『カンガルー・ノート』

安部公房の作品。

かいわれ大根が脛に生えてきた男が主人公である。

男の寝ているベッドが勝手に動いて賽の河原巡りをしていく。

不思議な話だと思った。作者の遺作ということもあり、確かに死を連想させる内容だった。

印象に残っている文

看護婦の罪のない微笑が、ドアを開け、やっと診察室の椅子に掛ける資格を認められた。

慢性胆嚢炎の患者は、臓器内に血流が停滞し、食直後、すくなくも三十分、油の摂取が多いときには一時間、即座に横になる必要があるのです。肝臓の血液の出口と入口の高さを同じにしてやらないと、緑面がさらに進行して灰面から紫面になり、再起不能におちいる可能性だって無視できないのです。

「ぼくは下がり目が好きなんだ。目尻を舐めたくなってくるほどだよ」

「人間って、一度死んだら、二度と死ねないんだ」「当然だろう、地獄で自殺できたら、あの世がなくなってしまう」

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