保護されるべき公益通報者の範囲について【消費者庁見解追記版】
公益通報について未だに誤解が横行しているため、消費者庁の公式見解を転載しておきます。もちろん文責は私、足立康史にあります。
そもそも、昨夜のYouTubeによると、維新の県議らが斎藤知事を守りきれないと判断した根拠も、こうした法令に関する冷静な理解(当初は理解してなかった様子)にあったそうです。
【石丸伸二vs兵庫県議】斎藤知事の側近が告白…なぜ辞職せず?【高橋弘樹】
他方、今日も、松井一郎さんが無理解なコメントを電波放送で流していたようで、とても残念です。コメンテーターの言説については、リテラシーを持って向き合う必要があります。
松井一郎氏「県民局長は内部と外部両方に通報しておけば」テレビ出演し「そうすれば公益通報の疑問湧かなかった」(デイリースポーツ)
#Yahooニュース
以下は、消費者庁の公式見解です。
・公益通報とは、労働者や役員等が、勤め先の事業者の国民の生命・身体・財産等に関わる法令違反のうち、刑事罰・過料の対象となる行為を勤め先や行政機関、報道機関等に通報することをいいます。
・公益通報者保護法第2条第1項柱書に次のとおり規定されているとおり、いずれの通報先に対する通報であっても「公益通報」に該当し得ます(①~③の数字は便宜上付したもの)。
「この法律において「公益通報」とは、次の各号に掲げる者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、・・・旨を、①当該役務提供先若しくは当該役務提供先があらかじめ定めた者(以下「役務提供先等」という。)、②当該通報対象事実について処分・・・若しくは勧告等・・・をする権限を有する行政機関若しくは当該行政機関があらかじめ定めた者(次条第二号及び第六条第二号において「行政機関等」という。)又は③その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者(当該通報対象事実により被害を受け又は受けるおそれがある者を含み、当該役務提供先の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある者を除く。次条第三号及び第六条第三号において同じ。)に通報することをいう。」
このように、通報先については、①、②又は③と選択的に規定されています。
この点について、消費者庁ウェブサイトでは、以下の記載があります。
〇Q&A集(Q9抜粋)
Q9 まず事業者内部に公益通報をしてからでないと、外部公益通報をすることはできませんか。
A 本法では、通報先として、1事業者内部、2権限を有する行政機関等、3その他の外部通報先が規定されていますが、公益通報者は、順番を問わず、いずれの通報先に対しても公益通報をすることができます。
なお、事業者が、労働者等に対して外部公益通報を禁じたり、まず内部公益通報をするよう公益通報の順序を強制したりすることは、本法の趣旨に反するものであり、事業者がこのような規程を作成した場合は、その他の外部通報先への公益通報(3号通報)の保護要件である「役務提供先から前二号に定める公益通報しないことを正当な理由なく求められた場合」(本法第3条第3号ニ)にも該当し得ると考えられます。
通報先に関するQ&A | 消費者庁
・その上で、公益通報者保護法上、不利益な取扱いから保護されるためには、「公益通報」に該当するだけでなく、通報先に応じて規定された保護要件を満たす必要があります。
・具体的には、事業者内部への通報がいわゆる1号通報として保護されるためには、公益通報者保護法第3条第1号に規定されているとおり、通報内容について「思料すること」が必要です。
・一方、報道機関等への通報がいわゆる3号通報として保護されるには、公益通報者保護法第3条第3号に規定されているとおり、ⅰ通報内容について「信ずるに足りる相当の理由」が認められ、かつ、ⅱ内部通報を行えば不利益取扱いを受けると「信ずるに足りる相当の理由」がある等同号に規定する6つの事由のいずれかを充たすことが必要です。
・この点について、逐条解説では、以下の記載があります。
〇逐条解説(抜粋)
第3条第2号(権限を有する行政機関等への公益通報(2号通報)の保護要件)
