その店の大本の理念が「その時、お客さんが求めているものを提供する!」という、トレンド追求型のものであれば何も問題はありません。むしろ大正解です。

しかし、そういうスタンスでやっている個人店のカフェはあまりないと思いますし、「ブームやトレンドを追いかけ続けるお店」という認識をお客さんにされてしまうと、常に新しいことをやらなければいけません。正確に言うと、「新しいことをやり続けることに追われ続ける」ですかね。止まったら倒れる、自転車操業のような感じ。

変化すべき部分と、そうでない部分を見極める。自分のために

現代においてビジネスをするということは、日々刻々と変わりゆく市場を見極めて、変化を続けなければいけません。

ただ、同時に「変えるべきでない部分」もあると思っています。例を挙げるとしたら、「どんなミッションを持ったお店なのか」「誰のためのお店なのか」「どんな幸せを提供したいお店なのか」といった、経営の根幹に関わる理念の部分です。

「これをやったら、お客さんからの信用が減るかな?」というのが、一つの判断基準になると思います。今は目先の利益より、長く積み重ねる「信用」の時代です。

別の観点から話をすると、「自分のやりたい/やりたくないに関わらず、流行りものを追いかけなければいけない」って、シンプルにめちゃくちゃしんどいと思うんですよね。

せっかく誰にも管理されず、自分のやりたいことを表現できるはずの自営業なのに、いつの間にか"やらされ感"の中で仕事をしなければいけない。

苦しくないですか?

最後にちょっとだけ、本業の研修講師っぽいお話を。

人間は「これをやった方がいいよね」と、モノゴトを認識し、その瞬間にやる気になることは簡単です。みんなできます。

ただ、それをやり続けることが出来るのは、4~5%程度と言われています。面倒くさい、手順が大変、他の誘惑に負ける……そんな理由で、いつの間にか無かったことになってしまっています。ダイエットとか、だいたいそうですよね(自戒)

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つまり、まずは店主自身が無理なく、やり続けることができるものでないといけません。

そういう意味で、「自分の理念・想い」と「やる(べき)こと」が合致している、ということも非常に大事なんです。「好きこそものの上手なれ」なんて言ったりもしますよね。

自分がやっていることが「この人を幸せにしたい!」という対象者にマッチしたものであれば、自分の内側から湧き出てくるエネルギーを以てそれをやり続けることができますが、そうでなければ"やらされ感"に支配されて、結局続けることができなくなってしまいます。

自分がカフェの経営を通じて表現したいことは何なのか、実現したいことは何なのか、誰の幸せを実現したいのか……など、自分の想いを確認する必要があると思います。もちろん、それが世間のニーズと合致していることも大事ですが、そのチューニングはあとの話。

あなたがやりたかったのは、タピオカですか?

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