2 本号の趣旨(逐条解説P.10参照)
第1号の役務提供先等への公益通報の場合と異なり、事業者の外部への公益通報については、真実でない通報等によって役務提供先や従業員等の正当な利益が不当に害される可能性がある。行政機関等も事業者の外部の主体であることから、行政機関等への公益通報の保護要件(本号)について、その他の外部通報先への公益通報の保護要件(本条第3号)と同様に設定することも考えられる。
しかし、権限を有する行政機関等に対する通報は、その他の外部通報先への通報と異なり、法の適正な執行のために制度上当然に予定されているものであり、例外的な場合に限って保護されることとすることは適切でないと考えられたことから、権限を有する行政機関等への公益通報については、その他の外部通報先への公益通報よりも保護要件を緩和することとされたものである。
第3条第3号(その他の外部通報先への公益通報(3号通報)の保護要件)
3 本号の解釈(逐条解説P.17参照)
⑵ 「次のいずれかに該当する場合」
その他の外部通報先に公益通報をすることが相当と認められる要件として、イからヘまでの要件が設けられている。
労働者である公益通報者が使用者に対して負う誠実義務との関係上、公益通報者は使用者の利益と密接に関わる役務提供先の利益を不当に侵害しないよう配慮して行動する必要がある。
しかし、役務提供先等(事業者内部)や権限を有する行政機関等に公益通報をすれば公益通報者が不当に解雇その他不利益な取扱いを受けるおそれや公益通報者を特定させる事項を故意に漏らすおそれがある場合や役務提供先等(事業者内部)に公益通報をしても犯罪行為やその他の法令違反行為の是正が期待し得ない場合には、誠実義務を履行することを要求しつつ犯罪行為やその他の法令違反行為を是正することは困難であり、その他の外部通報先に公益通報をすることを許容することが相当と考えられたため、イからホまでの要件のいずれかを満たす場合には、その他の外部通報先への公益通報が認められている。
また、個人の生命・身体に危害や個人の財産に回復不能な損害等が発生する急迫した危険がある場合には、速やかに当該危険を排除する必要性が高いことから、ヘの要件を満たす場合には、その他の外部通報先に公益通報をすることが認められている。
4 役務提供先等への公益通報の保護要件(本条第1号)及び権限を有する行政機関等への公益 通報の保護要件(本条第2号)との関係(逐条解説P.28参照)
本号に規定するその他の外部通報先への公益通報の保護要件を満たしている場合には、役務提供先等(事業者内部)への公益通報(本条第1号)や権限を有する行政機関等への公益通報(本条第2号)の保護要件も満たしていることから、その他の外部通報先へ公益通報をせずに役務提供先等や権限を有する行政機関等に公益通報をすることや役務提供先等や行政機関等に同時に公益通報をする場合も保護の対象となる。
第3条(解雇の無効)
その上で、重要なポイントは、公益通報者保護法第11条に基づく法定指針=通報者の探索禁止の対象に外部通報が含まれるかという点です。
ポイントは、新実彰平(関西のアナウンサー) @niimishohei のポストに詳しいですし、山口弁護士も百条委員会では法定指針の「用語の解説」を根拠に外部通報も含まれるとし、奥山教授も同じく「その他の必要な措置」に含まれるとし「法定指針の解説」(解説は法定指針とは異なり法的拘束力がない)の記載を根拠にあげています。
更に、中野弁護士という消費者庁にいた方も同じく外部通報も含まれるという主張のようです。
こうした専門家の見解が背景にあり、維新県議団の最終判断があったものと存じます。
以上
追記 2024.9.25:ここまで書いても、未だに(保護されるべき公益通報者は一号通報に限られるとする)誤解が止みませんので、本日、公益通報者保護法を所管している消費者庁に問い合わせたところ、私の理解の通りでしたので、ここに紹介しておきたいと存じます。
(趣旨を書き起こしたものですので、消費者庁担当者の発言を正確に書き起こしたものではありません。ご注意ください。)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?